【本】駆けぬける現代美術 1990-2010 ― 2011/05/18
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一読して感じるのは、女性作家の進出と、アジアの活況だ。
女性については、わざわざ「女性作家群の開花と主導」という章まで設け、オノ・ヨーコや草間彌生といった重鎮から、束芋ややなぎみわといった気鋭のアーティストまで、その活動の幅と質をとらえる。
「アジア」については、第四章「進展する国際化」の中でまばゆく紹介される。それはポピュラー音楽界で90年代で起こった“ワールド・ミュージック”ブームを思わせる活況ぶりだが、一方で、欧米のミュージシャンが非西欧文化を搾取しているという批判が起こったと同じように、アフリカの現代美術を例にとって「『魔術師』として消費するな」と警告する。
そうしてみると、先日ワタシが足を運んだヘンリー・ダーガーに代表される“アウトサイダー・アート”などは、さしずめ現代美術界におけるパンク・ロック・ムーブメントだったのだろうか?
しかしながら、本書でその代表作家として紹介されているバスキアなどは、パンクというよりはヒップホップ・アーティストだろう。アートを街(それもダウンタウン)に解放し、ストリートを展覧会場にしてしまったその活動スタイルは、ドゥーワップやホコ天バンドを連想させる。
もう一つの潮流として取り上げられているのは、「回顧展」への視座だ。
「回顧」といってもそれはけっしてノスタルジアなものではなく、第一章の「近代の見直し」にもつながる、“新しい視点”を誘うものだ。
ワタシも刺激を受けた「『日本画』の前衛 1938-1949」展や「船→建築」展 、さらには「シュールレアリスム展」などもそうした、新しい視点、異なる角度からのアプローチによって、アートの名を借りたある種の思想・論考の提示になっていたかと思う。
そうした意味でも、著者が二科展や日展などの団体展を例に挙げて、「全体として『類型化』『旧態依然』の感がぬぐえない」と切って捨てているのは、ワタシ的にはじつに心地よった。
常に革新しプログレス(進化)するからこそ、モダン=現代・アートなのだから。
◆『駆けぬける現代美術 1990-2010』の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「濁流に身を投げながら水先案内」--asahi.com(横尾忠則氏)
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