【韓国ドラマ】砂時計2010/11/06

韓国ドラマ『砂時計』
『砂時計』(모래시계 モレシゲ)は1995年に韓国で放映された全24回のドラマで、光州事件を正面から扱って大きな話題となり、かの国で社会現象を起こしたという。
日本では2006年に放送され、その後2009年に一度再放送されたきり、放送がない。連日星の数ほどの韓国ドラマがいずれかのチャンネルで放送(再放送も含めて)されているなかで、これはどうしたことだろう?
韓国では平均視聴率45.3%(最高視聴率63.7%は歴代3位)を記録し、放送時間には街が閑散となった…という『君の名は』(例が古い!)現象を起こしたというのに、日本では人気が出なかった?

放送がないのでシビレを切らしたワタシはDVDで観たが、さもありなん。これは日本人にはわかりにくいだろう…というのが第一印象。
時代背景の理解がまず難しい。韓国では87年の「民主化宣言」が行われるまで、実質的な軍政が敷かれていた。
例えば、ある年齢の韓国人ならば、非常戒厳令が宣布された「1972年」と聞ければそれがどんな時代だったか、即座に思い浮かぶだろう。73年に金大中事件が起こり、79年には朴正熙大統領(当時)が暗殺される。そして80年には民主化を求めるデモ全国に拡がり、その年の5月に光州事件が起こるが、画面に映し出されるそうした年代やフラッシュバック映像によって、韓国の視聴者たちは否が応でもその時代に引き戻されるに違いない。
そこがまずわれわれ日本(に住む)人とは決定的に違う。ドラマの後半で「私も4.19世代ですから」というセリフが出てくるが、そこに込められた意味をすぐさま理解する日本の視聴者はそういないだろう。

加えて、冒頭の3回で主要登場人物の生い立ちと、それぞれの“出会い”が語られるのだが、これが冗長だ。なにしろ一人につき、1話(50分)をたっぷり使っての説明だ。ちょっと日本のドラマではありえない導入だと思うが、家族・地縁の結びつきが強い韓国社会だ。ここをしっかり描かないと、視聴者が納得しないのだろうか?…

というわけで、日本人には非常にとっつきにくいドラマだと思う。
しかし、しかしだ!ここは黙って第7話まで観続けてほしい。7話で、この壮大な物語は転がり始める。それまでとにかく我慢して観続けてほしい。
そう、この7話で、実写も含めた光州事件の壮絶な光景が繰り広げられる。そして、この光州事件での“歴史の皮肉”によって、主人公二人のその後の“運命”は、翻弄され続けるのだ…。

これはネタバレだが、このドラマを貫くテーマといってもいい重要なシーンなので、書いておくべきだろう。
正義を目指すウソク(パク・サンウォン)が光州制圧軍として民衆に銃を向け、ヤクザのテス(チェ・ミンス)が民衆側として闘う…。このシーンを目にした韓国の人たちは、なんという“歴史の皮肉”だろうかと思うと同時に、我が身につまされたに違いない。今も徴兵制が敷かれる韓国では、“他人事”ではなかった(ない)からだ。

この事件を起点として、物語は怒濤の展開をみせる。テスの恋人となったヘリン(コ・ヒョンジョン)は、学生運動に挫折し、やがて父の仕事を継いで、次第に闇世界・政界へと近づいていく。
テスは“父の仇”となって闇世界を支配し始め、一方、検察官となったウソクが、闇世界の捜査を進める。その間に、誰と誰が手を組み、裏切り、邂逅するのか…先の読めないスリリングな展開が次から次へと繰り出される。その語り口、脚本の出来は、前半のもたつきが信じられないキレの良さ。

最終盤では、香港ノワールに影響を受けたであろう“男の世界”もたっぷりと描かれ、日本のドラマではあまり見ることのない(?)非情なラストで、この物語は深い余韻を残して幕を閉じる。
前半の難はあれど、ワタシは傑作ドラマだと思う。

それにしても、光州事件から15年としてこのドラマがつくられたことは、改めて韓国の民主化が進んでいることを示している。はたして中国が天安門事件をドラマ化するのは、いつになることだろうか…。

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