【本】超能力番組を10倍楽しむ本2011/03/29

超能力番組を10倍楽しむ本超能力番組を10倍楽しむ本
山本 弘

楽工社 2007-03
売り上げランキング : 165170

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
これは楽しく、またじつに役立つ本だ。
一時、テレビ番組を席巻していた超能力番組のウソを見抜き、そのカラクリをわかりやすく解説した、ご存じと学会会長・山本弘氏の旧作だが、「批判的検証」が問われる今こそ読まれる書だと思う。

数々のトンデモ本、ニセ科学を暴いてきた山本氏だが、本書で心を砕くのは「子ども(小学校高学年程度以上)も楽しんで読めるように工夫して」つくった点にある。
そのために、中学生の娘とパパ、同級生の男の子という3人のキャラを立て、おもしろおかしく「超能力番組」を換骨奪胎していくという体裁をとっている。

そこがかえって「大人」にはとっつきにくく、当初は読みずらさを感じてしまうのだが、読み進んでいくうちにこの著書の「本気度」がわかってくる。

テレビ超能力者よろしく、雲を消したり、遠隔透視するパパのパフォーマンスに、“超能力信者”の男の子はそれでも「超能力はある」とその信心を曲げない…。
山本氏には本書刊行(2007年)当時「小学校5年生になる娘がおり、本書の原稿のチェックは娘さんに全面的に協力してもらった」というが、子どもたちに蔓延する非科学信仰を排するための、“闘いの書”であることがそこに見てとれる。

それにしても、本書でそのタネが明かされる数々の超能力が、じつは単なる偶然であったり、トリックであったり、超能力者本人の記憶違いや思い込みであったりと、脱力系のオチばかりでじつに笑える。

ワタシらは、スプーンを曲げ日本じゅうの時計を止めてみせたユリ・ゲラーやダム湖に浮かぶ少女の遺体を“透視”したクロワゼに驚愕した世代だが(どんな世代だ!)、な~んだ偶然や事前調査の産物だったのか、と今さらながら目からウロコなのがなんとも情けない…。

しかしながら、山本氏の視座は“キワモノ”の超能力だけでなく、“真実”をとらえるとされる「ノンフィクション」にまで向けられる。多くのノンフィクション作品が、じつは作為の元につくられており、それらを安易に信じてはいけないことを“子どもたち”に諭す。

いや、すでにおわかりのように、諭されているのはじつはワタシたちだ。
マスコミやテレビ番組から流される情報を緻密に見つめ、ウソを見破り、その“本質”を見極めること。山本氏は一貫して、そうした科学的で批判的な姿勢たれと啓蒙し続ける。

そう、本書で論(あげつら)われた「超能力番組」は、そのまま現在の「原発報道」に全て置き換えることができるのだ。だからこそ、冒頭に記したように、「今こそ読まれるべき書」なのだ。

それにして、著作権の関係でほぼ実現は難しいだろうが、本書に登場する数々の“迷”番組が、映像(動画)で観ることができないのは、なんとも隔靴掻痒(かっかそうよう)で残念。本書こそ、まさにリッチコンテンツの「電子出版」としてリニューアル出版されることが、待望されるはずなのだが…。

『超能力番組を10倍楽しむ本』の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「中学生、高校生に広く読まれてしかるべき良書」--SAFETY JAPAN(松浦晋也氏)
「剛速球の超能力番組批判本」--中村正三郎のHot Corner
「番組を見る側が耐性をつけるための1冊」--猫は勘定にいれません

↓応援クリックにご協力をお願いします。
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ