【本】未来型サバイバル音楽論2011/05/05

未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ)未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
津田 大介 牧村 憲一

中央公論新社 2010-11
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副題に「USTREAM、twitterは何を変えたのか」と付けられていることからもわかるように、ネット配信時代を踏まえた最新型音楽ビジネス論(2010年11月刊)。根底にあるのは、「まえがき」にも記された音楽業界の「危機」だ。

1990年代末に栄華を究めたJ-POPは、「CD離れ」という形で凋落が始まり、レコード会社の人員整理やレコード店の閉鎖という形でさらに顕著になっている。
ワタシ自身も都心の大型CD店の閑散とした様に驚き、知り合いの音楽ライターから「仕事が激減した」と聞かされるにつれ、その変貌ぶりを肌身に感じるようになった。

たしかに我が身を振り返ってみても、パッケージメディアとしてのCDを買うにしても、定価販売&白揃えの薄いCDショップ(中古店も含む)に足を運ぶよりも、ネットでの購入(ダウンロード含む)がほとんどとなってしまった。
CD店に通う大きな理由だった「試聴」にしても、今やデスクに座ったままかなりのレア音源まで可能になってしまった。もはやCD店に、かつてのようなワクワク感を抱くことは難しい…。

そうしたワタシのような(?)音楽リスナーの変容も踏まえ、しかしながらそうした自身の変化を鑑みつつも「危機」に対して少なからず不安や関心も持つ読者たちに向けて、本書は編まれているのだろう。

だからこそ、現在の音楽ビジネスの多様化を「横軸」とするならば、そこに警告の書『だれが「音楽」を殺すのか』 に著者であり気鋭のジャーナリストである津田大介氏という最適任者を置き、一方で音楽ビジネスの変遷(歴史)という「縦軸」に、これまたフォーク黎明期を経て“渋谷系”の仕掛け人として名を馳せる音楽プロデューサー・牧村憲一氏というツワ者を置くことで、本書の重層的な役割が見えてくる。

もっともワタシとて、そうした縦横の音楽業界についてはある程度の知識や情報を持ちあわせていると自負していたのだが、いきなり冒頭で「まつきあゆむ」というワタシの見知らぬミュージシャンの例が挙げられ、面目をなくす…。

それまでインディーズ・レーベルを通じてCDを販売していたまつき氏が、2010年1月1日に初めて個人サイトから『1億年レコード』をリリース。ツイッターやUSTREAM(ユーストリーム)を駆使してリスナーに直接呼びかける、今までにないプロモーションを展開したところ、レーベルからの販売枚数を超えてしまったのだという。

つまり、今までレコード会社が行っていた制作から販売までの流れを一人でやり切り、それで“食べていける”という一つの音楽ビジネスモデルをつくり上げたのがまつき氏なのだ。

本書ではこうした例を挙げながら、音楽業界で何が、どのように変わっていったのか、津田・牧村両氏による分担執筆と対談(論?)によって、レコード会社、メディア、ライブ、ネット、著作権問題に至るまで、つぶさにその「変化」を検証していく。

しかし、本書のキモはそうした音楽業界の現況と問題点の指摘ではない。そうした論議を踏まえて、未来の音楽、音楽ビジネスを問うことが目的なのだ。
そのあたりの「思い」は、5章の両者による対談によって、熱く語られている。

主に、「形のある音楽」(パッケージメディア)の未来と、フジロックに代表されるようなフェス=ライブの可能性について語られているのだが、アナログLP世代のワタシなどはかねてから「今のCDは曲が多(長)すぎる」と主張してきただけあって、若い世代の津田氏から「とにかくCDをもっと安くして、五~六曲入りくらいのミニ・アルバムがCDの生きる道だと思っている」といった発言を聞くと、ポンとヒザを打ちたくなる。

ただ、不満があるすれば「クラウド」についてほとんど触れられないこと。今後、i-tuneを始めクラウドでの配信(?)がデフォルト化されるとい言われているなかで、今まで個人が所有してきた音楽はどのような聴かれ方をしていくのか? どのようなビジネスとなっていくのか? 興味は尽きない。
もっともワタシなどは、音楽のクラウド化はいわば「一人有線放送」で、それってもしかすると、先祖帰りなのではないかと、妄想しているのだが…(失笑)。

『未来型サバイバル音楽論』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「小説やマンガ、映像コンテンツなどにも当てはめられる指摘」--シロクマ日報
「日本復興後に加速する音楽ビジネスのかたち」--公開日記@裏側公開

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