【CD】ソウル・フラワー・ユニオン/キャンプ・パンゲア ― 2011/01/21
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しかしながら、別ユニットであるソウル・フラワー・モノノケ・サミットの軽やかに比して、「ユニオン」のアルバムがワタシのCD棚に増えていかないのは、あまりにハイテンションなナンバーの連続で、アルバム1枚を通して聴くとぐったりと疲れてしまう、というのも要因としてあることをここで告白しておかなければならない。
ところがソウル・フラワー・ユニオンの新作『キャンプ・パンゲア』を一聴して、そのレイドバックなサウンドに“もの足りなさ”を感じてしまったのだがら、人間というのは勝手なものだ。
もちろん本作でも、ポリティカルな姿勢が貫かれた中川(敬)節は相変わらずなのだが、これまでのヒリヒリするような“攻め”の音の連続とは一味違った、軽やかな柔らかなサウンドが全体の基調になっているかの印象を受けた。
よって、ワタシの“もの足りなさ”はそこから来ていたのだろうと思うが、本作を聴き返すうちに……いつの前にかそれもまた魅力として受けとれるようになっていた。
オープニングの①「バンサラッサ」に続いて、②「ホップ・ステップ・肉離れ」、③「ダンスは機会均等」という語呂もノリいいナンバーが続き、カリプソのリズムに乗って「死亡率100%、生きるということはそういうこと!/死ぬまで生きる我等の掟」と、明るく軽やかに謳いあげる④「死ぬまで生きろ」と、じつに明るくポジティブだ。
実際に癌で亡くなったファンの少女と出会って中川氏が書いたという⑤「死んだあの子」もダイナミックなサウンドに仕立てられ、けっして湿っぽくならない。アイリッシュ風味の⑥「再生の鐘が鳴る」、レゲエ・チューンの⑦「アクア・ヴィテ」、ミュート・トランペットが哀愁を醸しだすインスト曲⑧「道々の者」、ホンキートンク・ピアノとスライド・ギターを配したサザンロック風の⑩「パンゲア」、ラテン・フレーバーな⑪「千の名前を持つ女」、ラウンジ風の美メロ・ナンバー⑫「スモッグの底」、ブラス炸裂のジャンプな⑬「ルーシーの子どもたち」など、サウンドも多彩だ。
もろちん、「地の果てから声が届く/憤怒の鬨(とき)の声/非服従の舞は続く/戦鼓 と路上の詩(うた)」と、力強く歌われる⑨「太陽がいっぱい」など、プロテストな“詩”も顕在だ。
きっと中川氏自身や長くこのバンドを聴いてきたファンは、「ソウル・フラワー・ユニオンはどこも変わってないよ」と言うかもしれないが、ワタシには本作に、なにか“人を包み込む優しさ”のようなものを感じてしまう。
それは、故・小田実がしばし口にした「人間ぼちぼちや」であり、立川談志師匠の言う「落語は人間の“業”の肯定」に通じる、中川敬という人から発せられる慈愛に満ちた告発…のように聞こえるのだ。
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