最近観た映画2010/05/02

『ガルシアの首』(1974年・監督:サム・ペキンパー)
渋い脇役で知られたウォーレン・オーツ(大好き!)を主役にした現代西部劇ともいうべきアクション追跡劇。うらぶれた男の刹那感にロードムーヴィーの要素と任侠道をまぶし、お約束のスローモーションというペキンパー印の佳作。

『ジプシー・キャラバン』(2006年・監督:ジャスミン・デラル)
ルーマニアのタラフ・ド・ハイデゥークスをはじめ、スペイン、マケドニア、インドの5つのバンドが北米を旅する「ジプシー・キャラバン・ツアー」の様をとらえた音楽ドキュメンタリー。ツアーを通じてジプシーの起源と今に迫っていくが、ジプシー(ロマ)インド起源説は定説なのだろうか?

『笛吹川』(1960年・木下恵介監督)
戦国時代を背景に笛吹川(山梨)のほとりに住む貧農の5代にわたる約60余年の物語(原作は深沢七郎)。で、黒澤監督が『天国と地獄』で効果的に使ったパートカラー(部分彩色)が全編…というのもなんだが時代を感じさせるが、大河的なドラマをまとめるのが精一杯で、ヒューマニスト木下節が少し弱いような…。名作をたくさん残している木下監督の作品がほとんどTV上映されないのは、何か版権の関係でもあるのだろうか?

最近読んだ本2010/05/07

著者は、前著を指して「落語でも音楽でも、初心者は『誰を聴けばいいの?』というところから入るので、ライヴに足を運んでもらうためのガイドとして、僕は『この落語家を聴け!』を書いた」としているが、本書はそうした初心者向けガイドから更に、すでにライヴに足しげく通っている中高級者に向けた落語家インタビュー集。前著では自身の言葉で語った落語の魅力を、演者自身から語らせようという試みだと思うが、いや~、語られる内容がディープで!
( ^ ^ ;

『この写真がすごい2008』(大竹昭子著・朝日出版)
都築響一、十文字美信、澤田知子といったワタシも知っている著名写真家から、3歳の子どもが撮った作品(?)まで、著者が感性とバランス(?)で選んだ100点の写真がズラリ。おっ、と驚いたり、クスリと笑ったり、ページをめくる時間はまさに至福の時(^_-) 。ありそうでなかった写真集+エッセイ。

『夏の庭 The Friends』(湯本香樹実著・新潮文庫)
映画化もされた日本版『スタンド・バイ・ミー』的な少年(子ども)たちを主人公においた冒険&成長物語・老人交流版。解説の久保キリコも触れているが、細部の描写が活きたエンターテインメント小説。

チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」2010/05/09

独特の身体表現とセリフによる実験劇に取り組むチェルフィッチュ(Chelfitsch)による新作
『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』(5月9日・ラフォーレミュージアム原宿)を観る。
テーマは「派遣労働」ということで、「ホットペッパー」「クーラー」「そしてお別れの挨拶」という数人の役者による三つの寸劇(?)を組み合わせて約1時間という短い芝居( だよね( ^ ^ ; )迷路のようにくり返すセリフと身体の動き、あるいは意味なくとめどもなく語られる日常風景…うーん、こういうのが「新しい」のかねぇ?!
セリフの繰り返し劇というのはかつてもあったと思うが、そこから浮き上がるのは「終わりなき日常」(by宮台真司)?  こーいう芝居があってもいいとは思うが、これって本当に海外で評価されているの? (と、ナゾだらけのオヤ爺( ′・`) …)

ジョン・ルーリー ドローイング展2010/05/10

表題のアート展に足を運ぶ。(5月9日・ワタリウム美術館)
ジョン・ルーリー」といえばワタシにとっては、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の、というよりは、「ラウンジ・リザーズ」の、なのだが、 ドローイング・アーティストとして活動していたとは今回の告知まで知らなかった。
加えて、ライム病を患い音楽、俳優活動を休止。闘病生活を送りながらこれらの作品を描いていた…という背景がアタマにチラつきながら作品を眺めてみれば、まさにリザーズで彼がしていたようなフェイクな表現のオンパレード…。
なんだ、変わってないじゃん!ジョ~ン・ル~リ~ ( ^ ^ ;。
シャガールを思わすようなメルヘンチックなピエロ、シーラカンスを思わせる魚などが、ワタシ的には惹かれた。

最近読んだ本2010/05/15

音楽も映画も文学もマンガも、モダンカルチャーが成熟して100余年。デジタル技術の進化とともにあらゆるエンタメ・文化がアーカイブ化し、さまざまな世代・階層によって批評たりうる時代がやってきた、ことの証左ともいえる同時刊行の2冊。本書(共に)のウリともいえる「心に残る珠玉の10本」で、明らかにDVDで観ることの出来る作品を主眼に置いて選品している評者がいることでもそれがわかる。そして、もはや「外国映画」がアメリカ・ヨーロッパ映画ではなくなり、グローバルな視点で語らざるをえなくなっていることもまた。

『いちょう団地発!外国人の子どもたちの挑戦』
清水睦美著+すたんどばいみー編(岩波書店)
外国人と日本人の住民が手を携えた画期的な試みなのに、各人に語らせるという「民主的な」(?)編纂方法のために、せっかくのダイナミックな活動が見えにくくなった。同じ題材で、一人の視点から、ルポ的な物語をぜひ読みたい。

最近観た映画2010/05/19

イングロリアス・バスターズ(2009年・監督:クエンティン・タランティーノ)
タラちゃんの好調ぶりを示す、反ナチのアンチヒーロー妄想歴史活劇( ^ ^ ; 。映画オタク監督の真骨頂ともいえる「映画館」をクライマックスの舞台に据えたのもヨカッタ。B級魂の炸裂したタラちゃん印満載。

紳士協定(1947年・監督:エリア・カザン)
ユダヤ人差別問題を真っ正面からとりあげアカデミー作品賞に輝いた佳作。グレゴリー・ペック扮する新聞記者がとった「ユダヤ人になりすます」という取材手法は、後のトルコ人労働者の実態を告発した『最底辺』に通じるもの。こうしたアプローチは現代のさまざまな問題でも有効なのでは?と思わせるジャーナリズムの王道かも。

ボクサー(1977年・監督:寺山修司)
これが『ロッキー』と同じ年に公開されたというのが驚き!? 柳の下のドジョウを狙ったともいえるが、まったくの二番煎じじゃん!と思われても仕方ないよなぁ( ^ ^ ;という内容。 テレビ公開されないのは、主演の清水健太郎の度々の逮捕のせいか、足に障がいを持った役のせいか…。

最近読んだ本2010/05/22

『クズが世界を豊かにする-You Tubeから観るインターネット論』
(松沢呉一著・ポッド出版)
(既にどなたかが指摘しているかもしれないが)この人の偏執的なこだわり・モノゴト追及癖は、広瀬隆の影響を受けているのいではないか…と思わせるが、今回はYou Tube観察記。You Tubeと企業広報のカラクリ、そしてメディアとしての可能性をその膨大な見聞記録から繙く。

『浅田家』浅田政志著(赤舎)
この写真集に最後まで目を通した人は、誰もが幸せな気分に浸れるのではないだろうか?あるいは、改めて「幸せ」とは何か思うのではないだろうか? と思わせる浅田一家のなりきりぶりは本当に、スバラシイ!「写真の力」を改めて気づかせてくれる逸品。

『アンナの土星』益田ミリ著(メディアファクトリー)
天文好きの兄を持つ少女と同級生と家族の物語。行き難さを感じる(この年頃はみんなそうか)少女の成長物語だが、(もちろん作者はそこを狙っているが)浮世離れした兄の存在がうまく活かされるいる。

最近観た映画2010/05/30

『エグザイル/絆』( 2006年・監督:ジョニー・トー)
あまりに詩的な、あまりに美しい香港ノワールの到達点ともいうべき男どもの友情物語。何も言わず、アンソニー・ウォンに泣け!

『洲崎パラダイス 赤信号』(1956年・監督:川島雄三)
ワタシにとっての川島雄三といえば、あのエネルギッシュな『幕末太陽伝』であるが、こちらは戦後の遊廓(の境界線)を舞台にした、男女の愛憎&人情劇。『細うで繁盛記』(古い!)の新朱三千代のキップのよさと三橋達也のダメダメぶりがいい対比。ラスト近くの二人の下駄をアップにとらえた秀逸なシーン。こんな粋な演出をする監督は、世界でもそうそういないのでは!?

『サラリーマンの死』(1951年・監督:ラズロ・ベネディク)
アーサー・ミーラーによる戯曲の映画化。第二次大戦後の興隆するアメリカの社会の暗部をえぐった辛辣な作品だが、明らかに舞台劇の映画化というストレートな演出。もちろんすぐれた戯曲として楽しめるが。