【映画】消されたヘッドライン2011/02/03

消されたヘッドライン
『消されたヘッドライン』(2009年・監督: ケヴィン・マクドナルド)

2009年に刊行されたキネ旬ムック『オールタイム・ベスト映画遺産200 外国映画篇』 のコラム「ある視点・ジャンルで観る映画」で、川村晃司氏(テレビ朝日コメンテーター)が「政治映画ベスト10」の一つとして選出していた本作。

ところがどうしたことか。本誌である「キネマ旬報」の2009年外国映画ベストテンでは、『フロスト×ニクソン』『戦場でワルツを』『チェ 28歳の革命/39歳別れの手紙』『カティンの森』といった“政治映画”に気おされてしまったのか、1票も得票できずに圏外となっている。

たしかに、ジャーナリズム×政治の巨悪という古典的なテーマで新味はないかもしれないが、芸達者なラッセル・クロウ主演の見どころあるサスペンス映画として、もう少し評価されていてもいい作品だと思うのだが…。

ドラッグ中毒の黒人少年の射殺事件に端を発した“事件”は、やがて国会議員コリンズ(ベン・アフレック)のもとで働く女性職員ソニアの地下鉄での転落死にリンクしはじめ、らつ腕新聞記者のクロウらが次第に巨大な政治と軍事産業の“闇”に迫っていく…というストーリー。

うらぶれたベテラン記者キャロ(クロウ)が、独特の感(かん)と経験、強引ともいえる取材度胸を武器に、コンビを組む若き女性記者デラ(レイチェル・マクアダムス)とともに、真相に迫っていくじつに正当的なサスペンス。

ここには、派手なアクションも、銃撃戦も、CG映像もない。だが、近頃珍しいストーリー(脚本)重視の展開で、画面は緊迫感に満ち、終始観る者を惹きつけてやまない。

そこに、絶妙なアクセントを加えるのが、名優ヘレン・ミレン演じるところの女性編集長。ときにキャロに悪態をつき、「履いているパンティの色まで調べてきなさい!」とハッパをかけるかと思えば、上層部の顔色を伺う弱腰をみせるなど、変幻自在の演技。本当にいい役者だと思う。

親友コリンズとの友情と裏切り、コリンズの妻とのはかない恋、ネット版記者であるデラとの確執と邂逅、政府の圧力と“暗殺”におびえながら炸裂する記者魂…と、いくつもの伏線が張られた事件は意外な方向へと展開していく…。

しかし、そうしたサスペンス・ドラマの“秀作”として幕を閉じるはずだった本作が、最後に馬脚(?)を表すのがラストのどんでん返し。ネタバレになるので詳しくは記せないが、せっかくの“大陰謀ドラマ”があまりに個人的なオチで、これでは拍子抜け。

この画竜点睛を欠くラストが、低評価につながったのだろうか…。
しかしながら、そうした欠点をもってしても、見過ごすのにはもったいない作品だと思う。ぜひ、再評価を。

『消されたヘッドライン』の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「“二転三転”が本作の急所。終盤、ひねりすぎるのが惜しい」--映画ジャッジ!(渡まち子氏)
「米国の産業構造の腐敗を暴くとともに、人間の複雑さを描く」--映画ジャッジ!(福本次郎氏)
「社会派ネタが好きな方にオススメの秀作エンターテインメント」--映画ジャッジ!(山口拓朗氏)
「一人の『悪人』の『犯罪』に矮小化」--粉川哲夫の「シネマノート」
「仕事=正義感の間で揺れ動く葛藤を描いた人間ドラマ」--LOVE Cinemas 調布
「予想していたのと微妙に違い、新鮮」--Wilderlandwandar
「消化不良で終わっていて頓珍漢な印象」--佐藤秀の徒然幻視録
「キャラクターの掘り下げが少なく、物足りない」--Life on Mars
「カルとコリンズの友情と対決が見事な作品」--たいむのひとりごと
「ある意味、工夫された脚本。だからラストは『これでいい』」--Cafe Opal

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