【コミック】作品集 このたびは2010/12/11

作品集このたびは (Feelコミックス)作品集このたびは (Feelコミックス)
えすとえむ

祥伝社 2010-10-08
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冠婚葬祭に顕される出会いと別れ、人生におけるさまざま「儀式」をテーマに、6篇の作品が収められた「えすとえむ」氏による作品集。「フィール・ヤング」の連載をまとめたものだという(書き下ろし1点)。

えすとえむ氏はボーイズラブ系のマンガ家らしいが、本作で描かれているのは“男女”や“家族”の切なく、ときにほんのりとした愛情だ。

なかなか結婚に踏み切れないイケメン好きと草食系男子のそわそわとした結婚綺譚、遠距離恋愛中の二人が“祭り”を通じてふれあう人びとの思い、相いれなかった父親と入院を機に“出会う”娘の心の揺れ、互いに心に傷を持つ姉妹の“邂逅、彼女の祖母の葬儀に参じたフリーター君の密かな心象風景…。
こう記していくと、なにかドラスティックな展開が起きていそうな作品群だが、いずれの物語も大きな起伏はなく、流れる時間もゆったりとしている。そうしたゆったりとしたリズムのなかで、登場人物たちの心境の変化が無理なく綴られる。

そう、この作品集を通奏するのは、ここに登場する人たちが、迷い、戸惑い、怒り、諦めを経たあとに発見する、小さな心の安寧だ。
そして、それは次の「始まり」をもたらす静かな予感でもある。
この心のひだを丁寧に撫でるかのような短編の名手によって、ワタシたちもまた、その「予感」を共有し、一篇ごとにその小さな幸福感が心を満たす。

いわゆる少女マンガの絵のタッチが苦手なワタシは、この分野のいい読み手ではないと思うが、落ち着いたタッチと効果的なコマ割りで、その作品世界に浸ることを拒まない。
「ふつつかものですが…」「このたびは…」…。
登場人物が口にする、なんともない挨拶や言葉の端々が、やさぐれた日常に小さな灯をともしてくれる。それもまたワタシの涙腺を刺激してやまない。

◆『作品集 このたびは』の参考レビュー
asahi.com(南信長)

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