【TVドラマ】大阪ラブ&ソウル2010/11/07

ドラマ『大阪ラブ&ソウル』
このところドラマづいて、昨夜(11月6日)放映されたNHK大阪制作の芸術祭参加作『大阪ラブ&ソウル この国で生きること』を観る。

"在日コリアン"の青年と"ミャンマー難民"の女性が大阪で恋に落ち、そこから詳らかにされる在日と難民の苦悩の歴史。家族、国籍、生きることを問う意欲作…なのだが、結論から言えばいわゆるドラマとしては、十分な出来とは言えまい。
1時間15分という枠に、脚本(林海象)を押し込むのに精一杯だったのか、登場人物の心の移ろいが型通りで、見せ方もやや性急。おそらく芸術祭でもそう評価は高くないと思う(あくまでワタシの予測だが)。

それでも本作には、あえて特筆すべき点がいくつかある。
まずは、"在日コリアン"のパートナーが、日本人、コリアン以外の"在日外国人"であるということ。在日と日本人の恋愛ドラマといえば、無残な結果に終わった『東京湾景』などの試みがあるが、対外国人というのは新機軸。
しかしながら、外国人登録者が221万人、オーバーステイ(超過滞在)を含めた外国人は300万人を超えると言われる現在で、こうしたカップリングも自然な流れだろう。
この“外国人”の視点を“在日”にぶつけることで、新たな衝突や発見、そして喜びが生れ、本作をより重層的なドラマに仕立てた。

次に、主人公の在日三世青年(永山洵斗)がバイト先で難民女性と出会うシーン。
「私は“ビルマ”から来ましたネイチーティンです」と、挨拶したのには驚いた。私は“ミャンマー”という呼称は軍事政権が勝手に付けたもので、本来の国名はビルマだと思っている。日本政府は“ミャンマー”を認めているが、わが国営放送でいきなり民主化運動側が掲げる“ビルマ”が出てきたことに驚き、さらにはこのネイチーティンが日本で民主化運動に参加しており、アウンサンスーチー氏の肖像画まで映し出したのだのだからビックリだ。
NHKは例の番組改変問題以降、かえって“重し”が取れたのだろう。いい意味でやりたい放題。本作もまるでビルマの総選挙にぶつけてきたかのようだ。

ちなみに、ネイチーティンを演じるダバンサイヘインさんは、実際にビルマで民主化運動に取り組み、身の危険を感じて04年に観光ビザで日本に入国。入国管理局に収容された後、ようやく08年難民認定を受けたという経験を持つ。したがって演技はまったくの素人だという。

さらなる驚きは、チェサ(祭祀)のシーンが登場したこと。
祖先と家族の結びつきな大切にするコリアン社会では、チェサとても重要な行事だ。ワタシがほとんどドラマを観ないこともあるが、このチェサを取り上げたことは、このドラマの制作陣が在日社会をより理解しようとしている姿勢が伺える。

そして、この在日家族の歴史に、済州島で起きた「四・三事件」を持ち込んだこともある意味、英断だと思う。

激しく対立する父(岸部一徳)と息子が、初めて訪ねた祖国、韓国・済州島。親族から「辛い時代に自分たちだけ日本に逃げた」と罵声を浴びせられ、激しく動揺する父。祖国の海を前に慟哭する二世・父の姿を見て、自らのアイデンティティと向き合う三世の主人公…。
このシーンが胸を打つのは、前述した数々の“伏線”があってこそ。

それだけ冒険心に富んだ重層的なドラマであるはずなのに、その試みが十分結実しなかったのは、じつに残念。やはりもう少し時間枠を拡げて、じっくりと物語を紡いでほしかった…。

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