【演劇】イキウメ『図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖』 ― 2010/11/01

物語は四つの場面から成り、それぞれを「前菜」「魚料理」「肉料理」「デザート」に見立てたコース“料理”ならぬ“物語”。
まずは、ベジタリアン料理の講習会に通う主婦が、夫を菜食にすべく洗脳計画を遂行する。「食」をめぐる議論の果てに、主婦の企てに夫はとうとう…。
場面は換わり、独自の美学を持つ万引きの“プロ”が、同業者の傍若無人ぶりが許せず、たたかう様がシュールな笑いで描かれる。ここで語られるのは、ルールとは何か?だ。
メインデッシュでは、場面1の料理研究家が登場し、その健康の“秘密”を、やはり1で登場した夫の記者を前にとうとうと語り始める…。
というように、この物語は“食”を入り口にして、やがて“いのち”と“連鎖(ルール)”が重要なテーマが浮上し、オカルトともSFとも不条理とも、あるいは社会問題劇も言える様相を呈しながら、観客を不気味な思考回路へと引きずり込んでいく…。
ぴあMOOK『小劇場ワンダーランド』
その作風は、骨太な大人のエンターテイメント・ゴシックホラーとでもいうべきか…。
机数台が置かれた簡素な舞台装置ながら、広々とした壁面に窓を配置するなど空間をうまく拡げて、料理教室、スーパー店内、病院、街頭を次々と描き出せるのも、やはり観客の想像力を借りてこそ。その引き出し方が上手いからだと思う。
舞台上の人物の過去を、他の人物が演じ、それを本人が解説し、ときに割り込む…という手法は「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」でも長塚圭史氏が使っていたが、前田氏のそれの方がより練られており、まるでタランティーノの映画を観ているようにスリリング。個性的な役者陣も、それらに応えてケレン味のある舞台となった。
このところ、立て続けに早船聡(サスペンデッツ)、長谷川寧(冨士山アネット)、前川麻子(龍昇企画)、はせひろいち(ジャブジャブサーキット)という若手作家(はせ氏は若手でもないが…)たちの芝居を観たが、いずれも才気溢れる作品ばかりで、その活況ぶりに目を見張る。
それに比してワタシは、岩松了、松尾スズキ、鴻上尚史、長塚圭史といった中堅・ベテラン諸氏の新作にあまり刺激を受けなかったのだが、これが演劇の「今」の状況ということなのだろうか?
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