【映画】チェイサー2010/09/25

映画『チェイサー』
『チェイサー』(2008年・監督:ナ・ホンジン)
実際に起こった連続殺人事件をモチーフにしたという話題の韓国映画。驚くべきはこれが長編デビュー作という監督の手練。猟奇的な殺人を繰り返す犯人を、デリバリーヘルスを経営する元刑事が追う、というストーリーだが、そこはかとないユーモアをまぶしながら、観客もその追跡劇に誘う術はタダ者ではない。
なにしろ、無表情な殺人マシーンによる殺戮シーンはスプラッター映画そのもの。そこに、元刑事の節操のないダメダメぶりが、先輩警官やヘルス嬢とのやりとりのなかで、笑いを誘いながら描かれる。そして監禁されたヘルス嬢の娘と、互いに反発しながらも心通じさせていく様に、やがてワタシたちはこのダメ男に共感を覚え、スクリーンのなかの追跡者(チェイサー)と同期する。
娘が号泣する場面をあえて無音にし、その絶望感と無力感を際立させる。あるいは、ダメ男がなぜ警察を辞めたのか、どんな育ち方をし、なぜ娘のためにヘルス嬢を必死で探そうとするのか、いずれもほぼワンシーンで語ってしまう。その技量はとても「新人監督」とは思えないらつ腕ぶり。
それにしても、さすがは「恨」の国、韓国(映画)人の「業」の描き方はハンパじゃない。『母なる証明』がそうであったように、ラスト近く、あまりの救いのないその展開に、ワタシたちは奈落の底に突き落とされる。…が、最後の一幕。『グムエル~漢江の怪物』のラストを彷彿させる「希望」を暗示させながら、この映画は静かに幕を閉じる…。
それにしても本作、ハリウッドでリメイクされるというがこのラストはどうするのだろうか? 近年の韓国映画の底力を示す、繊細にして、あまりに大胆なコリアン・フィルム・ノワール。

↓応援クリックにご協力をお願いします。
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ