【演劇】マームとジプシー『ハロースクール、バイバイ』2010/11/29

『ハロースクール、バイバイ』
今回の「フェスティバル・トーキョー」では、ワタシも何作か足を運び、その活況ぶりを目にしているが、この日は公募プログラム「マームとジプシー」による『ハロースクール、バイバイ』を観る(11月27日・池袋シアターグリーン)。

「マームとジプシー」は、藤田貴大氏が全作品の作・演出を務めるプロデュース団体だそうで、サイトのプロフィールによると「作品の中に生きている人物たちのそれぞれの日常を同時進行で描き、時間軸や場所が異なったたくさんのシーンが、入り混じり複雑に交差していく中で、最終的に見えてくる人々の風景を描いています」とある。
そして、本作もまさにそのような青春群像劇だった。

物語は、転校生の「るな」の転入から、バレー部の新人戦をハイライトに、やがて「るな」が学校を去っていくまでが描かれる。冒頭はその新人戦が、狭い舞台をバレーコートとして、試合さながらの光景が繰り広げられる。
7人の女優たちが(仮想の)ボールを追いかけ、転がり、くんずほぐれつなって、汗が飛び散るかのようなシーンを熱演する。
しかし、この物語のキモはこの試合シーンにあるのではなく、一転して舞台はある学校の風景へと転換する。そして、「時間軸や場所が異なったたくさんのシーン」は、ある一日の出来事に絞られてゆく…。

中学生たちの意味のないような動きと、間断なく繰り出されるセリフは当初、まるで「チェルフィッチュ」も思い起され、本作もそのような芝居なのかと勘繰っていると、その“レイヤー手法”によって次第に「中学生」たちの心象風景がポッこりと姿を現してくる。

転入してきた「るな」の不安と彼女を受け入れるバレー部員たちの戸惑い、合宿に向けて新キャプテンの重圧に揺れる「しほ」とシゴキにへこむ新入生、男子新聞部員「よしみ」との確執と、サッカー部員「はまだ」に対する「あじさい」のほのかな恋心…。
やがて、「はまだ」と「るな」の“父親不在”が明らかにされ、「よしみ」の実家は取り壊されてゆく…。 同じ場面が何度となく繰り返されるなかで、こうした彼女・彼らの置かれた状況や心情、揺れ動く気持ちが、ゆっくりと立ち現れていく様はスリリングでさえある。

毎日が同じような繰り返しで、どこに向かっているのかもわからない。けれども、二度と体験できない仲間たちとのかけがえのない日々、中学生活。
そうした不安定ながらも、凝縮した時間を、場面の立体的な繰り返しという手法で見事に切り取り、懐かしくも提出みせた藤田氏の“才能”はやはり注目していいだろう。

舞台が狭いせいか、ややせせこましい印象を受けてしまったのが残念だが、もっと大きな舞台で、この演出・作劇法をぜひ観てみたい思う。

◆『ハロースクール、バイバイ』の参考レビュー一覧
ワンダーランド
しのぶの演劇レビュー
中西理の大阪日記
figromage
RClub Annex
首吊り芸人は首を吊らない。
因幡屋ぶろぐ

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