【TV】そうだったのか!池上彰の学べるニュース 東日本大震災特集2011/03/31

そうだったのか!池上彰の学べるニュース 東日本大震災特集
福島第一原発事故をメインテーマに、3時間特番として昨夜放送された『池上彰の学べるニュース 東日本大震災特集』(テレビ朝日)(3月30日)。

池上彰氏については、 ニュースに詳しい“お父さん”役を務めた「週刊子どもニュース」(NHK総合)や朝日新聞に連載中の「新聞ななめ読み」でその仕事ぶりに注目はしていたものの、じつは本番組も含めて“ブレイク”後のテレビ出演番組はほとんど目にしていなかった。
その意味でも、素朴な疑問をわかやすく解説することを旨とする池上ジャーナリズムが、この重いテーマをどのように裁くのか、ワタシ的にも大いに注目しながら観た。

先々週の放送(3月16日)では、原子力の問題をそれこそ「原子とは何か?」から紐解き、先週(3月23日)は池上氏自ら被災地に赴きレポートしたそうだが、今回は真っ正面から「原発事故」を取り上げた。

じつはそれだけでもワタシにとっては、ちょっとした驚きで、たしかに緊急の問題にして、目下の国民最大関心事であるとはいえ、テレビ・マスメディア界の大スポンサーである電力業界を敵(?)に回しての放送だ。しかも、ゴールデンタイムの3時間だ。

かつて、日経系の雑誌に「反原発ビデオが売れている」なる記事を書いたところ、翌月に日経グループの雑誌全てから東京電力の広告出稿がストップしたという経験をもつワタシからすると隔世の感もある。

今回の事故でも下請け業者が被曝するという事態が起きたが、なにしろ「原発ジプシー」を描いた森崎東監督の『生きてるのが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(1984)や、黒木和雄監督の『原子力戦争Lost Love』(1978)が、未だに地上波放送されないでいるのだ。

番組の話に戻るが、ざっくり言って番組の作りは雑誌の全面特集記事のように構成されており、最初に入門編があり、トピック記事があり、Q&Aがあるという流れ。

まずは、「福島第一原発とは何か」から手をつけ始め、やがて放射性物質から半減期、プルトニウムプルサーマルの問題点といった専門かつ複雑な問題まで言及し、フリップを活用した絵解きで、それこそ「子どもニュース」のように、万人にも理解できるようにわかりやすく説明していく。

さらに番組後半では、視聴者からの質問といった形で、「放射能を含んだ水は沸騰させたほうがいのか?」「水は汲み置きした方がいいのか?」といった疑問にも次々と答えていく。

「中学生でもわかるニュース」をコンセプトとして、それ以前の味気ないニュース放送をエンターテイメント番組にまでに昇華させた功労者は、もちろん「ニュースステーション」久米宏氏なのだが、久米氏がフリップはもとより、多彩な画像や模型をゲストを招いてのそれだったのに対して、池上氏はほぼフリップのみで、まるで“講義”のように次々に今回の事故で吹き出た問題や単語の意味を語り続ける。

日航ジャンボ機墜落事故の際に、犠牲者と同じ数だけの靴を並べてみせた久米氏のような“演出”をひけらかすこともなく、ひたすら語りまくる池上氏。ゲストやサブ司会者にフルもおざなりで、まるで一人語りの「池上彰ショー」を観ているかのよう。
そこが「司会者」に拘泥した久米氏と、ジャーナリストたらとする池上氏の決定的な違いといえる。

とにかく、今回の原発事故とその影響について多くの人が抱いたであろう数々の疑問を、ゴールデンタイムの3時間にわたって解説しまくるという前代未聞の番組が成立したのも、池上彰氏の手腕によるところが大きいに違いない。視聴率も13.1%と健闘したようだ。

しかしながら、つきつめて言えば池上氏がこの番組で訴えかけるのは「恐れることとと恐れる必要のないことを明確にする」ということなのだが、やはりその主張に懐疑を持ってしまうのは、基本的には原発を推進する側にいる二人のゲスト(鈴木正昭氏・村松康行氏)の発言・論を依拠としていることだ。

たしかに、チェルノブイリ原発事故によって飛散した放射能の人体への影響は(一部を除いて)科学的にはまだ証明されていない(とされる)。その言説が何度も繰り返され、「だからチェルノブイリ事故のような放射能の飛散が考えにくい今回の福島第一原発も心配ない」という論調に終始するのだが、本当にそうだろうか?

そもそもワタシたちが知りたいのは、「福島第一原発で起こりうる最悪の事態とは何か?」「その際にどのような放射能が放出され、それはどのように私たちの健康や生活を脅かすのか?」ではないか。「今」ではなく、「未来」を案じているのだ。「現実」ではなく「可能性」に怯えているのだ。

なぜそれを解説する学者やジャーナリストが現れないのか? いや、正確に言えば「なぜ登場させないのか? 」だろう。そこを語らずに、「今のままなら安心」を繰り返すばかりでは、“御用学者”と断じられても仕方ないのではないか。
「予測できないことは言えない」では、学問の世界ははともかくジャーナリズムの世界では「ありえない」ことではないか。なにしろ、ワタシたちの生命がかかっているのだ。

さまざま疑問に答えてくれ、大変勉強にもなった本番組だが、この重大な問いに対する回答がなかったことに、大いなる疑義を唱えておきたい。

↓応援クリックにご協力をお願いします。
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yui-planning.asablo.jp/blog/2011/03/31/5768907/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。