【本】僕たちのヒーローはみんな在日だった2011/09/04

僕たちのヒーローはみんな在日だった僕たちのヒーローはみんな在日だった
朴 一

講談社 2011-05-24
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芸能・スポーツ、財界などさまざまな分野で活躍する在日コリアンたちののルーツを明らかにした書としては、古くは『在日コリアンパワー』 (1988年)があり、 このテーマから『海峡を越えたホームラン』(1984年)や『コリアン世界の旅』 (1997年)といった秀作ルポルタージュも生れている。

そうした意味では、本書にそう目新しさはない。
力道山をはじめとする本書に登場する在日スポーツマンはほとんどすでに「コリアン」として知られている人たちであって、そこに登場するエピソードもどこかで目にしたものが少なくない。

芸能人にして然りなのだが、個人的には故・松田優作氏の件に心を痛めた。松田がコリアンであることも、それゆえにハリウッドを目指していたことも巷間に耳にしていたが、ここで語られるのは激しい在日コリアン差別であり、そこから逃れようとする松田の慟哭だ。

僕は今年の7月から日本テレビの『太陽にほえろ!』という人気番組にレギュラーで出演しています。(略)もし、僕が在日韓国人であるということがわかったら、みなさんが失望すると思います。特に子供たちは夢を裏切られた気持ちになるでしょう。

…という帰化を望む松田が法務大臣当てた「帰化動機書」からは、悲痛な叫びが伝わってくる。その一方で、「在日韓国人」であることは、人を「失望」させ、子供たちの「夢」を奪うことだと書かざるをえない、屈折した心情が何とも痛ましい…。

韓流ブームでかつてほど、在日コリアンに対する差別意識はなくなったのではないか? という意見も聞く。ならば未だに多くの芸能人が、自らの出自に口を閉ざすのは何故なのか? そこには厳然たる「差別」があるからではないか?

ワタシはTV画面に並ぶ日韓のタレントを見るたびに、韓流スターを迎える“日本人タレント”を演じる彼ら・彼女たちの心情はいくばくたるものか…と考え込んでしまう。もしかすると、在日コリアン・タレントにとって、韓流ブームは自分の出自が暴かれる危険性のある、ひどく迷惑なものなのではないのか、と。

『ソウルの練習問題』 (1983年)を契機にして「韓国ブーム」が起きた際には、ワタシはこれは「韓国ブームはあっても、在日韓国ブームではない」と断じたことがある。

それと同じように韓流ブームが、在日コリアン・ブームには繋がっていない。新大久保には多くの在日コリアンが住むのに、多くの日本人はその存在に気づかない(見ようとしない)まま朝鮮半島のスターたちに思いを馳せる。

このイビツな日韓(人)関係を改めて、本書を通じて知ってほしいと思う。

ネット上を跋扈する「在日認定」や、すでに忘却の彼方にあった「日立就職差別裁判」を改めて検証できたことも、ワタシ的には収穫だった。

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