最近読んだ本2010/04/30

『日本の路地を旅する』(上原善彦著・文藝春秋)
「路地」を呼ばれる被差別部落出身者である著者が、日本全国の「路地」を旅する力作ノンフィクション。紀行文的なノリで始まった旅が、やがて著者自身が語り出し、心情を露呈し、最後に心のトゲとして在った実兄に会いに行く…という自身が血を流す旅に。大宅賞の価値あり、の近年の収穫。

『「つくりごと」の世界に生きて プロレス記者という人生』(井上譲二著・宝島社)
『ケーフェイ』はレスラーの立場から、『流血の魔術最強の演技』はレフェリーの立場から、プロレスの「真実」を語った本だが、本書は「記者」の立場からそれを暴露する。ゆえに、多くのプロレス団体の「真実」が語られるのだが、(ワタシがリングサイド席で息を呑んだ)あの第二次UWFさえもそうだったとは!とすると、日本でプロレスが輸入されて誕生以来、数十年にわたって「真実」を隠蔽してきたプロレス村、とりわけアントニオ猪木サンは稀代の詐欺師、もといトリックスター といえる。多くのプロレスファン(とりわけ若者)を騙し続けたその才能に、かえって驚愕を禁じ得ない…というのは倒錯した見方かナぁ。( ^ ^ ;

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』(辻村深月著・講談社)
作者の故郷である山梨を舞台に、アラサー女子の仕事、結婚、家庭、親子、学歴の“息苦しさ”と“格差”を描いた作品。母親を殺した幼なじみを探すフリーライター(作者の投影?)が次々と彼女(と自分の)同級生や知人と会っていく一章は、宮部みゆきの『火車』や『理由』を想起する展開だが、一転して、二章(といっても全体の1/5程度)ではその幼なじみが語り出すのだが、この構成もあまり効いていない… 。なかなか物語世界に入っていけなかったのは、オヤジがやっぱ「女子」ではないからかぁ?( ^ ^ ;