【演劇】劇団ジャブジャブサーキット『蒼の組曲』2010/10/02

劇団ジャブジャブサーキット『蒼の組曲』
岐阜を拠点として活動する劇団ジャブジャブサーキットの新作『蒼の組曲』の東京公演(10月2日・下北沢ザ・スズナリ)に足を運んだ。創立25周年の記念公演だそうだが、名前は知れど公演に接するのは初めて。
同劇団の作・演出はせひろいち氏が、公演パンフに寄せた文にこうある。「思えば演劇を始めた頃、複数の大先輩の劇作家や評論家の方から『君ぃ、演劇でSFはいかんよ』という趣旨の事を言われました」。曰く、「『物語が深くならない』とか『逃げずに人間を見つめろ』」等々…。そうかなぁ? ワタシに演劇の面白さに教えてくれた、北村想の『寿歌』も川村毅(第三エロチカ)の『ニッポン・ウォーズ』もSFだっんだけどな…と独りごちる。

そして、本作もSFだ。
元はカラオケルームだったというアパートに住まう5~6名の男女。車椅子の管理人も含めて、皆それぞれに理由(わけ)ありでここに居住しているわけだが、居住にはルールがあり、個室はあるもののルームシェアにともいうべき緩い関係。そのリビングというか応接間(?)が舞台になっている。NHKの朝ドラ『ちゅらさん』を観た方はわかるかと思うが、いわゆる「ゆくたく部屋」だ。舞台セット転換も皆無で、この部屋での「出来事」と「会話」だけで劇は進む。
その、それぞれが傷を癒すように、ゆるやかに暮らす男女のなかに、突然「未来人」が闖入するのだが、まるでSFチックではなく、大人しげな、いわゆる草食系の青年がポツリポツリと語りだす…。つまりここから、芝居は動いていくのだが、SFという意匠は借りているものの、ここで展開されるのは疑似家族によるホームドラマともいうべきもの。あるいは、青年ドラマと言ってもいい。
なぜ、彼(彼女)らは共同生活を送るのか、なぜそこを離れようとしないのか…現代人も、未来人にも、共通する生きづらさと邂逅。それが本作のテーマだろう。

はせ氏は同パンフで「なんとも緩い作品です」と記しているが、いやはやどうして。その無駄のないセリフに感心した。昨今(だけではないかもしれないが)は、意味のない(とワタシには思える)セリフや動き、たわいのない会話をやたら盛り込んだ芝居が目につくが、同氏のセリフは相当つくり込み、計算されたものだ。役者の動きもしかり。
さすが「25年」の実績…とへんなところで感心したが(失礼)、こういうのを「大人の芝居」と言うのではあるまいか。

「浅く」もなく、「逃げ」てもいない、演劇だかこそ表現できうるSF劇だと思う。唐突だが、舞台・設定が限定されている分、テレビ観劇に向いた芝居だとも思った。

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