【落語】落語教育委員会2010/01/05

新春落語教育委員会(東京芸術劇場・中ホール)
昨夜は池袋へ本年初の落語会へ。
柳家喬太郎三遊亭歌武蔵柳家喜多八の三氏が定期的に開催している三人会で、チラシには「古典あり新作あり」とあるけど、この日は前座の柳家さん弥(金明竹)も含めて全て古典。

昨年刊行された『今おもしろい落語家ベスト50』(文春MOOK)で1位に選ばれて、何かと話題を呼んでいる喬太郎サン。しかし、談志や志の輔を抑えて1位というのには驚いた!ワタシも大好きで何度となく高座は聴いているが、ホントいいだろうか…(笑)。が、とにかくこの日は絶好調、歌武蔵がマクラで「もうやりたい放題」と呆れていたがその通りのハッチャケぶりで、会場を大きく沸かす。
続く歌武蔵は元相撲取りで、マクラでたいていその話に触れるのだが今日はナシで、その大きな身体と顔で「短気」「気長」をうまく演じ分け、いやぁ、この人こんなに上手かったっけ?
喜多八を生で聴くのは始めて。個性の強い二人の後で静かに始まった「寝床」だが、喜多八お得意のボヤキが番頭の口調に重なり、独自の世界をつくる。
それぞれの噺家の個性を楽しんだ一夜。



【映画】アバター2010/01/06

観ました!話題の3D作品『アバター』(2009年・監督:ジェームス・キャメロン)
まず、その3D映像だけど、ウワサどおり「映像が飛び出す」というより、まさに「映像の中に入る」という感じ。「観るのではない。そこにいるのだ」というコピーもあながちウソではない。( ^ ^ ; 今後はこの映像感覚が3D映画の基本になるのでは?というくらい新鮮。
まあ、しかし3Dのせいもあるけど、情報の洪水に圧倒されます!
もちろん惑星パンドラをはじめそこに住む生物の造形や何やらすべてがキャメロン印。
息もつかせず3時間近くを駆け抜ける映像「体験」でした。
えっ、ストーリー? それは『ビデオドローム』+『ダンス・ウィズ・ウルブズ』+『ラスト・サムライ』+『風の谷のナウシカ』ほか宮崎映画+and more…でしたね。( ^ ^ ;
それにしてもキャメロンは「強い」女性が好きなんだなぁ…。そして義侠的なメンタリティ。
そのあたりも幅広く支持され、ヒット作を連発する超職人監督のヒミツかも。

【本】マーク・ピーターセンの日本映画論2010/01/07

『長続きするNPO設立の運営と実際』(高比良正司著・明日香出版)
書名どおりのNPO設立&運営ハウツー本。数々のNPOを設立・運営してきた著者ならではの体験と実利に沿ったNPO指南でありNPO社会実現のための啓蒙書。

【番外編】
今春創刊された『ENGLISH PLUS』創刊号の特別付録『マーク・ピーターセンが英語で語る日本の名画・名優・名監督』が素晴らしい。小津から宮崎駿まで、日本映画を自身や欧米人がどのように観ているか解説・批評しているが、とても上質な日本映画論になっていると思う。『タンポポ』での笠智衆の「住職」役は、『男はつらいよ』のパロディーだなんて気がつかなかった!( ^ ^ ;  『日本人の英語』(岩波新書)再評価で話題の著者だが、この人の本格的な日本映画論が読みたい!

【コミック】最近読んだコミック2010/01/08

『この世界の片隅に(上)(下)』(こうの史代・双葉社)
広島の原爆をテーマにした『夕凪の街 桜の国』で注目を集めた作家による続編的な家族ドラマ。今度の舞台は戦中の広島県の軍都、呉。じつは『夕凪~』にあまりピンとこなかったワタシだが、その作風をさらに進化させて、声高に戦争反対などの主張をするのではなく、丹念に丹念に戦時下の暮らしを描いていくこというその手法が見事に結実している。たしかに今でも博物館にいけば、戦中・戦後の生活をある程度知ることができるが、マンガでそれを見事に描ききったというのは実は過去の戦争マンガ・戦記物にもあまりなっかたのではないか? ワタシも含めて、戦争を知らない世代に向けたアーカイブとしての仕事として評価できると思う。

『PLUTO(1~8)』(浦沢直樹×手塚治虫・小学館)
浦沢直樹が『アトム』へのオマージュとして現代にその魂を蘇らせたリメイク作品。浦沢といえば何しろ『MONSTER』『20世紀少年』といったミステリー仕立ての長編を得意としているので、こりゃどうなるのかと思ったら8巻で終わっちゃった( ^ ^ ; 。まあ、ワタシもかすかに読んだ記憶のある「地上最大のロボット」のエピソードをもとにしているので、なるほどラストもこーなるのか納得。(^_-)  それにしても巻末に付された村上知彦氏や山田五郎氏の解説が秀逸。みんな手塚への愛に溢れています…。

【映画】最近観た映画2010/01/09

『叫(さけび)』(2006年・監督:黒沢清)
『CURE』がとてもコワかった今や世界的なもう一人のクロサワのホラー(?)映画。この人は映像的な怖さではなく、もっと不安や恐怖を心の深層からえぐるような作風だったと思うけど、この作品では結構映像もコワイ( ^ ^ ; 。なんだか混沌のまま終わるけど、これもクロサワ節なんだろうな…。

『暴力の街』(1950年・監督:山本薩夫)
物資統制下・占領下の地方都市で実際に起きた「本庄事件」という実話をもとにしているそうだが、何より驚いたのは日本映画人同盟と日本映画演劇労働組合の協力作品であるということ。なので、出演者のロールでは、東宝、松竹、大映という会社別の俳優陣に加えて「フリー 池部良 …」といった表記も。へぇ、こんな映画のつくり方もあったのか…とまず感心。しかも実際に暴力団による妨害を跳ね返しながらロケが敢行され、国会でも話題になったという力作。

『江分利満氏の優雅な生活』(1963年・監督:山本喜八)
山口瞳の原作をもとに戦中派の「昭和人」江分利満の生活を通して、昭和30年代の典型サラリーマンの日常を描いたコミカルな作品。サラリーマンという新しい生態をちょっと斜に構えながら分析するというのは当時は新鮮だったのかも。アニメーションや合成技術、ストップしモーションを使って、岡本監督らしい奇抜な作品。

【落語】新春!しながわ寄席2010/01/10

『新春!しながわ寄席②回目~東西至高の話芸~』(1月9日・よしもとプリンスシアター)
「吉本興業による落語中心の寄席は、これまでなら考えられなかった」(by桂三枝)という東京・品川よしもとプリンスシアター(ワタシはここも初めて)での、上方落語会。
古典落語の演目には、上方生まれのものも多いが、この日の「鹿政談」(桂文昇)や「寝床」として知られる「素人義太夫」(林家染丸)もその一つ。で、上方で染丸サンがどう評価されているかよー知らんが、先日聴いた喜田八サンのそれとはまた違い華やかな芸で笑わせる。
MIグランプリで6位になったという若手・東京ダイナマイトの漫才に続いて、この日も爆発した喬太郎サン!この「母恋くらげ」(新作)を聴くのは二度目だが、オチがそうだからといって「みかんの皮が…」というのはたしかにちょっと…( ^ ^ ; 。しかし、この噺にはやはり池袋ネタのマクラというのがセットなんですね。とにかく爆笑。コワイものなしですネ。
トリは(写真がキレて申し訳ない( ^ ^ ; )・笑福亭松之助サンの「高津の富」も上方の古典。さすがに85歳・オトシのせいか、噺のキレが悪いところも散見したが、まあ上方最高齢の芸を聴かせていただいたいということで…(^_-) 。


【本】最近読んだ本2010/01/14

『雪冤』(大門剛明著・角川書店)
「死刑制度」に真っ向から取り組んだ意欲作。昨年の横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をdダブル受賞ということで、それなりに話題を呼んでいるようだが、なにしろこれが初作?と思わせる筆者の力量に驚かされる。後半、どんでん返しの連続と筋と登場人物が複雑で、よくわかんなくなる( ^ ^ ; という難点はあるが、それにしても裁判員制度がはじまり、死刑制度の議論が高まるなかで、果敢にこのテーマに挑戦した筆者に拍手!(*'-')//

『今おもしろい落語家ベスト50』(文春ムック)
なんといっても驚いたのは我が柳家喬太郎氏の1位!落語好き523人にアンケートをとった結果というが、談志や小三次をさしおいて(\_\) …。いやぁ、三遊亭白鳥サン(本書では15位)が朝日新聞(1月8日オピニオン欄)で全面インタビューを受けるなど、すごい時代になりました。でも、喬太郎ファンとしては嬉しいッすヨ。(^_-)
ほかに対談あり、ルポあり、さらにヘビメタ雑誌『BURN』編集長にして年間150席以上聴いているという気鋭の落語評論家・広瀬和生の『この落語家を聴け!』(名著!)2009年版ありと盛りだくさんな内容だが、これってホントに初心者向けのムックなの?( ^ ^ ;

【TV】最近観たTVドラマ2010/01/16

基本的にTVドラマはほとんど観ない人なのだが、年末・年始に過去のドラマをまとめて再放送していて、久しぶりに鑑賞。今さらだが以下、二本とも傑作!ぜひDVDで観てください。

『ハゲタカ』(全6話・NHK)
2007年に放送されて数々の賞に輝いた企業買収ドラマを年明けにNHKハイビジョンで観る。AmazonのTVドラマboxセット部門で2位ということからわかるように、強力なリピーターを生んでいるのは、これが単なる企業再生ドラマではなく「人間再生」ドラマになっているかでしょーね。それにしても、世界に冠たる日本のBUTOHを牽引してきた麿赤兒の息子(大森南朋)と田中泯の共演というのもなんだか感慨深い( ^ ^ ;。加えて、「転形劇場」の大杉連に、「青年団」の志賀廣太郎という豪華な布陣。『細腕繁盛記』(古い!)をホーフツさせる富士眞奈美の怪演ぶりも必見!

『風のガーデン』(全11話・フジテレビ)
こちらは2008年に放送された余命わずかな主人公の医師と家族の再生物語で、昨年末にBSフジで観る。放送開始直前に出演者の緒方拳が急逝したことで、「死」と向き合う主人公(中井貴一)の姿に、彼を看取る父(緒方)をダブらせた視聴者も多かったのでは?(ワタシはそうでした(T_T) )。最終盤はやや失速した感もあるが、それにしても上手いTV脚本というのはこーいうものなのか、と唸らせられた作品。

【落語】よってたかって新春らくご2010/01/17

昨日(1月16日)よみうりホールで聴いた「よってたかって新春らくご 21世紀スペシャル」
まずは瀧川鯉ちゃの「寿限無」。前座噺の定番で、子どもの頃から何度となく聴いているがナマで聴くのは初めてかも? 前座にしてはマクラが長かったのが難だが、声が大きいところはイイ。
百栄サンは初めて。どことなく佇まいは立川流っぽい( ^ ^ ; 。TVのバラエティー番組であまた登場するリアクション芸人を皮肉った新作。大げさなリアクションとおっとりとした師匠の所作の落差で笑かす。
さらに、会場を沸かせたのは白鳥サン。マクラで朝日新聞全面インタビュー記事(1月8日付オピニオン欄)に触れ、さらにこの記事を読んだ某TV局から原口総務大臣との対談オファーがあったことを明かす(爆) (結局は小沢秘書逮捕でお流れに…このエピソードもクスグリに使う)。小説家志望だった資質がうかがえる、はりまくった伏線がうまく効いた自伝的(?)新作で、白鳥ワールド全開。会場は大爆笑。
と、前半ははっちゃけた若手・中堅ニューウェーブの新作噺で、後半はしっとりとおめでたい噺で締めるというこの日の構成がよかった。
三三サンも初めて。いい噺家だと思うが、謡いの噺なので唸るとどうも〝歌謡派〟の柳亭市馬サンとカブってしまって…。
鯉昇サンは相変わらずのマイペース。お連れ合いのインフルエンザ禍に触れたマクラも効いて、『フォレスト・ガンプ』的な荒唐無稽な噺が、サゲの「なあに、カカア大明神のお陰だ」で夫婦愛がホッコリと顕れた。

【映画】最近観た映画2010/01/22

『愛と宿命の泉 PartⅠ』(1986年・監督:クロード・ベリ)
フランスのプロヴァンス地方の農村を舞台に、泉をめぐり二代にわたって展開する愛憎劇の第一部(といっても二部は未見だが)。ありぁ、誰かと思ったら『Z』のイブ・モンタン(歌手でもあるが)が土地の権力者(悪人)を貫祿たっぷりに演じているじゃない(^_-)。 ジェラール・ドパルデューもさすがに上手い。風光明媚なプロバンスの自然に対照させて、人間のどす黒い強欲をくっきりと描きだす。

『紅の流れ星』(1967年・監督:桝田利雄)
これぞ日活アクション!日本B級プログラムピクチュアが堪能できる神戸を舞台にしたヤクザ映画。主演・ちょっとカワイイ渡哲也、まるで宇宙人(失礼)のような日本人離れした浅丘ルリ子。この二人が神戸の街をまっ白のスーツと真っ赤なワンピースで歩くだけで、ありえねぇ~とツッコミを入れたくなるエグさ。他に「エースのジョー」こと殺し屋・宍戸錠、平気でピストル撃っちゃう刑事・藤達也、情けないチンピラ・杉良太郎、そして歌って踊る奥村チヨ(!)という豪華さ!これはもう観るっきゃありません。

『歩いても 歩いても』(2007年・監督:是枝裕和)
兄の命日に集まった家族の一日を描いたホームドラマ。日本黄金期を彷彿させる丁寧なつくりで小津的との評もあるよーだが、本人は成瀬巳喜男を研究したとか。たしかにワンカットワンカット無駄がないつくりは、成瀬的であり、また優しさのなかに残酷さをしのばせた樹林サンの造形など小津的でもあるよネ。感心したのは登場人物すべて(子どもも含めて)に感情移入できる(ワタシは出来た!)ドラマに仕立てた手腕。これってありそうでなかった映画じゃない!? アドリブを極力排したという是枝台本の勝利といえようか。