【本】ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者 ― 2011/06/21
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ドイツでは演劇界に古くから存在する「肩書」で、制作とは独立した権限を持つ専門職なのだという。オーストリアとスイスを含むドイツ語圏の公共事業などで500名以上が活動しているという。
また1960年前後からヨーロッパの周辺諸国やアメリカ・カナダの公共劇場や主要劇団がこの「ジャーマン・モデル」を参考にして「ドラマトゥルク」を採用するようになったという。
その「ドラマトゥルク」の活動内容や役割を、本邦で初めて詳らかにした本格的な書というわけだが、じつのところ読後を経ても、未だに「ドラマトゥルク」の職分イメージが十分に掴めずにいる…。
たしかに本書では、演出補やプロデューサー、あるいは演劇キュレーター的なイメージしか(ワタシには)持ちえていなかった「ドラマトゥルク」の多彩な活動や役割が、紹介・考察されている。
多くは劇場に所属し、舞台制作に関するさまざまな事例や問題に精通し、ときとして助言・提言を行う。あるいは観客までも教育・組織化し、舞台芸術の活動の輪を拡げていく。。それゆえ文学、美術など、深く広範な専門知識が要求される知的エキスパートなのだという。
しかしそれらの活動があまり多岐にわたり、またそれを追いかける本書の調査・研究もまた蜘蛛の巣のような八方広がりとなり、ワタシの頭の中は混濁する…。
というのも、どうも研究論文がベースになっているせいか、「ドラマトゥルク」の生身の姿が見えてこなのだ。フィールドワークやヒアリングは十分に重ねているのだろうが、ルポルタージュ的な表現が少ないので、そう感じてしまうのだろう。
それにほとんどがドイツでの話であって、ワタシにはとっては遠い。
もう少し研究の範囲を拡げて、「ジャーマン・モデル」を移築した他国の例などを挙げれてくれれば、後半で熱く展開される「日本におけるドラマトゥルク導入の可能性」についてももっと説得力を持ったのではないだろうか。
さらにいえば、日本ですでに「ドラマトゥルク」として活躍されている演劇人の活動が、なぜかほとんど紹介されていない。その「活動」は著書の説く「ドラマトゥルク」とは相いれないものなのか、紹介する値のないものと判断したのか、とにかく日本における「ドラマトゥルク」の活動を詳らかにしないでおいて、その「可能性」を語るというのもずいぶんと片手落ちな話ではないか…。
まあたしかに、今まで耳慣れなかった(しかも重要な存在らしい)「ドラマトゥルク」が、こうした形でも紹介されたことは喜ばしことだが、今後はルポや当事者からの発信といったさまざまな形での著書が編まれれば、その「可能性」についての議論が深まると思うのだが…。
◆『ドラマトゥルク』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「日本の演劇界が抱える問題に一石を投じた書」--書評空間(西堂行人氏)
「ドラマトゥルクについて広範に論じた画期的な名著」--雄鶏とナイフ
「Dramaturg の訳には、「作劇家」がふさわしい」--仕事の日記(白石知雄氏)
「教科書的な概論・解説に陥らず、アップ・トゥ・デートな内容」--ella and louis BLOG
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