【演劇】『DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー』2010/11/30

『DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー』
「フェスティバル・トーキョー」もいよいよ千秋楽。相模友士郎・構成・演出による『DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー』に足を運ぶ(11月28日・東京芸術劇場小ホール)。

本作は、映像作家・デザイナーの相模氏と、兵庫県伊丹市在住のエルダー世代の出演者(最高齢は96歳!)との共同作業によって生まれた舞台で、同市の「地域とつくる舞台」シリーズで昨年初演。好評を得て今回のフェスティバルで再演が決まったのだという。

開場して席に着き、気がつくとあちこちから小さな声が聞こえてくる。それも電子的な音声で、最初は客席内にスピーカーでも埋め込んでいるのかと思って周囲を見回すと、ラジオのような発信機を持って座っている人がいることに気づく。
音はそこから聴こえ、身じろぎもせずに座る姿にスポットライトが当り、どうやらその人たちが本作の出演者らしきことがわかってくる。
客席が暗転すると、客席に紛れていた女性6名、男性1名のエルダーたちがゆっくり舞台へと進み、やがて奥にしつらわれた椅子に静かに腰を下ろす。
…どうやら舞台の幕が開いたようだ。

舞台装置はおよそ簡素なもので、7人が座る椅子の横に映写機とスクリーン、天上から垂れたいくつかの紐状のものと、ぼんやりと光る灯。
突然、スクリーンにエルダーたちが次々に映し出され、「死」についての独白を始める。しかし、その表情はなぜかあっけらかんと明るい。
そして、最期は若い女性が海へと入水するシーンで映写が終わる。 その女性も舞台に現れて、“死人”のように座したところで、エルダー俳優たちが自身の“物語”を語り始める…。

「わたしは○○で生まれました」「わたしは○○が好きです」「わ たしは○○をして 働きました」……淡々と語られる個人史。
生れたときのこと、幼い頃の思い出、キライなもの好きなもの、今熱中しているもの…とりとめない日常や日々の気持ちを綴った“台本”を読むだけなのだが、その着飾らない“役者”たちの赤裸々な吐露に、客席からクスクスと笑い声も洩れる。

やがて、“物語”を語り終えた“役者”たちは、“死人”と奇妙なダンスとパフォーマンスを興じ、まるでパレードでも参加するかのように、飄々と舞台を去っていく…。

当日配布された資料に、本作公演までの経緯が記されている。
「クリエーションは、2008年秋よりスタートしました。舞台演出のみならず、映像、デザインの分野でも活動する相模友士郎と、公募により集まったエルダー世代の人々(70歳以上と設定)が、過去の体験、現在の日々のできごとを話す『対話を中心としたワークショップ』を、週に1回ペースで約半年間行いました。年齢の離れたアーティストと出演者が時間を共有し、お互いにゆっくりと理解を深めていきました。多数の応募があったなか、最終的に舞台公演まで参加したエルダー世代は、70歳から95歳までの7人。翌春からは、徐々に、基礎的な身体訓練も取り入れ、上演に向けて稽古を重ね(略)、『新鋭アーティストとエルダー世代の共同作業』ということで、地域での取り組みという意味において注目を集める公演となりました。」
そして、その1年後、今回の再演でエルダー“俳優”たちとスタッフが「再結集」というわけだ。

とても面白い試みだと思うが、じつはワタシは以前に似たような「共同作業」を観ている。
毎年、東京・世田谷で行われている「路上演劇祭」の初年(2001年)、地域に住む市井の人々にインタビューした映像が、会場脇の区民センターの大きな壁に映し出された。
公募による市井のインタビュイーたちが、地域を古くから知る人々から地域の“物語”を紡ぎだす試み。演劇ではなく、映像によるワークショップであるが、それらの市井の“声”から、見事にその“地域”の姿が立ちあがってくるという貴重な経験を得た。

そうした経験をしているせいか、どうも本作からは個々のエルダーたちの“物語”は見えても、全体の風景が浮かんでこなかった。それはあえて“焦点”をつくらなかった制作者の意図なのだろうが、ワタシにはどうも全体の“像”が結び切れず、所在ないままに本作を観終た。

さらに言えば、エルダーたちの“生命讃歌”であるはずなのに、最期にブレーメンの笛吹の如く、自死した陰気な“死人”(=ワタシにはそう見えた)によって連れ去られていったことが、どうも腑に落ちないのだ。

むしろ感慨深かったのは、次々に映し出されるエルダーたちの“家”がみな見事に“洋風”であることに驚き、改めて戦後社会の来し方に思いを馳せてしまった…。

制作に尽力された方々には頭が下がるが、もう少し“物語”のテーマを絞ったほうが、より深みのあるドラマになったのではないか? …そんな感想を持って帰路についた。

『DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー』の参考レビュー
「死後の闇の一部になったような感覚」--しのぶの演劇レビュー
「天使としてのお年寄り」--ワンダーランド(水牛健太郎氏)

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