【映画】アカルイミライ ― 2010/09/01
『アカルイミライ』(2002年・監督:黒沢清)
ホラーを撮り、家族ドラマを撮り、というワタシの中では今ひとつ作風が結びきれない(修行が足らん!まあ、映像派には間違いないだろうけど)クロサワ監督のホラーじゃない人間ドラマ。弟分である主人公(オダギリジョー)の「身代わり」に殺人を犯してしまう浅野忠信。彼の、5年間音信不通だった父(藤竜也)と、オダギリが出会い、擬似家族としてゆっくり再生へ向かう…という物語なのだ、が。
浅野の飼っていた(毒)クラゲが重要なファクターとして再三登場するが、その浮遊する姿に息苦しい現代の若者像をダブらせるというのも…何だかベタな( ^ ^ ; 。高圧的な工場長、生活感のない父親、絵に描いたような親子断絶、ありえない○○○の大群と、寓話劇として観るべきなんでしょうなこの作品は。まるでこれから映画が始まるかのようにく登場するラストの若者たち(おっ、松山ケンイチがいる。)もまた、それぞれの曖昧な「ミライ」ということか。
最新作の『トウキョウソナタ』はもうちょっと地に足が着いた家族ドラマだったけどネ。なんだかレビューになっていない(>_<) 曖昧な印象。
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ホラーを撮り、家族ドラマを撮り、というワタシの中では今ひとつ作風が結びきれない(修行が足らん!まあ、映像派には間違いないだろうけど)クロサワ監督のホラーじゃない人間ドラマ。弟分である主人公(オダギリジョー)の「身代わり」に殺人を犯してしまう浅野忠信。彼の、5年間音信不通だった父(藤竜也)と、オダギリが出会い、擬似家族としてゆっくり再生へ向かう…という物語なのだ、が。
浅野の飼っていた(毒)クラゲが重要なファクターとして再三登場するが、その浮遊する姿に息苦しい現代の若者像をダブらせるというのも…何だかベタな( ^ ^ ; 。高圧的な工場長、生活感のない父親、絵に描いたような親子断絶、ありえない○○○の大群と、寓話劇として観るべきなんでしょうなこの作品は。まるでこれから映画が始まるかのようにく登場するラストの若者たち(おっ、松山ケンイチがいる。)もまた、それぞれの曖昧な「ミライ」ということか。
最新作の『トウキョウソナタ』はもうちょっと地に足が着いた家族ドラマだったけどネ。なんだかレビューになっていない(>_<) 曖昧な印象。
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【本】科学と非科学の間 ― 2010/09/02
『科学と非科学の間 超常現象の流行と教育の役割[改訂 増補版]』安斎育郎著(かもがわ出版)
超能力をはじめ、UFO、UMA(未確認動物)、占い、霊など世の「超常現象」を科学的に検証・批判する本はいくつも出ているが、この安斎先生は、自身を「科学至上主義者ではない」としたうえで、それらを実証的に検証しているという点でかの大槻センセイよりも評価が高いようだ。
なにしろこの安斎先生は筋金入りのマジシャン(素人だけど)らしく、教える大学でも「『超常現象』を体験したときのインパクト以上のインパクトを与えることが有効」として、「教室で学生によって任意に選ばれたトランプを、電話帳から学生によって人気に選ばれた市民に電話で当ててもらう」といった実演をしているというが、ええっ、コレ見てみたい!( ^ ^ ;
さらに、じつは本書で一番面白かったのは最終章で、NHK人間講座「だます心 だまされる心」 で安斎センセイが実演したさまざまな「超常現象」を紹介している部分。これも見てみた~い!(笑)
全体としては「科学至上主義者ではない」点を強調しすぎるあまりか、超常現象トンデモ支持者への弁舌もそう鋭くなくユルい感じだし、副題にもある本書のキモである「教育」の部分も、それほど突っ込んだ論考になっていない…ので、余計に先生の「実演」部分に惹かれた次第。ぜひ、映像版の出版を期待します!( ^ ^ ;
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超能力をはじめ、UFO、UMA(未確認動物)、占い、霊など世の「超常現象」を科学的に検証・批判する本はいくつも出ているが、この安斎先生は、自身を「科学至上主義者ではない」としたうえで、それらを実証的に検証しているという点でかの大槻センセイよりも評価が高いようだ。
なにしろこの安斎先生は筋金入りのマジシャン(素人だけど)らしく、教える大学でも「『超常現象』を体験したときのインパクト以上のインパクトを与えることが有効」として、「教室で学生によって任意に選ばれたトランプを、電話帳から学生によって人気に選ばれた市民に電話で当ててもらう」といった実演をしているというが、ええっ、コレ見てみたい!( ^ ^ ;
さらに、じつは本書で一番面白かったのは最終章で、NHK人間講座「だます心 だまされる心」 で安斎センセイが実演したさまざまな「超常現象」を紹介している部分。これも見てみた~い!(笑)
全体としては「科学至上主義者ではない」点を強調しすぎるあまりか、超常現象トンデモ支持者への弁舌もそう鋭くなくユルい感じだし、副題にもある本書のキモである「教育」の部分も、それほど突っ込んだ論考になっていない…ので、余計に先生の「実演」部分に惹かれた次第。ぜひ、映像版の出版を期待します!( ^ ^ ;
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【CD】PANANUFA(パナヌファ) ― 2010/09/03
日本最南端の有人島・波照間島で2002年に制作されたCD『PANANUFA(パナヌファ)』をようやく入手。これが期待どおりで、清涼感溢れる逸品!。
波照間良美サンの素朴ながら艶やかな歌声と三味線に、岩崎順サンのギター、シンセサイザー、マンドリン、ジャンべなどが絡みに、その沖縄(島唄)サウンドに彩りを与える。
これは深くかの地の音楽を愛し、理解した者でなければ奏でることができない音楽ではないだろうか…。島の生活を彷彿させるゆったりとした時が流れ、至福感に包まれる全12曲。
民謡を中心とした構成だが、とくに①「ちんむくじゅうしい」、②「波照間島節」、④「ムングルクバーサ」、⑥「島々清しゃ」、⑦「月ぬ美しゃ」が素晴らしい。
試聴はコチラ↓上記②⑥⑦を聴くことができマス。(^_-)
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波照間良美サンの素朴ながら艶やかな歌声と三味線に、岩崎順サンのギター、シンセサイザー、マンドリン、ジャンべなどが絡みに、その沖縄(島唄)サウンドに彩りを与える。
これは深くかの地の音楽を愛し、理解した者でなければ奏でることができない音楽ではないだろうか…。島の生活を彷彿させるゆったりとした時が流れ、至福感に包まれる全12曲。
民謡を中心とした構成だが、とくに①「ちんむくじゅうしい」、②「波照間島節」、④「ムングルクバーサ」、⑥「島々清しゃ」、⑦「月ぬ美しゃ」が素晴らしい。
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【本】ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ ― 2010/09/04
『ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』 ドン・タプスコット+アンソニー・D・ウィリアムズ 著(日経BP社)
おそらく、かのクリス・アンダーソンもベストセラー『フリー』 を書く際に参考にしたであろう「集合知」を本格的に論じた本。つい先日読了した『クラウドソーシング みんなのパワーが世界を動かす』(ジェフ・ハウ著・ハヤカワ新書) も同様のテーマであり、これらの(アメリカを中心とした)世界的な動きに対して、日本でも『「みんなの知識」をビジネスにするクラウドソーシングの可能性』(兼元謙任+佐々木俊尚著・翔泳社) など多くの類書が生れている。
で、とにかくこの著者は、膨大な量の対話や議論をネット上で行うことを「ブロゴスフィア」、組織の壁を超えたコラボレーションを「ウィキワークプレイス」、財やサービスのつくり手になった消費者を「プロシューマー」などと名づけ、これらのコラボレーションの神髄「ウィキノミクス」を「あらゆるものが変化する新時代のメタファー」と位置づける。
もちろんこうした動きはインターネットの普及と進化がなければありえないムーブメントなわけだが、Wikipediaに代表される情報文化におけるウィキノミクスだけでなく、トヨタのプリウスやi-podなどの製品でも、プロシューマーによるコミュニティサイトが生れDIYが爆発的に進展しているというし、音楽におけるサンプリングなどの「リミックス文化」もこうした流れの一つだと、とらえる。
というわけで本書はさまざまな事例を挙げて、この「ウィキノミクス」文化を礼賛するのだが、「企業経営者は、成功するためには、ウィキノミクスを手本として、その原理原則を自分のものとしなければならない」とし、「企業は、コラボレーション環境で生きていくために、いままでにない能力を身につけなければならない」「--この能力が、今後の富の形成や成功の前提条件となる」とまで言い切られると、はたと疑問をもたざるをえなくなる。
なぜなら、とかく日本にこうした概念が持ち込まれるときに、この「経営者」「企業」が「労働者」にとって換えられ、まさに「いままでにない能力を身につけ」られない労働者を切り捨てる際の事由とされてしまう…ことを危惧してしまうからだ。
実際に「ウィキワークプレイス」へと職場環境が変化したときの「予測」として、「雇用関係関係は流動的になり、雇用関係は期間は確実に短くなり、間違いなく水平性が強まる」として、「社員の多くにとって、これは歓迎すべきことであるたずだ」としているけど、「水平性」はともかく、これってに社員(労働者)が望むこと!?
さらに、この「ウィキノミクス」って、結局、英語(アメリカ)文化の覇権主義じゃないの? 英語使えないとこのコミュニティサイトに入れないんじゃん!? といううがった見方ができるし。( ^ ^ ;
やっぱり、楽天サンみたいに英語を共通語にしないとと、日本は生き残れない!?(…20年後はこの「英語」が「中国語」に換わってたりして…)(>_<)
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おそらく、かのクリス・アンダーソンもベストセラー『フリー』 を書く際に参考にしたであろう「集合知」を本格的に論じた本。つい先日読了した『クラウドソーシング みんなのパワーが世界を動かす』(ジェフ・ハウ著・ハヤカワ新書) も同様のテーマであり、これらの(アメリカを中心とした)世界的な動きに対して、日本でも『「みんなの知識」をビジネスにするクラウドソーシングの可能性』(兼元謙任+佐々木俊尚著・翔泳社) など多くの類書が生れている。
で、とにかくこの著者は、膨大な量の対話や議論をネット上で行うことを「ブロゴスフィア」、組織の壁を超えたコラボレーションを「ウィキワークプレイス」、財やサービスのつくり手になった消費者を「プロシューマー」などと名づけ、これらのコラボレーションの神髄「ウィキノミクス」を「あらゆるものが変化する新時代のメタファー」と位置づける。
もちろんこうした動きはインターネットの普及と進化がなければありえないムーブメントなわけだが、Wikipediaに代表される情報文化におけるウィキノミクスだけでなく、トヨタのプリウスやi-podなどの製品でも、プロシューマーによるコミュニティサイトが生れDIYが爆発的に進展しているというし、音楽におけるサンプリングなどの「リミックス文化」もこうした流れの一つだと、とらえる。
というわけで本書はさまざまな事例を挙げて、この「ウィキノミクス」文化を礼賛するのだが、「企業経営者は、成功するためには、ウィキノミクスを手本として、その原理原則を自分のものとしなければならない」とし、「企業は、コラボレーション環境で生きていくために、いままでにない能力を身につけなければならない」「--この能力が、今後の富の形成や成功の前提条件となる」とまで言い切られると、はたと疑問をもたざるをえなくなる。
なぜなら、とかく日本にこうした概念が持ち込まれるときに、この「経営者」「企業」が「労働者」にとって換えられ、まさに「いままでにない能力を身につけ」られない労働者を切り捨てる際の事由とされてしまう…ことを危惧してしまうからだ。
実際に「ウィキワークプレイス」へと職場環境が変化したときの「予測」として、「雇用関係関係は流動的になり、雇用関係は期間は確実に短くなり、間違いなく水平性が強まる」として、「社員の多くにとって、これは歓迎すべきことであるたずだ」としているけど、「水平性」はともかく、これってに社員(労働者)が望むこと!?
さらに、この「ウィキノミクス」って、結局、英語(アメリカ)文化の覇権主義じゃないの? 英語使えないとこのコミュニティサイトに入れないんじゃん!? といううがった見方ができるし。( ^ ^ ;
やっぱり、楽天サンみたいに英語を共通語にしないとと、日本は生き残れない!?(…20年後はこの「英語」が「中国語」に換わってたりして…)(>_<)
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【映画】愛のむきだし ― 2010/09/05
『愛のむきだし』(2008年・監督:園子温)
3時間57分という長尺ながら、盗撮、虐待、宗教、暴力、純愛を壮絶に描き、国際的な評価も含めて、大きな話題を呼んだ邦画作。まず驚かされるのが、本作が監督が知り合った「盗撮のプロ」が新興宗教に入った妹を脱会させたという経験を基にししているという点。もちろんデフォルメはしているだろうが、「実話に基づいている」というのが、まさに現代ニッポンを象徴しているかの如くスゴイ!
つまりアメリカに大きな衝撃を与えた「9.11」が、いまだにアメリカ社会に深い傷を残していると同様に、この日本では「オウム」がそれと同様に深く突き刺ささったままでいることを本作は示し、さらに日本社会に深く根をおろす「虐待」をも照射する。そんな作品…だ。
それにしても、ワタシはこの作品に4時間もの間、惹きつけられっばなしデシた( ^ ^ ; 。これは展開が読めない強引ともいえるストーリーと、壮絶ななかにも全編ユーモアをにじませた脚本と演出の勝利でしょう。
ヒロインを演じた満島ひかりとカルト教団の安藤サクラの評判が高いようだが、主人公の西島隆弘も映画初出演とは思えない驚愕の演技(\_\) 。主人公の父である神父を演じた渡部篤郎も久々(?)の怪演もウレシかったっス。(^_-)
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3時間57分という長尺ながら、盗撮、虐待、宗教、暴力、純愛を壮絶に描き、国際的な評価も含めて、大きな話題を呼んだ邦画作。まず驚かされるのが、本作が監督が知り合った「盗撮のプロ」が新興宗教に入った妹を脱会させたという経験を基にししているという点。もちろんデフォルメはしているだろうが、「実話に基づいている」というのが、まさに現代ニッポンを象徴しているかの如くスゴイ!
つまりアメリカに大きな衝撃を与えた「9.11」が、いまだにアメリカ社会に深い傷を残していると同様に、この日本では「オウム」がそれと同様に深く突き刺ささったままでいることを本作は示し、さらに日本社会に深く根をおろす「虐待」をも照射する。そんな作品…だ。
それにしても、ワタシはこの作品に4時間もの間、惹きつけられっばなしデシた( ^ ^ ; 。これは展開が読めない強引ともいえるストーリーと、壮絶ななかにも全編ユーモアをにじませた脚本と演出の勝利でしょう。
ヒロインを演じた満島ひかりとカルト教団の安藤サクラの評判が高いようだが、主人公の西島隆弘も映画初出演とは思えない驚愕の演技(\_\) 。主人公の父である神父を演じた渡部篤郎も久々(?)の怪演もウレシかったっス。(^_-)
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【CD】ジュリー with ザ・ワイルドワンズ ― 2010/09/06
『ジュリー with ザ・ワイルドワンズ』
還暦を期して2008年に沢田研二が行った「人間60年・ジュリー祭り」 (東京ドーム)はスゴかった。全80曲、MCも休息もごくわずか、派手な演出もなく、ただただジュリーの歌を聴かせる6時間半にわたるコンサート。これが全然、退屈しなかった。素晴らしかった。ワタシは歌手・沢田研二を過少評価していたと、深く反省しました…。( ^ ^ ;
そのジュリーが満を持して、ワイルドワンズをパートナーに選び、新作に取り組み、コンサートツアーまでやってのけた!
そしてこのCDである。これがイイ。何がイイって曲がイイ。ジュリーの歌唱がイイ。「ジュリー祭り」で再認識した沢田のベルベット・ボイスが冴えわたる。
この人は本当に歌が好きだ。音楽を愛している。かつての盟友・タイガースではなく、ワイルドワンズ(加瀬邦彦)と共作をするという姿勢にそれが顕れている。ナツメロ番組に出ることをあれだけ嫌っていた沢田だ。気心知れた、信頼する、そして「現役」の音楽仲間たちと「いい音楽」をつくりたい。その一心できたのが本作だ。
けっして古びていない、そして還暦オヤジたちしか醸しだせない、ちょっぴりビターでエバーグリーンな音楽がココにある。
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還暦を期して2008年に沢田研二が行った「人間60年・ジュリー祭り」 (東京ドーム)はスゴかった。全80曲、MCも休息もごくわずか、派手な演出もなく、ただただジュリーの歌を聴かせる6時間半にわたるコンサート。これが全然、退屈しなかった。素晴らしかった。ワタシは歌手・沢田研二を過少評価していたと、深く反省しました…。( ^ ^ ;
そのジュリーが満を持して、ワイルドワンズをパートナーに選び、新作に取り組み、コンサートツアーまでやってのけた!
そしてこのCDである。これがイイ。何がイイって曲がイイ。ジュリーの歌唱がイイ。「ジュリー祭り」で再認識した沢田のベルベット・ボイスが冴えわたる。
この人は本当に歌が好きだ。音楽を愛している。かつての盟友・タイガースではなく、ワイルドワンズ(加瀬邦彦)と共作をするという姿勢にそれが顕れている。ナツメロ番組に出ることをあれだけ嫌っていた沢田だ。気心知れた、信頼する、そして「現役」の音楽仲間たちと「いい音楽」をつくりたい。その一心できたのが本作だ。
けっして古びていない、そして還暦オヤジたちしか醸しだせない、ちょっぴりビターでエバーグリーンな音楽がココにある。
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【本】世界を不幸にするアメリカの戦争経済 ― 2010/09/07
『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』(ジョセフ・E・スティグリッツ+リンダ・ビルムズ著・徳間書店)
「イラク戦費3兆ドルの衝撃」との副題のとおり、アメリカがイラク戦争でどれだけの金を使ったのか、どれだけの犠牲を強いたのか、具体的なデータを挙げて検証した戦争批判の書。
なんといっても本書のキモはその徹底したデータ主義だ。戦費「3兆ドル」(現在のレートで約255兆円!)という数字にいきつくまでに、膨大なデータを検証・蓄積し、さらに数字だけでは顕せない「兵士たちの犠牲」や「社会的なコスト」に至るまでその追跡の手を緩めない。
ちなみに、そのコスト(直接的な軍事活動費)は、12年続いたベトナム戦争の1.5倍、湾岸戦争の約10倍、第一次戦争の2倍になると推定され、過去にそれより高くついた唯一の戦争が第二次世界大戦というのだから、いかにイラク戦争が「巨大ビジネス」であったかわかる。
なお、本書によると、この戦争による日本の総コストは、原油高による財政出動なども3070億ドル(同・約26兆円)にのぼるという。
さらに本書の価値を高めているのは、実際にかかった戦費を隠蔽するという「戦争の不正会計」を正すために「戦費を“緊急”補正予算から支出させない」などの具体的な改革を案を提案していることだ。
おそらく今後の戦争批判のイデオローグとして、本書の果たす役割は非常に大きいと思う。「お金」「経済」という思想で、徹底的に戦争という愚行の本質に迫っているからだ。しかも、この手法は何も「戦争批判」だけに当てはまるものではない。例えば、議論を呼ぶ「原発」などもこうしたお金の面での徹底的な検証が必要なのではないだろうか? そうした社会批判・問題提起の「基準」をつくった点でも本書の意味は大きい。
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「イラク戦費3兆ドルの衝撃」との副題のとおり、アメリカがイラク戦争でどれだけの金を使ったのか、どれだけの犠牲を強いたのか、具体的なデータを挙げて検証した戦争批判の書。
なんといっても本書のキモはその徹底したデータ主義だ。戦費「3兆ドル」(現在のレートで約255兆円!)という数字にいきつくまでに、膨大なデータを検証・蓄積し、さらに数字だけでは顕せない「兵士たちの犠牲」や「社会的なコスト」に至るまでその追跡の手を緩めない。
ちなみに、そのコスト(直接的な軍事活動費)は、12年続いたベトナム戦争の1.5倍、湾岸戦争の約10倍、第一次戦争の2倍になると推定され、過去にそれより高くついた唯一の戦争が第二次世界大戦というのだから、いかにイラク戦争が「巨大ビジネス」であったかわかる。
なお、本書によると、この戦争による日本の総コストは、原油高による財政出動なども3070億ドル(同・約26兆円)にのぼるという。
さらに本書の価値を高めているのは、実際にかかった戦費を隠蔽するという「戦争の不正会計」を正すために「戦費を“緊急”補正予算から支出させない」などの具体的な改革を案を提案していることだ。
おそらく今後の戦争批判のイデオローグとして、本書の果たす役割は非常に大きいと思う。「お金」「経済」という思想で、徹底的に戦争という愚行の本質に迫っているからだ。しかも、この手法は何も「戦争批判」だけに当てはまるものではない。例えば、議論を呼ぶ「原発」などもこうしたお金の面での徹底的な検証が必要なのではないだろうか? そうした社会批判・問題提起の「基準」をつくった点でも本書の意味は大きい。
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【映画】エターナル・サンシャイン ― 2010/09/08
『エターナル・サンシャイン』(2004年・監督:ミシェル・ゴンドリー)
「記憶」をテーマにした恋愛(純愛)映画だが、どうもテイストが『マルコヴィッチの穴』に似ているなと思ったら、脚本にチャーリー・カウフマンが参加していた(カウフマン、ゴッドリーにピエール・ビスマスを加えた脚本チームは本作でアカデミー脚本賞を得ている)。そして、ゴンドリーと言えば、ビョークやケミカル・ブラザースら数多くの刺激的・実験的なミュージックビデオを手がけた映像作家として知られた存在だ。
が、そうした才能の結集のなかで、じつは本作を(商業的な意味も含めて)成功に導いた最大の功労者は、気弱な主人公を演じたジム・キャリーではないだろうか。
このスタイリッシュ、かつ(いわゆるハリウッド的な基準で言えば)難解な作品が、ハリウッドならびに多くのアメリカ人に受け入れられたのには、主役にコメディ俳優のジム・キャリーを配したことが大きい(と思う)。まさにクレバーなキャスティングだと思う。
もちろん『トゥルーマン・ショー』や『マン・オン・ザ・ムーン』といったシリアス演技での実績はあったにせよ、製作チームは本作でキャリーにコメディ色を一切廃し、見事なダメ男を演じさせている。観客は、あのキャリーが!という驚きとともに見事に、ゴッドリーの映像美と、まるでメビウスの輪のように入り組んだこの物語に引き込まれていく。
「記憶除去手術」というありえない設定によって、我々はこの寓話劇に導かれ、そして「記憶」「愛」というテーマを通じて、結局は「人間とは何か」という深淵なる問いにぶつかるのだ。
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「記憶」をテーマにした恋愛(純愛)映画だが、どうもテイストが『マルコヴィッチの穴』に似ているなと思ったら、脚本にチャーリー・カウフマンが参加していた(カウフマン、ゴッドリーにピエール・ビスマスを加えた脚本チームは本作でアカデミー脚本賞を得ている)。そして、ゴンドリーと言えば、ビョークやケミカル・ブラザースら数多くの刺激的・実験的なミュージックビデオを手がけた映像作家として知られた存在だ。
が、そうした才能の結集のなかで、じつは本作を(商業的な意味も含めて)成功に導いた最大の功労者は、気弱な主人公を演じたジム・キャリーではないだろうか。
このスタイリッシュ、かつ(いわゆるハリウッド的な基準で言えば)難解な作品が、ハリウッドならびに多くのアメリカ人に受け入れられたのには、主役にコメディ俳優のジム・キャリーを配したことが大きい(と思う)。まさにクレバーなキャスティングだと思う。
もちろん『トゥルーマン・ショー』や『マン・オン・ザ・ムーン』といったシリアス演技での実績はあったにせよ、製作チームは本作でキャリーにコメディ色を一切廃し、見事なダメ男を演じさせている。観客は、あのキャリーが!という驚きとともに見事に、ゴッドリーの映像美と、まるでメビウスの輪のように入り組んだこの物語に引き込まれていく。
「記憶除去手術」というありえない設定によって、我々はこの寓話劇に導かれ、そして「記憶」「愛」というテーマを通じて、結局は「人間とは何か」という深淵なる問いにぶつかるのだ。
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【CD】MOTHER/MINMI ― 2010/09/09
MINMIの新曲「パッと花咲く feat.VERBAL」
がスゴイことになっている。三味線の響きから入るこのダンスチューンは、和太鼓を模したドンドコリズムが全編を支配し、MINMIは江戸の花魁か、はたまた卑弥呼のごとくドスの効いた声を響かせるまさに和テクノ!途中入るVERBAL(m-flo)のラップもまったく違和感がなく、これほど正面から「和」を取り入れ、かつそれを消化したJ-POPナンバーは、そうそうお目(耳)にかかれない。
MINMI 『パッと花咲く feat.VERBAL』
その絶好調のMINMIが7月にリリースしたアルバムがこの『MOTHER』。実生活でも母親となったMINMIによる、「母性」をテーマとしたコンセプトアルバムで、肝ッ玉座った“毎日母さん”全開の快作だ。
なにしろ1曲目から7分を超える長尺ナンバーで、あの①「アベマリア」を静かに歌い始めたかと思うと、途中からとアッパーなダンスナンバーに急転…。ザ・ブームのカバー③「星のラブレター」をキャッチーなレゲエ・ナンバーに仕上げ、⑤「初夢」はまるで大瀧詠一の『ナイアガラ・カレンダー』 への返歌のようなリア充描写を歌いこむ。
タイトル・ナンバー⑥「MOTHER」では力強く、⑨「平成の乙女」をアッケラカンと歌いとばし、⑪「キセキ」を子守唄とし、⑬「向日葵」をドラマチックに歌いあげる…。
MOTHER DIVAとなったMINMIの充実ぶりと、改めてその才能にホレ直した一枚。
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MINMI 『パッと花咲く feat.VERBAL』
その絶好調のMINMIが7月にリリースしたアルバムがこの『MOTHER』。実生活でも母親となったMINMIによる、「母性」をテーマとしたコンセプトアルバムで、肝ッ玉座った“毎日母さん”全開の快作だ。
MOTHER
MINMI 価格:2,600円 評価:★★★★★
なにしろ1曲目から7分を超える長尺ナンバーで、あの①「アベマリア」を静かに歌い始めたかと思うと、途中からとアッパーなダンスナンバーに急転…。ザ・ブームのカバー③「星のラブレター」をキャッチーなレゲエ・ナンバーに仕上げ、⑤「初夢」はまるで大瀧詠一の『ナイアガラ・カレンダー』 への返歌のようなリア充描写を歌いこむ。
タイトル・ナンバー⑥「MOTHER」では力強く、⑨「平成の乙女」をアッケラカンと歌いとばし、⑪「キセキ」を子守唄とし、⑬「向日葵」をドラマチックに歌いあげる…。
MOTHER DIVAとなったMINMIの充実ぶりと、改めてその才能にホレ直した一枚。
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【映画】エレニの旅 ― 2010/09/10
『エレニの旅』(2004年・監督:テオ・アンゲロプロス)
長廻しの帝王・アンゲロプスの(今のところ)最新作にして傑作。日本で公開されたアンゲロプス作はほとんど観てきたが、本作はそうした傑作群のなかでも頂点を成すといってもいい作品ではないかと思う。
戦災孤児となった少女エレニが、歴史に翻弄されながらまるでギリシャの現代史を体現するように、その困難な人生を生き抜いていく…という物語だが、例によってアンゲロプスならでは映像美によってこの悲劇を神話劇のように紡いでいく。
黒澤や溝口は、しばしば映画「写真」と称していたと思うが(連続した「写真」という意味ではまさにその通り)、アンゲロプスのそれはまるで「絵画」のようだ。
絶賛された水没した村のシーン(画像参照↑)。まさに巨大なフレスコ画がスクリーンに浮遊するように圧巻する。その「絵画」を「超」がつくようなロングショットで捉え、そのワンショットのなかで時間の経過を自由に操るという独特のマジックを魅せる。
カメラの視点が観る者の視点に重なり、ワタシたちはスクリーンへの凝視を強いられる。そこへ突然の(何らかの)フレームインで、観客の度肝を抜く。ゆったりとしたカメラのパンから飛び出した突然の映像に、ワタシたちはこの物語のなかに放り出され、晒される。まるで、登場人物たちとともに歴史を彷徨する流浪の民のように…。
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長廻しの帝王・アンゲロプスの(今のところ)最新作にして傑作。日本で公開されたアンゲロプス作はほとんど観てきたが、本作はそうした傑作群のなかでも頂点を成すといってもいい作品ではないかと思う。
戦災孤児となった少女エレニが、歴史に翻弄されながらまるでギリシャの現代史を体現するように、その困難な人生を生き抜いていく…という物語だが、例によってアンゲロプスならでは映像美によってこの悲劇を神話劇のように紡いでいく。
黒澤や溝口は、しばしば映画「写真」と称していたと思うが(連続した「写真」という意味ではまさにその通り)、アンゲロプスのそれはまるで「絵画」のようだ。
絶賛された水没した村のシーン(画像参照↑)。まさに巨大なフレスコ画がスクリーンに浮遊するように圧巻する。その「絵画」を「超」がつくようなロングショットで捉え、そのワンショットのなかで時間の経過を自由に操るという独特のマジックを魅せる。
カメラの視点が観る者の視点に重なり、ワタシたちはスクリーンへの凝視を強いられる。そこへ突然の(何らかの)フレームインで、観客の度肝を抜く。ゆったりとしたカメラのパンから飛び出した突然の映像に、ワタシたちはこの物語のなかに放り出され、晒される。まるで、登場人物たちとともに歴史を彷徨する流浪の民のように…。
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