【映画】ブロンド少女は過激に美しく2011/03/27

『ブロンド少女は過激に美しく』
『ブロンド少女は過激に美しく』(2009年・監督:マノエル・デ・オリヴェイラ)

ブログを再開したものの、やはりどうも調子が戻らない。そんな気分を反映してか、“巨匠”オリヴェイラ、100歳の記念作として話題となった本作にもまったく反応しないワタシがいる…。

タイトルはまるでタランティーノだが、内容はたわいもない青年の失恋話だ。列車内でたまたまを隣席となった婦人に、青年が「妻にも親友にも話せない事」を心痛な面持ちで語り始める。
伯父の店の会計士と働いていたマカリオ(リカルド・トレパ)が、向かい窓に立つブロンドの美少女ルイザ(カタリナ・ヴァレンシュタイン)を見初めて二人は恋に落ち、結婚の承諾を伯父に求める。
しかし、伯父は頑としてそれを認めず、激高したマカリオは店を辞めてしまう。生活に困り、結婚もできないマカリオはやがてカーボヴェルデ(アフリカ西岸にあるかてつのポルトガル植民地)で一攫千金を得てリスポンに戻るのだが、保証人となった友人に騙され再び一文無しになる。
ところが、別れの挨拶に訪れた伯父は、カーボヴェルデでのマカリオの働きぶりを評価し、店で再び働くことを促し、そして結婚も許す。
喜びに満ちたマカリオは、ルイザと連れ立って宝石店に入るのだが、そこで唐突に“事件”は起こる…。

当初は主人公の青年の謎めいた問いかけと独白よって、いったいどんな物語世界へと誘われるのかと期待したのだが、物語はじつに凡庸に進んでいく。
なぜ、伯父があそこまで頑な結婚に反対したのか? 伯父とマカリオとの家夫制的な主従関係も、ルイザの生い立ちや家庭背景もまったく説明がなく、手がかかりも少ないので、ワタシたちはそれを“妄想”するしかない。

例えば、伯父とルイザはもしや“愛人関係”では? マカリオのカーボヴェルデ行きは伯父によって仕組まれたものでは? …などとあらぬ思いを巡らす(笑)。

幸せの絶頂であるはず(?)のルイザが宝石店でとった“行動”にしても、マカリオとの抱擁シーンでの片足を挙げる仕種や、“事件”後に一人ベットで大きく足を広げて泣きじゃくる様から、その実相に“あばずれ”な性根があった(?)ことを想像するしかない。

そう。これは監督が観客に仕掛けた“想像する”映画なのだろう。
しかしながら、列車内で黙々と検札するシーンや窓越しの無言の会話など、さまざまな魅力的な“絵”があるのに、ワタシにはそこに『1秒24コマの美』で、黒澤明・小津安二郎・溝口健二によってさんざん語られたスクリーンへの“美”の焼き付けはほとんど感じられなかった。

それゆえに、昨年同じく“異郷(サウダージ)”の作品として公開されたアルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』(キネマ旬報ベストテン14位)よりも、本作の評価が高い(同11位)ということに強い疑義を抱くのだ。

『ブロンド少女は過激に美しく』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「いつまでも抜けない棘(とげ)の痛みにも似た余韻が残る」--映画通信シネマッシモ(渡まち子氏)
「上映開始から終映まで、『珠玉』の作品」--荻野洋一 映画等覚書ブログ
「『語らい』の映画作家オリヴェイラ」--Incidents(偶景)
「映画としての圧倒的なまでの説得力」--映画感想駄文:にわか映画ファンの駄目な日常
「ルイザの“行為”は商人気質への芸術家気質のテロ」--佐藤秀の徒然幻視録
「今も昔も変わらず男が抱きがちな身勝手な幻想」--diary/nowadays
「オリヴェイラ監督の作法は今もサイレント」--Days of Books, Films & Jazz
「永遠と現在の音の共鳴、映画と人生との共鳴」--TOWER RECORDS ONLINE(樋口泰人氏)
「公園のブランコをこぐ時に味わうのにも似たシンプルな心地よさ」--映画瓦版
「過激というより特異、風変わりな作品」--LOVE Cinemas 調布

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