【本】ニッポンの書評2011/08/11

ニッポンの書評 (光文社新書)ニッポンの書評 (光文社新書)
豊崎 由美

光文社 2011-04-15
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本ブログも含めて、有象無象の“書評”が連日、連夜ネット上にUPされ、増殖を続けている昨今、こうした書評本が刊行されるのも至極当然のことと思われる。

書評家・豊崎由美氏が、そうした現在の百花繚乱というか玉石混交、混沌(カオス)な書評状況を、氏なりに俯瞰・分析した書評評論である。
本書を読み始めてまずもって目を引いたのが、氏が主宰する書評講座の件だ。

課題本もしくは課題テーマにそった本の書評を八○○字~一六○○字で書いて提出し、誰がどの書評を書いたのかわからない状態で採点。当日はその採点をもとにディスカッションし、書評王を決定するというシステムを採っているのですが、なんと講師たるわたしく、七十数回中一五回くらいしか書評王になったことがありません。

なんとも、プロの書評家であり講師でもある氏から語られた衝撃の告白!?
さらに、氏は「プロとしてのアイデンティティ崩壊一歩手間、そんな感じです」とまで、正直(?)に記している。

このことが何を示しているかといえば、それだけ本に対する価値や視点は多種多様であり、「書評」という表現が自由であり、その評価もまたさまざまであるということであろう。

まさにプロもアマもない、同じ地平で語られる、広大な世界がそこにある。
その書評宇宙にあって、なぜ素人に混じっての“書評王”すらおぼつかない豊崎氏がプロの書評家として、食べ続けられているのか?
その謎こそが、本書にあると思う。
氏は断言する。「面白い書評はあっても、正しい書評なんてない」。
そうした自分なりの書評観を持ち、その変遷まで含めて、このような書評評論という新たなジャンルまで開拓できる剛力こそが、彼女の持ち味なのだ。

「(作品を)押すことが書評家の役割」、「粗筋紹介も立派な書評」といったベーシックな書評論に始まり、「プロの書評と感想文の違い」「トヨザキ流書評の書き方」などの書評指南、さらに「書評の読み比べ」「新聞書評を採点してみる」といったサービス精神溢れる(?)読み物も用意され、お約束(?)の他の書評子を論(あげつら)った酷評もある。

執拗に「ネタばらし」問題について言及し、Amazonのカスタマーレビューを「営業妨害」を断じるあたりはプロとしての矜持だろうか。が、「書評」そのものが好きなワタシとしては「ネタばらし」もありだと思うし、舌を巻くような多くの“素人”ネット・レビュワーや、なにより個人技ではない「集合知」としてネット・レビューの可能性にも惹かれる。

いやだからこそ、本書を契機して今後はさまざまな形での書評家による書評論を読んでみたくなる。巻末の大澤聡氏とのような対談・鼎談を書評家たちによって企画すれば、論壇風発の新たな書評論が飛び出すのではないだろうか?
それは、これからの出版文化や表現・メディア・ジャーナリズムを考える上でも貴重な議論になると思う。

『ニッポンの書評』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「「面白い書評」の姿を浮かび上がらせる試み」--本読みな暮らし
「書評もまた文芸作品のひとつ」--tsunokenのブログ
「あえて言うなら各論賛成、総論反対。」--bookmarks=本の栞
「ユニークな意見は面白いが疑問も」--本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館]
「真面目で情熱的で、ちょっと辛口な書評論」
--BOOK asahi.com(田中貴子氏)
「書評に冷たい日本の活字文化や保守的な批評状況を乱れ斬り」--47NEWS片岡義博氏)
「「本に対する愛の深さ」が浮かびあがる」--エキレビ(米光一成氏)
「すべての書評家・ブックレビュアーの「必読」の一冊」--蔵前トラックⅡ

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_ 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館] - 2011/08/12 09:07

 ブックレビューを仕事の中心にして15年という著者の語る書評論、「ニッポンの書評」(豊崎由美:光文社)。



 読んでみると、なかなかユニークな意見が述べられており面 ...