【本】二酸化炭素温暖化説の崩壊2010/11/02

二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)
広瀬 隆

集英社 2010-07-16
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膨大な公表データ・取材記事等を駆使し、問題の所在・責任者たる“犯人”を追い詰めていく過程を克明に描き、ノンフィクション・ミステリーとでも言うべき手法を確立した著者による最新刊。『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『危険な話』等によって80年代に鮮烈な登場をした広瀬氏だが、本書によって、いささかもその気概は衰えず、ますます冴えわたるその手練が確認できる。
そして今回のターゲットは、二酸化炭素温暖化説だ。

いわゆる二酸化炭素温暖化説は、ノーベル平和賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」なる組織が喧伝してきたということだが、そもそもその主張の基になった「グラフがデタメラであることは、発表当初から私は分かっていた」と氏は言う。
過去1000年間の地球気温の変化を示したとされる「ホッケー・ステッィク」では、20世紀から気温は急上昇したとされるが、このグラフそのものが捏造されたものであり、「そのトリックについて『うまくだました』とはしゃぐメールが大量流出し」たクライメートゲート事件がそれを示しているという。(ちなみに本書では、「Wikipediaが、CO2温暖化説広告塔だったことも、現在では強く批判されている」と記されているので参照リンクには注意が必要)

ところが、1990年にIPCCが出した第一次評価報告書では、「中世には『二○世紀よりもはるか気温が高い』温暖期があり、そのあと氷河期が襲って気温が下がり、その後、人類がまだCO2をほとんど出さない一九世紀つまり1800年代初めから自然に気温が上がり始めた」がデータが示され、こちらこそ「考古学者、文化人類学者、天文学者が知っている長い間の常識」だとする。

つまり、ワタシたちが地球温暖化の象徴として、しばしば目にする氷山の氷解や氷河の後退なども、「昔から起こってきた自然な現象にすぎない」のだという。そのわかりやすい例として、今からおそよ100年前の1912年に起きたタイタニック号沈没の原因も、グリーンランドの氷河から押し出されてきた「巨大な氷塊」だったことを挙げる。

さらに、「海面水位の変化」を示すデータで、「1860年以前の変化をカットして」海水面が高くなり続けているように“錯覚”させる手口は、近年日本でも少年・凶悪事件をめぐる議論で同じような“操作”が行われことは記憶に新しい。

このように氏は、さまざまな傍証を挙げて、二酸化炭素の“冤罪”を訴えるのだが、その真意は「ありとあらゆる環境破壊と毒物生産を放任して、無実のCO2にその罪をなすりつけ、人類が大規模な環境破壊に踏み出し始めた」と警告する。

その一例として、氏は原発を「最悪の地球加熱装置」として位置づける。ちなみに原発から排出され海に捨てられる「温排水」は、「日本全体では毎日、広島に投下された原爆100個分に相当する巨大な熱量で海を加熱している」という。

そういえば、数年前に新潟・佐渡の海に潜ったときに、あまりの「温かい海」に驚いたことがある。子どもの頃によく泳いでいた新潟の「冷たい海」の記憶とあまりにかけ離れていたので、ワタシもてっきり地球温暖化の影響? と思ったが、じつは原発の温排水にも要因があったのだろうか?

しかし、IPCCはもとより、一部で指摘される『不都合な真実』で二酸化炭素温暖化説を世界中にPRして回ったアル・ゴアの「原発利権」問題などに触れていなかったのは、確証たるデータが得られなかったからだろうか…。

後半はオール電化キャンペーンの真意や、問題解決の一つとして、最新の火力発電技術を紹介するなど、見聞を新たにしたことも多々あり、本書を読んでとにかく勉強になった。

ところで、氏の過去の著作と同様に、当然の如く本書に対する異論・反論かまびすし…と思ってネット検索してみたが、正面切っての反論らしい反論は見当たらず、少々拍子抜け…。
氏の決意を込めた“警世の書”である。内容が内容だけに、ワタシも含めた科学シロウトには、その正否が判断できない部分もある。科学者サイドから、今後、賛同も含めた大いなる議論を期待したいところだ。

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仮寓ダークマター

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