【アート】華麗なる日本の輸出工芸--世界を驚かせた精美の技 ― 2011/06/05

江戸~昭和初期に海外に輸出されたさまざまな工芸品約200点が展示されているのだが、そもそも外貨獲得のためにかくも大量の工芸品が“国策”として輸出していた事実からして知らずにいた。
しかも、そうした精巧で優美な工芸品の数々は欧米諸国で大変な人気を呼び、ジャポニズムという文化的流行を引き起こすきっかけにもなったという。
その作品を前にすれば、さもありなんとまずは得心する。
なにしろ美しい。いや、単なる“美”ではなく、その精巧さに妖しささえ漂う。
じっと見入ってしまう、吸い込まれていく、見飽きのこない秀麗な“美”が備わっている…。
展示はまず貝を素材とした「長崎青細工」に始まるのだが、それに目を奪われていると、さらにまるで 現在の3Dを先駆けるかのように、鳥獣や人・風景が画面から飛び出す「芝山細工」に驚かされる。
それらの技法が衝立や小物類の装飾に活かされ、独特の小宇宙がそこに宿り、ため息を誘う…。
さらに、「寄木細工」の技法はどうだろう。
この技法によって製作されたライティングテープルはまるでコックピットでないか。
書類立て、引き出し、小物入れなどが縦横矛盾、かつ機能的に組み合わせされ、異様なオーラを放ちながら、ただ一人のご主人(使用者)のために静かに鎮座している。
「飾棚」に至っては、これはもうミニチュア建築だ。架空の“中空の寺院”を、棚という意匠に閉じこめたじつにアバンギャルドな世界が拡がる。
展示に寄せられた解説にあるように、これらの工芸品を制作した職人たちの誇らしげな様子が伝ってくるような逸品が並ぶ。
意外だったのは、焼き付けた印画紙一枚一枚に彩色を施した明治の古写真で、これがアルフィーの坂崎幸之助氏のコレクションだという。たしかに当時の日本の風景がノスタルジックに切り取られる一方で、彩色によってその意図を超えたなポップな“作品”として、我々の前に立ち現れている。
そう考えると、日本の中で独自の進化を続けてきた、これらJ-CRAFTもまた、現在のJ-CULTUREと同じようにキュートでクールなものとして世界に熱烈歓迎されていたのだろう。
J-CULTUREがそうだったように、ワタシたち日本人が知らないところで、J-CRAFTの素晴らしさが“発見”されていたのだ。
そうした意味では、この企画展もまた、近年美術界の一つの潮流となもなっている「近代の見直し」につながる、“新しい視点”を誘うアート展といえる。
◆「華麗なる日本の輸出工芸」展の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「工芸の本来の姿を伝える貴重な史料」--artscape(新川徳彦氏)
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