【映画】エレニの旅2010/09/10

エレニの旅
『エレニの旅』(2004年・監督:テオ・アンゲロプロス)
長廻しの帝王・アンゲロプスの(今のところ)最新作にして傑作。日本で公開されたアンゲロプス作はほとんど観てきたが、本作はそうした傑作群のなかでも頂点を成すといってもいい作品ではないかと思う。
戦災孤児となった少女エレニが、歴史に翻弄されながらまるでギリシャの現代史を体現するように、その困難な人生を生き抜いていく…という物語だが、例によってアンゲロプスならでは映像美によってこの悲劇を神話劇のように紡いでいく。
黒澤や溝口は、しばしば映画「写真」と称していたと思うが(連続した「写真」という意味ではまさにその通り)、アンゲロプスのそれはまるで「絵画」のようだ。
絶賛された水没した村のシーン(画像参照↑)。まさに巨大なフレスコ画がスクリーンに浮遊するように圧巻する。その「絵画」を「超」がつくようなロングショットで捉え、そのワンショットのなかで時間の経過を自由に操るという独特のマジックを魅せる。
カメラの視点が観る者の視点に重なり、ワタシたちはスクリーンへの凝視を強いられる。そこへ突然の(何らかの)フレームインで、観客の度肝を抜く。ゆったりとしたカメラのパンから飛び出した突然の映像に、ワタシたちはこの物語のなかに放り出され、晒される。まるで、登場人物たちとともに歴史を彷徨する流浪の民のように…。

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