【映画】ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト2010/11/03

『ザ・ローリング・ストーンズ  シャイン・ア・ライト』
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『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』(2008年・監督:マーティン・スコセッシ)

音楽映画の傑作『ラスト・ワルツ』を撮ったスコセッシが、ローリング・ストーンズの2006年ライブをフィルムに収めたライブ・ドキュメンタリー。じつは先に1972年のド迫力のライブ映像を観ていたので、平均年齢64歳となった現在のストーンズに期待していいのものかと少々心配したが、まったくの杞憂に終わった。これは素晴らしいライブ映画だ。

冒頭からスコセッシとミック・ジャガーの緊迫したつばぜり合いをカメラが追う。予定していた野外コンサートの収録が、NYのビーコンシアターでの撮影に変更になり、演出プランでぶつかる二人。セットリスト(曲順)を挙げてこないミックにスコセッシのイライラはつのるが、ぎりぎりまでカメラ割りが出来ずに頭を抱える…。そして、開演直前になってようやくセットリストが届き、スコセッシがすぐさま指示を出すとカメラはステージに切り替わり、そして大歓声の中、「Jumpin' Jack Flash」のリフがファンファーレのように鳴り響く。
…というようにまるでサスペンス映画をような見事なオープニング。そして、なんとカッコいいコンサートの幕開けか!

しかし、これはスコセッシ一流のフェイク・ドキュメンターではなかろうか? 何しろ黒澤明の『夢』でゴッホに扮した俳優経験もある彼だ。ミックと共謀して観客を騙すなんてお手のものだろう。
というのもあの緻密なカメラワーク(18台使用)を見たら、とてもセットリストが直前に挙がらなかった…とは思えない。ミックが歌いながら腰を振り、ステージを走る様を後方から追いかけ、花道を駆け上がればそれを見事なタイミングでフォーカスする…。メンバー各人の“見せ場”を自在なカメラワークでを追い、このライブを素晴らしい映像絵巻として演出しているのだ。

貫祿のステージングでダルな演奏イメージが強いストーンズだが、じつは実に緻密に計算されたライブ演奏を行っていることはすでに明らかにされている。これはもう制作総指揮の“ストーンズ・コングロマリット”のCEO・ミックとの共犯に間違いない(とワタシは妄想するのだが…)。

前置きが長くなったが、とにかく主役であるストーンズのステージが素晴らしい。72年の『レディース・アンド・ジェントルマン』が、大音響の大輪の連発花火だとすると、こちらは色とりどりの花火を見事な構成美で魅せる極上のエンターテイメントと言うべきか。
とにかく、ミックの一挙手一投足に改めて“天才パーフォーマー”ぶりを思い知らされ、キース・リチャーズのあまりのカッコいいオヤジぶりに声も出ない…。ゲストのジャック・ホワイト、バディ・ガイ、クリスティーナ・アギレラもステージに華を添えるが、主役はあくまでもストーンズで、誰が来ようと王者はまったく揺るぎなし。

演奏シーンに挟み込まれる若きメンバーのインタビューも効果的で、おそらく膨大な過去映像からスコセッシがチョイスしたのだろう。キースとロン・ウッドの「俺たち二人ともギターは下手だが、二人になる最強になる」という語りのあとに、まさに“最強”のツインギター・シーンが飛び出すといった絶妙な構成。
また、間もなく70歳になるチャーリー・ワッツが、立て続けのドラム演奏の後に「フゥ…」と疲れた息も漏らす表情をとらえたり、ペダル・スティール・ギターの演奏をミスったロンに「間違えやがって!」と悪態をついたミックが、その後自分もMCをミスして「しくじった!」というユーモラスなシーンを入れ込むなど、スコセッシの緩急をつけた演出が、酸いも辛いも乗り越えてきたヒューマン・ストーンたちを写しだす。

それにしても50年近くに渡る活動のなかで、前述の72年作と83年『 レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』、そして本作と、3本もの傑作ドキュメンタリー映画をものしたストーンズはなんと幸せ者だろう。これはビートルズもプレスリーもなし得なかった偉業だ。そして、その歴史の偉業を享受できるワタシたちもまた大変な果報者である。

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