【映画】マリア・ブラウンの結婚2011/02/16

マリア・ブラウンの結婚
『マリア・ブラウンの結婚』(1979年・監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)

ニュー・ジャーマン・シネマの騎手”という呼称も懐かしいファンスビンダー監督の代表作だが、当時観る機会を失し、ワタシにとっては長らく“幻の名画”だったのだが、先頃ようやくケーブルTVで鑑賞。

第二次世界大戦末期、爆撃下のドイツで結婚式を挙げたマリアだが、たったひと晩過ごしただけで夫へルマンは戦地に赴き、やがて戦死の便りが届く。戦後の混乱のなかで、マリアは黒人兵ビルと出会うのだが、偶然にもそこへ死んだはずの夫が還ってくる…。

さらに物語は急転し、マリアはさらなるパトロンを得るのだが、このあたりのマリアの不屈の魂と“男を利用”してのし上がっていく行動力は、さながら『風と友に去りぬ』のスカーレット・オハラを彷彿させる。

キャラクターのテイストはまったく違うが、ビビアン・リーが気丈な娘を演じたように、ここでは気高く気品に富む淑女をハンナ・シグラが強烈に演じる。
そして、ここでのレッド・バトラーは「夫」であることが、最後に明かされるのだが、ハンナの“明日”はスカーレットが力強く叫ぶ「tomorrow is another day.」にはならない。

ここが、アメリカン・ドリームの原点ともいえるアメリカ開拓史のなかで描かれた『風と~』と、混迷するドイツ現代史を体現するかのようなマリアの人生を描いた『マリア~』との違いか。

しかし、ドラマティックな展開をみせる本作ではあるが、そこにアメリカ映画とは違うヨーロピアンな香りを漂わせ、マリアの囲む“紳士”たちの佇まいから室内の調度品まで、気品が感じられるのはやはり歴史性というべきものだろうか…。

一方で、カメラが突然パンするなど、70年代TVドラマを思わせるテイストもみられ、重厚な作風とも、はたまたスタイリッシュというほどの演出も見られないのだが、ラストはテレビ音声と現実をシンクロさせて画面に緊迫感を呼び込む。そして、結末はその名にふさわしくじつにニュー・シネマ的に終わる。

それも今観るとさほど衝撃的でもないのだが、やがて東西分裂を迎えるドイツ社会を暗示する意味ではふさわしいラスト・シーンともいえる。やはり、“ベルリンの壁”が重くのしかかる時代でしかつくりえなかった、“時代が語る”映画なのだろう。

『マリア・ブラウンの結婚』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「天才ファスビンダーが、正政法で戦後ドイツにとりくんだ作品」--戦争映画専門サイト
「ドイツらしく、始終肌寒い空気が映画の世界を支配」--映画音楽書物遊戯等断罪所
「ファンスビンダーとアンナ・シグラとの『狂気の共有』」--CinemaScape-映画批評空間

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