【CD】ビクトル・ラバジェン/タンゴ、伝統と革新2011/01/28

タンゴ、伝統と革新タンゴ、伝統と革新
ビクトル・ラバジェン

ラティーナ 2010-01-20
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もちろん“タンゴ”という音楽の、魅力溢れる現在形アルバムであることは間違いないのだろうが、何より本作に収められた小松亮太氏(バンドネオン奏者)のライナーが、本作の価値を高めている。それほど、このライナーは素晴らしい。

タンゴの歴史を俯瞰しながら、同時に歴史と同時代の中でのビクトル・ラバジェンの位置を的確に評し、さらに自身の共演体験も踏まえて、その音楽の素晴らしさを語る…。
その達者な筆致にも目を奪われるが、何よりタンゴと、そしてラバジェンに対する愛情溢れた文章は、タンゴ・ファンならずとも思わず引き込まれてしまう。

そうした小松氏の解説を読みながら本盤を聴くと、その芳醇な世界がより堪能できるはずだ…。

ビクトル・ラバジェンは、名門「オスバルド・プグリエーセ楽団」のバンドネオン奏者・編曲家として活躍。しかしながら、その後創設に参画した「セステート・タンゴ」時代も含めて、第2バンドネオン奏者に甘んじていたラバジェンの「偉大な才能」が開花したのは、「50歳も半ばを過ぎた頃」だったという。

小松氏は、そうした今も第一線で活躍するラバジェンの音楽をこう評している。
「『タンゴ全盛期のど真ん中を支えた男』の顔を持ちながら、国境も時代性も超越したタンゴを体現できる希有な存在」。
「『ピアソラ以前かピアソラ以降』と、源氏と平家さながらに真っ二つに断絶してしまったタンゴの大地に橋を掛け、対話させる夢をもになっているように感じられる」、と。

つまり、タンゴの革命児と言われたアストル・ピアソラに出現によって、以降のタンゴ・アーティストが彼の影響から逃れなくなり、タンゴの“断絶”が起こったなかで、ラバジェンこそ「伝統と革新」をつなぐオリジナリティを持つのだと。

ワタシには一つのひとつの曲目を解説する知識も能力もないので、詳しい「曲目解説」は、小松氏のライナーをお読みいただくしかないが、たしかに本盤から溢れて出るラバジェンの音楽は、「伝統と革新」に満ちているように聴こえる。

ときにピアソラを彷彿させるエッジの効いたパンキッシュなサウンドを響かせるかと思えば、クラシカルな端正な音で聴くものを包み込む。ラテン、クラッシック、ジプシー(ロマ)、その他の伝統音楽など、さまざまな要素をミックスしながら、超絶技巧をそれと聴かせないまろやかさで包み込む。
まるで、ベルベットを思わせるような上質な“音”が、全体を通奏しているのだ…。

だからこそ、超有名曲⑨「ラ・クンパラシータ」も凡庸にならず、豊熟なラバジュン・ナンバーとして際立つ。
まさに、タンゴの「今」を知る、タイトルどおりの「伝統と革新」に満ちた一枚。

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