【CD】紅龍/バルド2010/11/05

バルドバルド
紅龍

バウンディ 2010-09-22
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上々颱風のリーダー・紅龍の初ソロアルバム。上々颱風も今年デビュー20周年かと、改めてその時の流れの速さに驚くが、その上々颱風の前身である「ひまわりシスターズ」 、さらに前身のソロ活動に立ち還ったような“叙情派・紅龍”炸裂の味わいある作品だ。

否、単なる原点回帰ではない。上々颱風が主にアジアを舞台に“音楽の旅”を続け、かの地の音や人びとの営みを吸収、咀嚼したうえで独自の上々サウンドを生み出してきたように、本作で紅龍の“放浪”はヨーロッパを幻視させる…。それもユーラシア大陸の辺境の町々を往く姿だ。
そして、上々颱風が“旅”の果てに、“誰も聴いたことのない”ネオ・アジアン・ミュージックを創出したように、紅龍のそれもマガイモノ感たっぷりの怪しい欧羅巴音楽紀行。クラシカルなピアノ曲、ブルース、トラッド、フォークダンス…ゲスト陣の手を借りて、上々颱風にはなかった紅龍の音世界が拡がる。

なにより本作で印象に残るのは、その歌詞たちだ(⑨のブレヒト詞を除き楽曲はすべて紅龍の手による)。上々颱風でもほとんどの詞・曲を手がける紅龍だが、バンドサウンドに比して音数が少ないからだろうか、紡ぎだす言葉が耳にストレートに飛び込み、みるみるとその歌世界が浮かび上がる…。

②で「切符は2枚さ、車掌さん!」と唄われれば、車窓を背にやさぐれた男女の姿が浮かび、⑩で「星が堕ちてくる、正直者のテーブルの上に…♪」と唄われれば、満天の星空に下で暮らす人びとの姿が静かに立ち現れる…。
それはまるで、10篇の短編映画を観るかの如き夢物語。

その言葉が鋭く突き刺さるのは、⑥「大逆殺のバラード」。
「100頭のパンダがもしも殺されたなら世界は大騒ぎさ…100人のウイグル人、もしも殺されたなら世界はだんまりさ 」と唄い、⑦で「夢を見ていた頃の大通りはまるで記念日のパレード」から一転して「終わりのない戦争が始まっていた」と、世界大戦おぼしき戦禍が唄われる…。
これはもう紅龍流の強烈なプロテストソングだ。しかし、およそ30年にわたってこうしたプロテストソング(それも上質な)を作り続けてきた紅龍に、ワタシは改めて敬意を表したい。

紅龍らしい自虐・悪露趣味のジャケットはいかがなものかと思うが(笑)、アナログLPを模したCDデザインもGJ。音楽誌のインタビューで、「今度(次回作)はカントリーアルバムとかね」と冗談めかして答えていたが、本作の好調ぶりを識れば、マジで紅龍流のカントリーアルバムも聴いてみたい!…期待してます。(^_-)

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