最近観た映画2010/07/03

『アース』(2007年・監督:アラステラ・フォザーギル、マー ク・リンフィールド)
驚愕の『ディープ・ブルー』のスタッフによる、今度は「地球」がテーマのネイチャードキュメンタリー。裏テーマは「環境」ということでしょうが、前作より舞台が拡がった分、焦点が絞りキレなかった感も…。

『グアンタナモ、僕達が見た真実』
(2006年・監督:マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス)
アルカイダのメンバーと誤認されたごく普通の若者が、2年以上にも及ぶグアンタナモでの収容所生活を強いられたという事件を再現ドラマで構成。力作なのだろうが、事実関係を追いすぎたせいか(?)TVドラマ的なチープ感も…。

『赤線地帯』(1956年・監督:溝口健二)
売春防止法成立直前の売春宿で働く女性たちを描いた川島監督の『洲崎パラダイス 赤信号』と対を成す作品。川島監督が男女の機智を描いたの対して、女性を撮らせたら絶品と言われる溝口監督だけあって、ここでも女性たちの心情や傷み、生活の背景をドキュメンタリータッチでイキイキと描いている。

劇団、江本純子『婦人口論』2010/07/17

劇団、江本純子『婦人口論』(7月16日・東京芸術劇場小ホール)を観劇。
これは本年の収穫ではないか!?  演劇という手法でしか表現できない舞台劇として。
視覚障がい者を案内人とする「暗闇探検」という設定がまず秀逸。しょっぱなから観客はその闇の中に放り出され、無理やりでも芝居に引きずり込まれる。
暗闇の中で「見える」障がい者と参加者の立場が、闇と光の中でクルクル変わるという妙。そこで繰り広げられる悪意に満ちたセリフの嵐…それもなかなか才気に満ちている。
これぞ芝居らしい、芝居表現ではないか!
なるほど 「芸劇が注目する才能たち」と冠している…のも、オヤジ的には納得。( ^ ^ ;

沢則行「NORISAWA'S フィギュアアートシアター001」2010/07/18

沢則行サンのひとり芝居(人形劇)公演に行く。(7月17日・赤坂区民センター)
サブタイトルに「人形、仮面、影絵が出てくるヘンテコひとり芝居」とあるが、まさにその通り。新作「NINJA」では本人が忍者に扮し、「水」を効果的に活かした影絵に、自身のデザインによる「変化する人形」まで駆使し、舞台狭しと大暴れ。
一転して、トランクを改造した演台を舞台に、エコノミーなひとり+人形芝居。「星」「ウサギとカメ」「種」「人魚姫」など、ユーモラスかつファンタジックな世界を魅せる。
アンコール(?)の客席に乱入してのパフォーマンスも含めて、サービス精神満点の芸人(劇術じゃない)魂はあっぱれ!中西俊博による音楽もGJ、でした。

柳家喬太郎2010/07/19

笑いと学びで地域おこしを目指すというNPOによる落語会「NPO法人リール世田谷旗揚げ公演」(7月18日烏山区民センター)。
開口一番は、声の張りがいい古今亭志ん坊による「子ほめ」。
続く、林家ぼたんサンは女流噺家。女流で上手い人を今まで聴いたことがないが(失礼)、この日の「悋気の独楽」を聴いて、今後に期待大 ○。
古今亭菊生サンは「締め込み」で、血の気の多い亭主を橘家文左衛門サンばりにコワモテに聴かせた。
中入り後に、ストレート松浦サンによる楽しいジャグリング。
そしていよいよ喬太郎師匠登場。演目は…なんと「幇間腹」で、珍しくこの日は古典落語のオンパレード。で、ご本人がマクラで話していた通り、6分程度(?)の力の入れ具合。
夏の暑さでお疲れの中、ご本人も気楽に楽しめるお噺なんでしょうか。( ^ ^ ;

最近読んだ本2010/07/21

『仮想儀礼(上)(下)』(篠田節子著・新潮社)
ありそうでなかった「宗教ビジネス」の起業から興隆、破滅まで記すなかで、人間の「業」を執拗までに描いたメタ小説。著書にはやはり宗教をテーマにした『ゴサインタン』という傑作があるが、本作はもっと人間のドロドロとした部分をこれでもか!というチカラ技で描く。もちろんオウムも9.11後も取り込んで。それにしても『東京島』の桐野夏生と同様、近年の女性作家たちの強力には目を見張るというか、圧倒されます…。( ^ ^ ;

『アメリカは歌う。 歌に秘められたアメリカの謎』(東理夫著・作品社)
日本人には馴染みの薄いカントリーやブルースの歌詞から、アメリカ裏面史をあぶり出す意欲作。片岡義男の『ぼくはプレスリーが大好き』や亀井俊介の『サーカスが来た!』を彷彿させるアメリカ大衆文化論であり庶民史。

『熱狂の仕掛け人--ビートルズから浜崎あゆみまで、音楽業界を創ったスーパースター列伝』(湯川れい子著・小学館)
副題のとおりビートルズから浜崎あゆみまで、音楽業界の仕掛人(呼び屋/イベンター)たちのインタビュー証言集。ベンチャーとして音楽ビジネスに乗り出した生き証人(猛者)たちの業界伝説話はやはり貴重だが、ややお話がお上品すぎて業界裏面史まで迫り切れていないもの足りなさも…。

森山開次ソロダンス『翼 TSUBASA』2010/07/24

森山開次ソロダンスツアー2010『翼 TSUBASA』(7月23日・世田谷パブリックシアター)に足を運ぶ。
で、結局この人の最大の魅力は「肉体」なのだと思う。「夕鶴」をモチーフに、天井から吊り下がる透明のオブジェ、降り注ぐ銀色の雪の中で、腕を翼に見立てた優雅な舞いからピアノと連動したコミカルな動きまで、ステージを所狭しと踊りまくったラスト、半身裸の森山がステージにすくっと立つ。
うっすらと汗をにじませ、鋼のような、それでいてしなやかな、その美しい身体に…客席を埋めた多くのオバサマ方(観客の女男比は10対1位!)もウットリ…拍手止まず( ^ ^ ; 。まさに「肉体」そのものが、パフォーマンスであり、観客をカタルシスに導いていく。
ダンサーとしての技量や他の演目との比較は、門外漢なのでコメントできないが、この人の人気のヒミツを伺い知ることのできた圧巻のパフォーマンスであった。

シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い2010/07/26

『シャガール展』に行く(7月25日・東京芸術大学大学美術館)。
副題に「ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」とあるように、カンディンスキーら同時代のロシア前衛芸術家たちとの交流と影響を浮かびあがらせるとともに、その時代を経たからこそ、後年の幻想的で独自なシャガール・ワールドが形成された--という視点での展示。その展示がじつにウマい。
なんといってもロシア作家たちの作品群を通過した後、最後に後期の代表作をドカーンと展示した“シャガール部屋”は圧巻だ。シャガールが溢れでるイメージを次々にキャンバスに描いていった大作たち。その絵の前でワタシは声を失う。時を忘れる。
色彩溢れるキャンバスの中で飛翔する人・動物・天使・光…。夜のなのに、なぜこうも至福感に満ちているのか。いつまでもその世界に浸って…いたかったにゃあ。( ^ ^ ;
さらに、NYのメトロポリタン歌劇場の歌劇「魔笛」公演のために、シャガールが描いた舞台美術のなんとイキイキと奔放なこと。もうやりたい放題じゃん!
改めて、ジブンのシャガール好きを再確認した展覧会デスた。(^_-)

最近読んだ本2010/07/30

以下、西表島へ行くために読んだ本。
『住んでびっくり!西表島』(山下智菜美著・双葉社)
2003~2006年まで西表島で生活していた女性ライターによるエッセイ&民俗誌。類書がないだけに、じつはこーいう本はけっこう貴重だと思う。

『西表炭鉱写真集』(三木健編著・ニライ社)
大きな戦禍がないかわりに西表は近年までマラリアで苦しめられ、そして炭鉱哀史があった--ことを本書で知った。こちらもまた類書がないだけに貴重。とくに証言だけでなく写真資料を収集したた功績は大きい。著者の地道かつ執念にも思える調査活動の成果か、今では観光客向けのツアーにも炭鉱跡がスポットとして組み込まれている。

『西表島フィールド図鑑』(横塚真己人著・実業之日本社)
西表島の海・川・山に住む生き物たちの概要を、手っとり早くビジュアルで識ることが出来る重宝本。これまた西表に行く前にはざっとでも目を通しておきたい一冊。

最近観た映画2010/07/31

『つぐない』(2007年・監督 :ジョー・ライト)
この監督、『プライドと偏見』(未見)の人だが、なかなか端正に撮る人だネ。幼い頃の嘘の証言で、姉とその恋人の運命を暗転させてしまった「つぐない」を、うまく場面と時間を転換させて描いている。ゴールデングローブ受賞作。

『チェ 28歳の革命』チェ 39歳別れの手紙』
(2008年・監督:スティーヴン・ソダーバーグ)
大好きなベニチオ・デル・トロと『トラフィック』で才気を爆発させたソダーバーグの大作だけに期待したけど、なにコレ?  史実をチュウジツに追っている(?)せいなのか、盛り上がりも焦点も定まらずにダラダラと物語が進む…だけじゃん!( ^ ^ ;これじゃ、ゲバラも草葉の陰で泣いてるぞ~。