【CD】ユルドゥス・ウスマノヴァ/デュニア~世界2011/01/15

デュニア〜世界デュニア〜世界
ユルドゥス・ウスマノヴァ ヒュスニュ・シェンレンディリジ ファティフ・エルコチ ヤシャール・ギュナチギュン レウェント・ユクセル

ライス・レコード 2010-03-07
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昨年3月に日本盤がリリースされたウズベキスタンの“ディーバ”ユルドゥス・ウスマノヴァ(Yulduz Usmanova)の新作をようやく入手。これが素晴らしい内容だ。

ウスマノヴァについては、ハウスとエスニックをミクスチャーした傑作『binafscha』 (1996)で知っていたが、じつはいったいどんな歌手なのか、よくわからないままに愛聴していた。

その彼女のプロフィールが、本作に寄せられたリリース元である「オフィス・サンビーナ」の田中昌代表によって詳らかにされおり、とても参考になった。
曰く、1963年にウズベキスタンフェルガナ地方マルギランという町で生れた彼女は、同国で国民的な歌手として活躍する一方で、ウズベキスタンの伝統音楽をベースにトルコや他の中央アジアの伝統要素に加えて、欧米ポップスをミクスチャーしたスタイルで、ヨーロッパでも高い評価を得てきたという。

さらに母国では政界に進出して、「歌う代議士」として活動していたというが、2005年に反政府デモを武力制圧した“アンディジャン事件”が起こり、これに対して彼女が大統領に直接抗議。怒った大統領が彼女を国外追放とし、ユルダスも長年友好な関係だった大統領に愛想をつかしてトルコに移住したのだという。

というわけで、本作は全編トルコ語によるトルコ制作のアルバムとなっている。しかし、『binafscha』で魅せたエッジの効いたクラブ・サウンドは後退したものの、むしろトルコの伝統音楽を血肉として、汎アジア~アラブ~ヨーロッパ社会へと股がるスケールの大きな音楽地図を描いたみせた。

とにかくその歌声が素晴らしい。
伸びやかなでメリスマを効かせたその歌声は、ときにカッワリーの巨星ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンを彷彿させるほど。
自作の再演である③「世界」では、まさにユーラシア大陸を駆け抜けるジャヌ・ダルクの如く、大地に轟く。
さらに本作には、トルコの人気男性シンガーとのデュエット曲が3曲収められているが、ユルドスは一歩も引かぬ力強い歌声で男声陣に応え、見事なコラボに昇華している。

↓ヤシャール・ギュナチギュンとのデュエット曲⑤「セニ・ウェルデン」(音声のみ)


そうした彼女の歌声を支えるトルコ・ミュージシャンたちも素晴らしく、トルコの伝統楽器の演奏だけでなく、エレクトリックなプレイも含めて、かの国の音楽クオリティの高さを思い知ることができる。

スカーフで顔を覆い、眼だけがギラリと遠く見据えたジャケットが、まさに決然と“世界”に対峙するユルドゥスの揺るぎない音楽を示しているかのようだ。

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