【演劇】北京蝶々×中屋敷法仁『パラリンピックレコード』2011/04/09

『パラリンピックレコード』
さまざまなことが重なり1週間ぶりのブログ執筆。震災以降、なかなか調子が戻らない…。というなかで久々の鑑劇となった劇団「北京蝶々」「柿食う客」中屋敷法仁氏とタッグを組んだ『パラリンピックレコード』(4月9日・三軒茶屋シアタートラム)

初見の「北京蝶々」だが、資料によると2003年に早稲田劇研を母体に旗挙げし、電子マネーや介護ロボットなど日常に浸透しつつあるテクノロジーをモチーフに近未来の日常を描く舞台を展開しているらしいが、今回の公演もそうした延長線上にあるのだろう。

一方、今回の演出を担当した中屋敷法仁氏(柿食う客)は、「演劇の虚構性を重視し、『圧倒的なフィクション』の創作を続ける」(劇団HPより)とある。

なるほど、この二つの個性がマッチングするとこういう芝居になるのか…という展開をみせてくれた芝居だった。

着想は面白い。二度目のオリンピックを控えた近未来の東京が舞台。親子二代で都知事となったイシハラのもとに、特殊な義手や義足を身につけた障害者アスリートが結集する。日本選手の金メダルが難しくなったオリンピックよりも、彼らをパラリンピックで活躍させるというアイデアが採用されるが、それまで差別され続けてきたアスリートたちが突然テロリストと化し、イシハラ都知事を人質にする…。

早くから配布されていたチラシにもそのような内容が記されているが、震災後に改訂が行われたのだろう。「震災での復興にはオリンピックが必要だ」と叫ぶイシハラのセリフは、よりリアルに聞こえる。

東京都知事選にぶつけるタイミングもよいし、「二代目」という構想も実際にあの親子のなかにはあったかと思う。

さらに、先頃まで表現規制問題で揺れていた東京の未来が「言論統制下にある」というのも、特殊なギアによって障害者や高齢者が常人以上の身体能力を持つというも、けっして荒唐無稽な話ではなく、そうした意味でも“近未来感”溢れるエンターテイメントといえる。

しかしながら、ワタシにはその作劇(風)がどうも80年代にさんざん使い古された手法や構造にみえて、“新しさ”が感じられなかった。たしかに「虚構性の高い発話法/演技法を追求し、人間存在の本質をシニカルに描く」というのは“新しさ”なのかしれないが、その発語される単語や装飾語が新しいだけで、どうもかつての「第三エロチカ」や「演劇団」などの芝居とダブって仕方がないのだ。

そういう意味では、中屋敷氏が「その姿勢から『反・現代口語演劇』の旗手」とされるのもよく理解できた。気のせいか客席の年齢層も高かったように思える。

ワタシには、本作のようなテーマ一発のノリでつっ走る活劇よりも、平田オリザ氏の“ロボット演劇”のほうが、よほど近未来的で、刺激的に思えるのだが…。

『パラリンピックレコード』の参考レビュー一覧(*タイトル文責は森口)
「グルーブ感とボディをしなやかに持ち合わせた舞台」--RClub Annex
「スタイリッシュなリズムが躍動する演出」--江森盛夫の演劇袋

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