【本】人種マニア 有名人のエスニックルーツをカリカチュアで大紹介!2011/02/19

人種マニア―有名人のエスニックルーツをカリカチュアで大紹介!人種マニア―有名人のエスニック・ルーツをカリカチュアで大紹介!
渡辺 孝行

社会評論社 2010-10
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これは面白い!「面白い」という表現は不謹慎かもしれないが、じつにユニークな視点で編まれた書だ。

副題にある通り、世界各国の著名人のエスニック・ルーツ(民族的出自)をカリカチュアされた似顔絵とともに紹介するというもの。ただそれだけの構成なのに、そこからは多面的な“意味”が立ち上ってくる。

「日本人」にはあまりピンとこないかもしれないが、欧米人の多くは混血だ。例えば、あのマドンナの本名は、マドンナ・ルイーズ・チッコーネでイタリア系の血を引くことがわかる。しかし、その彼女がフランス系カナダ人の血も引いていたことは、本書を読むまでワタシも知らなかったし、そもそも「名前」からエスニック・ルーツを推察するのはかなり難しいことだ。

アーノルド・シュワルツェネッガーがオーストリア系であることは多くの人が知るところだが、いかにもイタリア系の名をもつレオナルド・ディカプリオに、ロシアとドイツの血も混じっていることはそう知られたことではないだろう。
ビル・クリントン米元大統領も“本名”だが、イングランド+スコットランド+アイルランドのほかに、なんとネイティブ・アメリカン(チェロキー)の血も引いていたとは!…。

そもそもワタシこうしたエスニシティに関心を持つようになったのは、米国の永住権を取得しているマレーシア人青年から聞いた話に端を発している。
それはもう20年以上の前のことなのだが、多民族国家アメリカのなかで、とりわけ人種のルツボと言われるニューヨークで育ち、高校、大学もその地で過ごした彼だが、その間、一人の白人の友だちも出来なかったという。
友だちは中国人や韓国人などのアジア人だけで、そうした彼のアジア人の友人たちもまた、誰一人として白人の友人を持つ者はいなかったという…。

この話には驚いた。
それまで白人と黒人の刑事がコンビを組んだ『48時間』『リーサル・ウェポン』シリーズ、日系人スタッフが活躍する『スタートレック』などでイメージしてきた、多民族共生社会アメリカの幻想が一気に消し飛んだ。

その後、何人かのアメリカ人(白人)にこの点を尋ねてみると、たしかにそうだという。子どもの頃は白人、黒人、アジア人関係なく遊んだ友だちも、大人になるにしたがって関係が疎遠になってしまう。
仕事は一緒にすることがあっても、私生活上で白人と黒人、アジア人などが家族ぐるみでつき合うなどということは、ほとんどありえないという…(現在の状況は知らないが)。

そんなアメリカ社会の現実を知ってから、エスニック・ルーツに俄然興味を持つようなった。
例えば、子どもの頃に夢中になって観ていた『刑事コロンボ』がじつはイタリア系で、その“イタ公”がWASPとおぼしきセレブな犯人を追いつめていくことに、多くのアメリカ聴視者が溜飲を下げたのではないか…とか。

リンゴ・スターを除くビートルズのメンバー全員がアイリッシュの血を引き、彼らの音楽の中にイギリス本土から差別され続けた“不屈の魂”が引き継がれているのではないか…といった妄想を膨らませていった。

クリント・イーストウッド監督による傑作『グラン・トリノ』にしても、あの偏屈な老主人公が、なぜ移民少年のために一肌脱いで力を貸そうとしたか? その理由に、かつて自分もポーランド系移民として苦労を重ねた過去が暗喩として示されていた。
だからこそ、移民仲間の床屋(イタリア系)、建設現場の監督(アイルランド系)に声をかけ、「こいつも俺たちと同じ移民だ。俺たちも苦労した。助けてやろうじゃないか」というエスニック・マイノリティとしての互助精神が感じてとれるのだ。

前置きが長くなったが本書には、言われてみれば「なるほど」と頷くエスニック・ルーツを持つ人もいれば、「ええっ!~そうだったんだ」と声を上げてしまうような人までが、ずらりと並ぶ。

ちなみに前者の代表が、ザンジバル生れのイラン系ゾロアスター教徒のフレディ・マーキュリー、イタリア+ウクライナ-ユダヤ+チェロキー系アメリカ人のスティーブン・タイラー、アルゼンチン+イングランド系イギリス人のオリヴィア・ハッセイあたりなら、後者としては先のクリントン元大統領やドイツ+スコットランド+フランス+スコットアイリッシュ+チェロキー系というメチャ混血なエルヴィス・プレスリー、アフリカ系+中国系のNe-Yo(ニーヨ)あたりを挙げておこう。
それにしても、フィンランド+スイスに混じるレニー・ゼルウィガーの「サーミ」や、アンディ・ウォホールの「ルシン」など、ワタシも知らないエスニック名も散見し、思わずWikiってしまった。

カルカチュアされたその大仰な似顔絵イラストの好き嫌いは別れるだろうが、せっかく前書きや本文(といっても名前とエスニック名だけだが)も英文なのだから、そのまま英語版を電子出版にすればいいのに、と思ってしまう…。
欧米に類書がなければ結構売れるのではないだろうか?

こうしたポップ(?)な本が、“堅い本”の版元として知られる社会評論社 から刊行されたこともまた面白い。

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