【映画】ゾディアック2010/11/16

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1968年~1974年の米サンフランシスコで起きた「ゾディアック事件」を鬼才デヴィッド・フィンチャーが映像化したクライム・サスペンス(2007年作)。

本作がどこまで実際の事件、あるいはベースとなったノンフィクションに忠実かはわからないが、複雑な展開をもったこの物語をフィンチャーは見事に“作品”に仕上げている。

物語は若いカップルが何者かに銃撃されることから始まる。その後、新聞社に他の事件も自分が殺ったとする犯行声明が届き、暗号文を新聞に掲載しなければさらなる大量殺人を決行すると脅迫する「ゾディアック」によって、警察やマスコミそして市民が、恐怖と混乱に巻き込まれていく…。

『エイリアン3』『セブン』で強烈な映像美を魅せてミュージックビデオから映画界に進出したフィンチャーだが、本作ではゴールデンゲイトブリッジ(錦帯橋)の俯瞰ショットや“容疑者”との地下室シーン、お得意の“雨”などにそうしたこだわりは見られるものの、むしろ構成力にその豪腕ぶり発揮して、この難解極まるストーリーをまとめ上げようとする。

繰り返される残虐な事件と次々と送られてくる犯行声明とその予告、そして“犯人”からの電話…。事件に翻弄されるサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニーJr.)、“暗号”に憑かれたかのように解読にのめり込む風刺漫画家のロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)。そして、捜査にあたるサンフランシスコ市警の刑事デイブ・トースキー(マーク・ラファロ)と同僚たち。

前半の目まぐるしい展開を、フィンチャーは、新道兼人監督が『ある映画監督の生涯』で、あるいは沢木 耕太郎が『テロルの決算』 で用いた証言と場面を次々と繋いでいく手法で、この事件の異様性と全体像をあぶり出していく。

やがて事件が暗礁に乗り上げると、一転してカメラの眼は本作の原作者であるグレイスミスに置かれ、犯人追及の推理劇が最後まで“錯綜”を続ける。

その間、エイブリーは地方紙の記者に落ちぶれて酒に溺れ、トースキーは暗号偽造を疑われ、グレイスミスの妻子は去っていく…という「ゾディアック」に振りまわされた登場人物たちの“悲劇”が語られることで、本作を秀作たらしめる人間ドラマとしての側面が描かれる。

結末のないラストは、実際の事件も迷宮入りという『殺人の追憶』のそれとダブり、底知れない“闇”を残したまま終わる。
1968年からグレイスミスによるノンフィクション がベストセラーとなり、彼が“犯人”と目した男の対面、そして“犯人”の死までのおよそ30年間が描かれた本作。まさにその大河的な“物語”を、最後まで緊張感を途切らすことなく描ききったフィンチャーの執念は、グレイスミスのそれと似る。
フィンチャーもまた、7歳のときに自宅から20マイルほどのところで起きたこの事件に30年間に渡ってとり憑かれ、本作をものにしたのだった。

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