【本】朝鮮通信使 いま肇まる2011/09/01

朝鮮通信使いま肇まる朝鮮通信使いま肇まる
荒山 徹

文藝春秋 2011-05
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600年に渡る歴史をもちながら、日帝による植民地支配によって歴史の隅に追いやられていたといっていい「朝鮮通信使」に再び注目が集まるようになったのは、1980年代も半ばを過ぎてからのことだろうか。

いわゆる日韓の民間交流が盛んになるつれて、かつて長きに渡って双国の友好関係構築に貢献してきた朝鮮通信使が、“再発見”されたのだ。そこには辛基秀氏をはじめ、多くの研究者たちの地道な努力があったことも忘れてはならないだろう。

そうした近年、さまざまな朝鮮通信使に関する書籍が刊行されるのなかで、本書が異彩を放っているのは、それを朝鮮通信史の“視点”から描いている点にある。それも歴史に登場する一人ひとりの通信史の視点で。

もちろん当人たちはすでに歴史上の人物であって、そこは当然、ノンフィクションの要素が強いのだが、そこは伝記作家として知られる荒山徹氏だ。妄想も含めて、朝鮮通信史を主人公とした“歴史物語”として作品を仕上げている。

もっもとそうした試みが、ワタシには必ずしも成功していると思えないのだが、一部の研究者にしか知られていなかった朝鮮通信使が、こうした歴史エンターテイメントとして作品化されることに、感慨を覚えざるをえない。

そのエンターテイメント性からいえば、本編よりも巻末に付された歴史上の通信史たちによる架空座談会が、何よりも愉快だ。作者の妄想が爆走し、研究書に押し込められていた歴史上の人物たちが、まるで目の前でツバを飛ばしあうかのようにキャラ立ち十分に放言しまくる。

精緻な歴史家は眉をひそめるやもしれないが、「歴史を知る」にはこんなアプローチがあってもいい。

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