【映画】ある殺し屋 ― 2010/12/14
『ある殺し屋』(1967年・監督:森一生)
『薄桜記』(1959年)で市川雷蔵とタッグを組んだ森一生監督による傑作フィルムノワール。本作で再び雷蔵と組んだ森監督は、雷蔵を非情な「殺し屋」に仕立て、特異な現代劇を創り上げた。
墓地裏の荒涼たる荒れ地に、廃墟のように立つアパート。
ここを一人訪れ、部屋を借りたい、と言う男。市川雷蔵。
その男のもとへ、はすっぱな女・野川由美子が転がり込む。
この二人は恋人か、兄妹か、はたまた…。
というように、冒頭から謎めいたシーンで一気に観る者を引き込む手練が冴える。
すでにここに犯罪の匂いが漂い、ワタシたちは「殺し屋」というノワールな世界に浸ることができる。
そして、場面は殺し屋・雷蔵と、女(野川)の出会いに遡り、殺し屋家業を欺く仮の姿・飲み屋の亭主を装う雷蔵。画面からピリピリとした妖気が立ち上がり、やがてヤクザの親分から依頼された殺しで、「殺し屋」としての見事な“技”が披露される。
殺しを依頼したヤクザの成田三喜夫は、雷蔵に手下にしてくれと懇願するが、やがて女とただならぬ仲となる。二人は雷蔵に儲け仕事を持ち込むが、そこにはある陰謀が…。
といったストーリーが展開するのだが、雷蔵はあくまでもクールな面持ちを保ち、フィルムはあくまでもスタイリッシュを貫き通す。
『紅の流れ星』(1957年・桝田利雄監督)、『東京流れ者』(1966年・鈴木清順監督)、『殺しの烙印』(1967年・鈴木清順監督)、そして本作。
かつて日本映画にこんな不敵なフィルムノワール群があったことを、不遜にもワタシは最近まで知らなかった。
これらの作品は例えば、「キネマ旬報」の年間ベストテンなどには挙がっていない。しかし、積年の映画ファンの支持を得て、またDVD化などによるアーカイブ化によって、改めて評価すべき作品として浮上している。
音楽の世界でもかつて、クラブDJや“幻の名盤解放同盟”らの活動によって、あまたの過去作品に再び光が当てられて、従来とは異なる角度からの評価が与えられるなどのムーブメントが起こった。
日本に映画が誕生して110余年。
なんとか活況を保つ今のうちに、邦画の世界でも、「映画秘宝」に連なる“幻の名作解放同盟”運動が、さらに必要になってくるのではあるまいか…。
そんな思いを抱かせる逸作であった。
◆『ある殺し屋』の参照レビュー一覧
良い映画を褒める会。
SummaArs 藝術大全
愛すべき映画たち
本日ハ晴天ナリ
西沢千晶のシネマ日記+
ときどき映画館日記
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『薄桜記』(1959年)で市川雷蔵とタッグを組んだ森一生監督による傑作フィルムノワール。本作で再び雷蔵と組んだ森監督は、雷蔵を非情な「殺し屋」に仕立て、特異な現代劇を創り上げた。
墓地裏の荒涼たる荒れ地に、廃墟のように立つアパート。
ここを一人訪れ、部屋を借りたい、と言う男。市川雷蔵。
その男のもとへ、はすっぱな女・野川由美子が転がり込む。
この二人は恋人か、兄妹か、はたまた…。
というように、冒頭から謎めいたシーンで一気に観る者を引き込む手練が冴える。
すでにここに犯罪の匂いが漂い、ワタシたちは「殺し屋」というノワールな世界に浸ることができる。
そして、場面は殺し屋・雷蔵と、女(野川)の出会いに遡り、殺し屋家業を欺く仮の姿・飲み屋の亭主を装う雷蔵。画面からピリピリとした妖気が立ち上がり、やがてヤクザの親分から依頼された殺しで、「殺し屋」としての見事な“技”が披露される。
殺しを依頼したヤクザの成田三喜夫は、雷蔵に手下にしてくれと懇願するが、やがて女とただならぬ仲となる。二人は雷蔵に儲け仕事を持ち込むが、そこにはある陰謀が…。
といったストーリーが展開するのだが、雷蔵はあくまでもクールな面持ちを保ち、フィルムはあくまでもスタイリッシュを貫き通す。
『紅の流れ星』(1957年・桝田利雄監督)、『東京流れ者』(1966年・鈴木清順監督)、『殺しの烙印』(1967年・鈴木清順監督)、そして本作。
かつて日本映画にこんな不敵なフィルムノワール群があったことを、不遜にもワタシは最近まで知らなかった。
これらの作品は例えば、「キネマ旬報」の年間ベストテンなどには挙がっていない。しかし、積年の映画ファンの支持を得て、またDVD化などによるアーカイブ化によって、改めて評価すべき作品として浮上している。
音楽の世界でもかつて、クラブDJや“幻の名盤解放同盟”らの活動によって、あまたの過去作品に再び光が当てられて、従来とは異なる角度からの評価が与えられるなどのムーブメントが起こった。
日本に映画が誕生して110余年。
なんとか活況を保つ今のうちに、邦画の世界でも、「映画秘宝」に連なる“幻の名作解放同盟”運動が、さらに必要になってくるのではあるまいか…。
そんな思いを抱かせる逸作であった。
◆『ある殺し屋』の参照レビュー一覧
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