【映画】白昼の通り魔2010/10/08

『白昼の通り魔』
『白昼の通り魔』(1966年・監督:大島渚)
1950年代末、関西で起こった連続殺人事件を題材に大島渚がメガホンをとったフィルム・ノワール。本作のキモはなんといっても、主役の「通り魔」に稀代の悪役顔・佐藤慶(先ごろ亡くなられた=合掌)を起用したことだろう。

観る者をヒリヒリとさせるヒッチコックを彷彿させるような冒頭の、屋敷で働く女を覗き見るシーン。そして、にじり寄るように登場する「通り魔」佐藤の異様な迫力。スクリーンを支配するかのように、やたらアップを多様する大島監督の要求に十分に応える凄味のある顔、無表情の下に潜む残虐性。
やがて、女を訪ねてきた「通り魔」の過去が時を遡りながら明かされるのだが…本作で大島監督が多用するのは、前述のクローズ・アップと背景をボカすシャロー・フォーカス。たしか『市民ケーン』がパン・フォーカスとこのシャロー・フォーカスを使い分けて、謎めいた雰囲気をうまく醸し出していたかと思うが、ここでの大島監督の意図は、あくまでもクローズ・アップの強調か。

…と、キャスティングや映画技法ばかりを語っているのは、40年近い歳月を経た作品だけあって、ストーリーを追ってもあまり意味がないと思うからだ。農村での青年共同体や聖職者として描かれる女性教師(小山明子)の姿など、現代においてはやはり感情移入しにくい。
また、『チェイサー』をはじめ近年の韓国映画に描かれた漆黒の闇に包まれた犯罪を識るワタシたちには、この主人公が犯す犯罪は“わかりやす”過ぎる。

なので、本作はスタイリッシュな映像による犯罪社会映画を目指した大島監督の実験作・野心作として、当時の雰囲気に浸りながら、出演陣(ほかに戸浦六宏、小松方正、渡辺文雄ら)の怪演ぶりを楽しむのが、正しい鑑賞法といえるかもしれない。

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