【写真】写真集を作る前に知っておきたい幾つかのこと2010/09/20

Antoine d'Agata Vortex
千代田アーツ3331を訪れたついでといっては何だが(失礼)、同会場の1F ラウンジ で開催されたトークセッション「写真集を作る前に知っておきたい幾つかのこと」に参加(9月18日)。
写真評論家の飯沢耕太郎氏、木村伊平衛賞を連発している赤々舎代表の姫野希美氏、丸善のバイヤー・山地恭子氏が、写真集の現在と未来、とり巻く状況などを語った2時間のトークライブで、会場にはカメラマンや編集関係者とおぼしき100人近い参加者が熱心にトークに耳を傾けた。司会は、雑誌「ecocolo」発行人で3331コーディネーターの粟田政憲氏で、ネット駆使しながら関連する事項をスクリーンに映し出しながらの進行(GJ)。
今回はレビューというよりも、以下その簡略な報告。なお各人の発言は大意で、正確でない場合もあると思うがご容赦いただきたい(敬称略)。

「写真集には一過性でない魅力がある」と飯沢が切り出せば、姫野は「写真展で写真を見るよりも、ページをめくる生理感覚で写真集が好き」として、「見たことのない写真、出会ったことのない写真」を写真集にしてきた、とその編集ポリシーを語る。
山地は書店で、どのような写真集を注文し、棚に並べるか、その部内会議の様子など内情を語る。
「写真集は写真家だけでなく、編集者やデザイナー、印刷業者などさまざまな人たちによる協同作業によってつくられる団体競技みたないなもの。だから写真家は鍛えられる」と笑いとばす飯沢だが、同時に「高い、重い、かさばる」と、“嫌われ者”の写真集の現状も指摘。
こうした状況に対しては姫野は、「『写真集を贈りたい人にプレゼントする日』をつくるなど、業界の横断的なキャンペーンやフェアや必要」と言えば、飯沢が即座に「全面的に賛成。今日からそれをやろう!」と呼応する。
ワタシが聞いてみたいと思っていた電子出版との関わりについても言及した。
「電子出版を試してみたい気持ちはある」(姫野)、「電子出版はどんどんやったらいい」(飯沢)と、電子出版に対して前向きな意見が聞かれた一方で、「電子出版に向いた写真があると思うがまだ見つけていない」(姫野)、「自分が電子出版の写真を評論する気はない」(飯沢)、「丸善に来るお客さんは年配の方が多いのでまだ現実的ではない」(山地)と、やはりまだ手さぐり状態のよう。
「まだまだ(写真集を見る)アプリがない」(飯沢)というが、ワタシだって写真集をi-phoneやi-padで見たいとは思わない。ただ、例えば現在のデジタルフォトフレームがもっと大型化し、壁かけ式になったらどうだろうか? i-padにダウンロードした写真集をフォトフレームに無線で飛ばせば、そこでプライベート写真展ができる。フォトフレームの特性よろしく写真が次々に変化していく…そんな使い方が出来るようになれば、また新たな「写真集の意味」が発見されるのではないだろうか?
あるいは、ネット上に転がる著作権フリーの画像を集めてお気に入りのデジタル写真集をつくる。それをまたネット上に公開する。ワタシは「写真集の未来」として、そんな妄想を膨らませてしまうのだが…。

後半はビールも投入され(笑)、3者のトークもますます冴えわたる。
ワタシ的には、姫野が言う「アイドル写真集はアートの棚には置かれない。アイドル写真集売り場に置かれるような写真集をつくることで、今まで写真集を興味がなかった人たちを惹きつけたい」という、マーケットを広げようとする姿勢に強い共感を覚えた。
さて最後に、会場からの質問「好きな写真集を一冊挙げたら?」への回答をここ記しておこう。
姫野… 『Vortex』 (渦) アントワーン・ダガタ
飯沢…ライアン・マクギンレー
山地…『空の名前』 高橋健司(角川書店)

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