【本】西麻布ダンス教室 ― 2010/10/09
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しかし、「貴重な」と記したのはこうした、歴史も含めたコンテンポラリー/モダン・ダンスを俯瞰かつ構造分析したガイドブックに、ワタシはお目にかかったことがないから。あるダンサーが「私のバイブルです」、劇評家が「目からウロコでした」と口にしていたことからも、本書以上のクオリティをもつ類書はないのではないか。
それを端的に示しているのが、巻頭に記された「ダンス・マトリクス」。ダンス表現を、抽象、具象、運動(天上的)、身体(地上的)の四つの機軸で示し、さらに抽象的運動、具象的運動、抽象的身体、具象的身体の概念でもって顕すことで、マース・カニングハムから暗黒舞踏まで、コンテンポラリー/モダン・ダンスの全体像を描いてみせた。
本書はこのマトリクスをもとに、桜井氏が「講師」となり、いとうせいこう、押切伸一というひと癖もふた癖もある「生徒」に講義を行うというスタイルで進行していく。
そのスタンスは「全体的な視点からすべてのダンスを見る」で、その意味ではこの副題も正しいのだが(苦笑)、とにかく「見る」立場だダンスを語る3人の語り口は、鋭く、知的、ときに肉感的だ。
で、本書にはこうした踊り手たちの図版(主に写真)が多数掲載されているのだが、やはり「動く絵」ではないことにどうしても隔靴掻痒の思いが離れない。
そういう意味で、本書こそ、電子書籍としてリニューアルされるべき書物(コンテンツ)なのではないかと思う。 例えば、ベジャールの説明があればリンクしたYou Tubeのページへ飛ぶ、ニジンスキーの華麗の舞いを確認できる、ありし日の大野一雄氏の雄姿を目にするできる…そんな機能を備えた電子ブック。もちろん著作権等々のクリアしなければならない問題はあるが、それこそが、「未来の書物」の正しい姿だと思うのだ。
さらに、ワタシたちは、3D映画『アバター』で字幕が浮き上がって見える…という体験をしている。テキストのリンクをクリックすると、踊るダンサーの動画が手にした本から左右に浮き上がって見える…そんな技術が開発されないだろか? そうした技術が確立されれば、ワタシたちが持つ過去の膨大な書物アーカイブが「宝の山」となる可能性がある。ワタシは本書を通じて、そんな妄想を描いてしまった。
そうした意味でも、本書が『ラフガイド・トゥ・コンテンポラリー・ダンス』『コンテンポラリー・ダンスを見る技術!』などと改題のうえ、新たに電子ブックとして生れ変わることを切望する。電子書籍の未来、ココにあり、だ。
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