【TV】塀の中の中学校2010/10/12

ドラマ『塀の中の中学校』
昨夜(10月11日)TBS系で放映された『塀の中の中学校』は、文化庁芸術祭参加作品ということで、なかなかの力作だった。賞を獲れば再放送、DVD化もされるだろうからここで取り上げておく。

以前にも書いたがあまりTVドラマを観ることのないワタシだが、本作に心動かされたのはやはり『累犯障害者』の衝撃があったからだ。「犯罪」に何度も手を染めてしまう人びとの背景に迫った本書によって、「累犯障害者」という呼称をワタシは初めて知った。同様に、本作によって刑務所内に公立の中学(分校)があることを初めて知った。「更生」と「教育」の親密な関係に無知だった自分を恥じた。

長野県・松本市にある「松本少年刑務所」の中にある、日本で唯一の刑務所内にある公立中学校「松本市立旭町中学校桐分校」を舞台に、5人の生徒と新任教師(オダギリジョー)の交流を描いているのだが、犯罪歴も年齢もバラバラなその「生徒」を、大滝秀治、すまけい、千原せいじ、染谷将太、そして渡辺謙という豪華な面々が演じている。
この面々が、さまざまな出来事・事件を乗り越えて「卒業」するまでの1年間を追ったドラマなのだが…。

ワタシは本作の脚本を担当した内館牧子氏のTV作品をほとんど観てないないし、彼女がドラマ界でどのように評価されているかも知らない。が、冒頭でいきなり登場人物が生い立ちや犯歴を語り出したのには驚いた。たしかに2時間半の枠に収めるためには、最初に背景や人物を説明してしまった方が視聴者にはわかりやすいのかもしれないが、あまりにワカリやすいその展開に、身も蓋のなさも感じてしまったのだが…。
そして、お決まりのように事件が起こり、迷い、衝突、挫折…それらを乗り越えてのそれぞれの成長物語が語られる。

演出の清弘誠氏は、『男女七人~物語』で群像劇を、『塀の中のプレイ・ボール』で刑務所を舞台したTV作品を撮った実績をかわれての抜擢なのだろうか。しかし、映画監督というよりは、やはりドラマの演出家なのだろう。奇をてらうことなく、手がたくまとめている。

なので、本作に予想を超える物語や映像的な刺激を求めても甲斐はない。しかし、そんな本作でも、否応なくワタシたちに「感動」をもたらすものは、やはりそこに厳然たる「事実」が突きつけられるからだろう。それも、それがワタシたちが知らなかった、いや、知ろうとしなかった、心ある人びとの綿々たる営みを。

そうした意味では、ドラマの前ふりに実際に「分校」で教壇に立ってきた元教官のインタビューを置いたのは、この物語に真実味を与える意味でも効果的であったと思うし、ラストの「691人になる卒業生の再犯率がほぼゼロ」というこの「分校」の存在意義を示すテロップは、制作陣がこのドラマ込めた大いなるメッセージだ。

役者陣にも触れておきたい。
脳梗塞で倒れ未だに後遺症が残るすまけいが、その姿のまま、脳梗塞を患った受刑者を演じる様は胸を打つ。そして、オダギリジョーと大滝が対峙する別れのシーン。これはもう日本映画が誇る名老優が、若き至宝に「演技の神」を手渡すかのような、荘厳さをも漂わせた至福の瞬間…ワタシにはそう視えた。

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