【アート】吉田夏奈展2011/02/15

吉田夏奈展
東京オペラシティ・アートギャラリーで、曽根裕展「Perfect Moment」と共に同時開催されていた吉田夏奈展も印象に残る個展だったので、簡単に触れておきたい(2月13日)。

この作家の作品については、まったく予備知識なしの出会い頭の遭遇だった。
日本の四季を描いた収蔵品展「ゆきつきはな わが山河 Part III」を観終えてコリドール(廊下)へと進むと、その個展は突然始まる。まさしくそのコリドールが、展示会場となっているのだ。
1975年生れというこの女性作家のドローイング作品が廊下の壁にズラリと並ぶのだが、何といっても目を奪われるのは壁いっぱいに描かれた大作「Beautiful Limit ─ 果てしなき混沌への冒険」だ。

60.5㎝×91㎝のパネルに描かれた絵が組合わせされたその作品は、全長40メートルにも及ぶという。しかも会場に置かれたリーフレットには「サイズ可変」(!)と書かれており、そのパネルを自由に組み換えて、違った風景を写し出すことができることを示唆している…。

そして、そのクレヨン・パステルによるパネル画の集積によって出現したのは、巨大な連山の景色だ。さまざまな山頂の風景が連なり、それが延々とコリドールに続く…。
低草に覆われた緑はう山や、雪残る白き山も見えるが、基調となっているのはゴツゴツとした岩肌を露にした山だ。いや、“岩”だ。

この人は“岩フェチ”ではないかと思えるほど、一つひとつの岩が緻密に描かれる。対面に展示された本作の試作となるドローイングにも、その執着ぶりが端的に顕れている。

その幾何学模様にも見える岩の結晶が、山を覆う。岩が鎧のように山に張りつく。張りついた岩と岩が身を寄せ合って、生き物のようにうごめく。岩が、山が、今にも動き出しそうに、キャンバス(壁)を支配する。

だが、「圧倒される」という形容はここではふさわしくない。
生命の気配を感じさせる岩山たちは、絵の中に閉じ込められたかのようにじっと身を潜めているかのように見える…。
ロジャー・ディーン池田学氏のような「幻想的」ともまた違う、清楚で透明感のある迫力。そんな言い表せない魅力をもったを作品だ。

しかもこの作家は、本会場での展示の後も100mを目指して作品を描き続けていくという。まさにこの個展は、現在進行形で“進化する”作品の、その制作過程を作品化してしまったかのような、試みでもあるのだ。

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