【映画】第9地区2010/10/04

『第9地区』
『第9地区』(2009年・監督:ニール・ブロムカンプ)
『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが製作にあたったB級SF作ということなのだが、B級と切って捨てるにはあまりに惜しい作。すでにアカデミー作品賞にもノミネートされるなど「評価」されてはいるが、数(十?)年後にはカルト・ムービーとしてさらに「再評価」される? かも。
というのも本作はかなりアイロニカルなテーマを内包しており、見方によってさまざまなメッセージを受けとることができるからだ。

まず、南アフリカ・ヨハネスブルグにエイリアンの居住区がつくられるという設定からして、もろにソウェトをイメージさせるし、アメリカ人ならネイティブ・アメリカンの居留地を奪い、強制移住させた歴史が思い起こされるだろう。 エイリアンに英語風の名前を付けているのも皮肉が効いているし、その隔離された居住区“第9地区”がスラム化し、ギャング化した“黒人”に搾取されるというのも、じつに強烈。差別された民を差別された民によって圧政する、というのはニッポンにもあった(ある)話。

流行りのフェイク(疑似)・ドキュメンタリーの手法を取り入れているが、これも臨場感を持たせるというよりも、あえて「まがいもの」っぽくするために、批判的に使っている気がするし、エイリアンの強制移住に抜擢されたお調子者の主人公の造形も、ニュースキャスターのそれを思いっきりオチョくっている。
そもそも「予算の関係」というが、監督も新人、キャストも無名ばかり…というのも、アイデアさえあれば、これくらいの作品はつくれるだよ、というニュージーランドからハリウッドに招かれたジャクソンの痛烈な皮肉が込められているのかもしれない。

で、物語は『ザ・フライ』+『E.T』+『アイアイマン』…なのだが(笑)、ワタシがこの作品に惹かれたのは、どこか物語の通奏に「悲しみ」を感じるからだ。なんらかの理由で難民となり故郷を失ってしまったエイリアン、輪廻のごとく差別を繰り返す人間、果てしない殺し合いの無情さ、愚かなマスコミ、強欲と地位、格差、搾取…どこかみな「悲しみ」を背負っている。主人公がスーパーヒーローにもなりきれず、情けないままに終わるのもイイ。なんとも言えない手触りを持った作品。

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