【本】謎解きはディナーのあとで2011/01/05

謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
東川 篤哉

小学館 2010-09-02
売り上げランキング : 83

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
久しぶりにミステリーが読みたくなって、手にした一冊。電車内でもガンガン告知をしていたので、すでにベストセラーになっているのだろう。ワタシが購入したのも4刷。すでに9刷を重ね、累計30万部を売り上げているようだ。

そうした呼称のジャンルがあるのかわからないが、本書をひと言でいえば“ライト・ノベル・ミステリー”。じつに気楽に読めるエンターテイメント推理小説だ。
体裁は本格ミステリーだが、謎解きを楽しむというよりも、あくまでもお楽しみは登場実物のキャラクターと設定で、“事件”はそのための用意された単なるツールにさえ思えてくる…。

キモは何といっても、大財閥「宝生グループ」の“お嬢様”刑事・舞子と、その執事で“謎の男”影山のやりとりだろう。
難事件に頭を悩ます舞子が、執事の影山に事件のあらましを語ると、すぐさま影山が独自の推理で解決をしてしまう…。
いわゆるアームチェア・ディテクティブというやつで、この場面で二人のキャラ立ちまくりのユーモラスな会話がミソ。たいていが、舞子が豪邸に戻って優雅なディナーを食したあとの時間ということで、それが本書のタイトルにもなっている。

“灰色の頭脳”を持つクールな影山が、お約束のように「この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらしっしゃいますか」「お嬢様の目は節穴ですか?」などと暴言を吐き、舞子がキレるのだが、このやりとりがなんとも楽しい。

可愛げはあるものの鼻持ちならない主人公をギャフンと言わせるこの慇懃無礼な執事のキャラがあってこそ、読者は登場人物たちに感情移入ができるというもの。
本書には、6話の事件が収められているが、いったいどのタイミングでこの執事が、どんな辛辣なセリフを吐くのか、それが毎回のお楽しみになっている。

例えば、お笑い芸人のお約束のセリフに、わかっているのに笑ってしまう心理。それがいったいいつどこで繰り出されるのか、スリリングな心持ちで待ちつつも、それを聞くとどこか安心できる。そのツボに入る感覚が、本書でのこの場面といえよう。

さらにこの二人に、「宝生」に比べたら遥かに格下の「風祭モータース」御曹司という舞子の上司が絡む。つまりこのキャラ立ちまくった黄金のトライアングルだけで本書の物語は展開するといってよく、犯人も含めた他の登場人物はまるで背景のようなもの…。
事件の真相を掘り下げるでもなく、犯人の沈痛な思いを描くでもなく、ただひたすら3人のキャラと(ときに強引な)謎解きを楽しむのが、本書に対する正しい姿勢だろう。
それ以上のことを求める人は、本書の読者には向かない。

それにしても、本書はまず間違いなくテレビドラマ化されるやに違いない。最初からそれを前提として書かれたのではないかと思わせるほど、ライトでコミカル、マンガタッチな作品だ。それもじつにメディアミックスで今風な、気がする。

◆『謎解きはディナーのあとで』の参考レビュー一覧
黒夜行
週刊友蔵
asahi.com(瀧井朝世氏)
AKASHIC NOTE
BIBLIO HOLIC
昼下がりの迷宮~
琉球新報(尾崎英子氏)

↓応援クリックにご協力をお願いします。
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yui-planning.asablo.jp/blog/2011/01/05/5625275/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

_ itchy1976の日記 - 2011/02/01 18:14

謎解きはディナーのあとで東川 篤哉小学館このアイテムの詳細を見る

今回は、東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』を紹介します。今話題になっている本みたいですね。6つの短編集。謎解きよりも、風祭警部と宝生麗子とのとんちんかんなかけあいであったり、執事の影山の宝生麗子に対しての暴言などのかけあいが面白かったりする。シリーズ化できそうな話なのかなと思う。

殺人現場では靴をお脱ぎください:吉本瞳が殺された。その死体は、お出かけの格好でブーツを履いたままの状態だった。

殺しのワインはいかがでしょう:若林動物病院の院長である若林辰夫が殺された。死因は青酸性の薬物による中毒死。毒入りワインを飲ませることに成功したということか。

綺麗な薔薇には殺意がございます:薔薇のベッドの上で高原恭子が死んでいた。物置の中で被害者の黒い猫がいた。その猫は怪我をしている。薔薇の棘を利用した巧妙なカモフラージュなのか。

花嫁は密室の中でございます:沢村有里が刺された。殺人未遂である。ポイントは沢村家の執事の吉田の「お嬢様、どうなさいました!」でしたね。

二股にはお気をつけください:野崎伸一が殺された。死体の姿は全裸だった。ポイントはシークレットシューズでした。

死者からの伝言をどうぞ:児玉絹江が殺された。犯人は昨夜の午後9時に凶器のトロフィーを二階の窓に放り投げて、窓ガラスを割った。