農業少女2010/03/05

一昨日(3月3日…日記がどんどん遅れている( ^ ^ ; )『農業少女』を観劇。
野田秀樹芸術監督(東京芸術劇場)就任記念プログラムとして、野田の名作(とされているらしい)を今回は松尾スズキ演出で、NHK「つばさ」の多部美華子主演ということで、話題を呼んでいる(らしい)。野田作品を観るのは、え~何百年ぶりだろうか( ^ ^ ; …というぐらいじつは野田作品の面白さが…よ、よくワカラン。(>_<)
松尾氏はかつてこの舞台を演じ、今回のチラシに「少女を想う中年男のみじめな恋と、ファシズムに関する思索が交錯する斬新なアプローチの舞台」というコメントを寄せているが、ワタシ的には、う~ん、そんなに斬新かぁ?という感じ。
そりゃ、ここで語られる「農業」「東京」「ウンコ」などはいくらでも置き換えはできるけど、そんなに普遍的なテーマを「斬新」に描いているかなぁ?  むしろ近年の演劇の特長ともいえる映像とのコラボや手品まがい(ていうか実際にマジックか)の劇的手法(ていうか演劇か)で、客席沸かせるエンターテインメントとして、どうよ?という芝居ですよね(劇評になってない!)

弧の会「弧風」2010/03/06

「弧の会」による日本舞踊「弧風」公演(3月6日・神楽坂牛込箪笥ホール)を観る。
「弧の会」は日本舞踊の素晴らしさを多くの人に伝えようと、若手・中堅の踊り手(♂)12名によって1998年に結成された「日本舞踊界のヌーベルバーグ」だとかで、紋付袴姿での「素踊り群舞」を基本コンセプトにオリジナル作を発表し続けているという。
たしかに、足を振り上げ、ジャンプし、側転し、膝を軸にヒップホップまがいに回転し、はては海老ぞりイナバウワーまで飛び出すとあっては、もはや紋付袴姿のコンテンポラリー・ダンスと言っていい。いやぁ、日本舞踊がここまでモダンだとは、知りませんでしたぁ。(^_-)
ステージの構成も「ゲイ(芸)の花舞台へようこそ!」と国民放送の某番組をパロディに、演者を舞台にあげて「弧の会」や演目をわかりやすく説明するなど、とにかく「日本舞踊を知ってほしい、楽しんでほしい」というメンバーの心意気が伝わってくる。
序幕のめでたい「はじめ式」から、二人の踊り手の対照が効果を生む「龍虎」、そして最後は狂言舞踊&群舞で楽しく〆るという工夫に富んだ構成と演出もヨかった。
そして終演後に、演者たちが楽屋から飛び出して気さくに出口に並び、観客を一人ひとり送り出すという姿勢もまた好感↑。

最近読んだ本2010/03/07

『トギオ』(太朗想史郎著・宝島社)
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。捨て子を拾ったことから村じゅうから「いじめ」られ、やがて故郷を捨て殺人者へ、という近未来でありながら土俗的なピカレスク小説…といったらいいのだろうか。説明を省いたこのゴツゴツとした文体は、まるで『血と骨』か『東京島』か(それ以上)。未熟さはあえて意図しているのか、筆に任せるまま書きなぐっているのか、たしかに引きつけられものはあるものの、やや読みにくさも…。

『東京アート散歩?』(散歩の達人MOOK・交通新聞社)
東京の町並みを「アート」という視点で歩こう、と編まれた、ありそうでなかった(?)本。話題のセントラルイースト東京や今やお洒落な街に生まれ変わった(?)神楽坂など、とっても便利な最新アート街カタログになっている。アートが人気が集めるヒミツは、やっぱり「進化」していることじゃないかなぁ…と思うのだ。

『世直しブックス 政権交代、さあ次は世襲政治家交代!』ほんの木編(ほんの木)
本書によれば、昨年8月に行なわれた衆議院選挙で102人の世襲議員が当選し、自民党で約47%、民主党で約13%を占めるという。さらに地方議員や首長を 親族に持つ国会議員では、自民党の世襲率は55%にも及ぶ。終戦後、特高警察幹部54人が国会議員になったというから、この悪慣例は戦後から綿々と続いて いるわけだ。
さらに本書では世襲問題とともに選挙区制度の問題に言及し、ジャーナリストの林克明氏によれば昨年の衆議院選の得票をすべて政党ごと の比例代表に反映させると、民主206(308)、自民129(119)、公明34(21)、共産34(9)、社民20(7)、国民新党8(3)[カッコ 内は実際の議席]になると指摘するなど、なかなか説得力がある内容。「世襲を法制度で制限すべき」などの具体的な提言も盛り込んでいる。

木佐貫邦子+neoダンス公演2010/03/14

木佐貫邦子とその弟子たちによるダンス公演「空、蒼すぎて」(3月13日・吉祥寺シアター)を観る。
木佐貫サンといえば、コンテンポラリーダンスのソロダンサーとしては30年近いキャリアを誇る人だが、じつは今回ようやく初めてその雄姿を拝謁( ^ ^ ; 。改めて「踊り」の魅力を堪能させてもらった。
とにかく、人間の身体というのはかくもさまざまな動きができるのだろうかという、人体の不思議。身体をコントロールしきっているのに、窮屈さを感じさせない、その魅惑の動き。6人の男女による弟子たち、neoの高度の技術・身体表現も、時として師匠を凌駕する素晴らしさ。そして、一つとして同じ動きをしていないのではないか思わせる、多彩な振り付け。
観客の拍手も鳴りやまず…というのも納得の、キャリアと技量に裏打ちされた「芸」を見せてもらいました、ね。(^_-)

最近観た映画2010/03/18

『12人の怒れる男』(2007年・監督:ニキータ・ミハルコフ)
あの名作のリメイクだが、本作の成功はチェチェンをはじめとしたロシアの民族(差別)問題を主軸に置いた現代劇に改作した点にあると思う。これだったら、現代アメリカ版、中国版、韓国版、もちろん日本版だってできるじゃん!と思わせる秀逸な脚本。ラストのプチどんでん返しもロシアの厳しい現実を映し出し効果的。

『ゲロッパ!』(2003年・監督:井筒和幸)
これは楽しい1本! ジェームズ・ブラウン好きのヤクザの親分が刑務所に入る前に、子分たちが本物のブラウンに会わせてあげたい…とお決まりのドタバタ劇となるのだが、本筋は親子愛か。まあ、テレビドラマのようなお粗末な作りといえなくもないが、60~70代文化へのオマージュも含めて、オヤジのファンタジーとして観れば○でしょ。(^_-) ニッ。

『真昼の決闘』(1952年・監督:フレッド・ジンネマン)
おおっ、正午12時の対決の瞬間(とき)まで、劇中時間がリアルタイムに刻むという手法は、元祖(?)『24』じゃん! ゲーリー・クーパー扮する悩める保安官も、従来の西部劇のヒーローとは異なる趣で、公開当時は賛否を巻き起こしたとか。ほろ苦いラストシーンも現代のポピリュズム批判に通じる異色の佳作。

御名残三月大歌舞伎2010/03/20

忙しくなって更新が遅れ気味…のなか、足を運んだ「歌舞伎座さよなら公演」。
御名残三月大歌舞伎』(3月17日・歌舞伎座)
「語り草になる『道明寺』」という朝日新聞評につられて、初めて観る、初めて行くKABUKI!
で、「道明寺」だが、こーいうのを義太夫狂言というそうで、そうか、片岡仁左衛門演じる菅丞相は菅原道真がモデルなのかぁ…と。で、途中までその仁左衛門の出番はほとんどなく、なんだ結局、玉三郎の芝居じゃん!と思っていたら、後半の仁左衛門の語りだけで演じる芸の凄味が…圧巻。
一転して、つづく「石橋」は中国を舞台した「能」をもとにしている…とかで、ズラリと並んだ三味線や鼓の演者らが居並ぶ派手な舞台で、子役が活躍し、松本幸四郎の早変わり、トンボは切るわ群舞はあるは…と楽しい芝居。
で、結局、歌舞伎ってその名の通り、時空を超えた「歌舞く」エンターテインメントなんだなぁ…と実感。だって、殿様の衣装はまるで中世の騎士だし(楯まで持ってるし( ^ ^ ; )、やたらミエを切るし、なんだかみんな動きが可笑しいし(意味あるんだろうけど)、人情あり、滑稽あり、また乱舞ありと何でもあり…。
「出雲の阿国」が、400年にも前に四条の河原でカブキ者として踊った姿が、時代を経て「伝統芸能」として形をなし、今もまた多くの人たちを楽しませている…うーん、感慨深し。
( ′・`) フゥ‥‥

最近読んだ本2010/03/21

『さくら』(長谷川摂子著 矢間芳子絵・福音館書店)
もう、そーいう季節だなぁと思って手にした絵本。さくらの1年を、春から始まり初夏、盛夏、秋、冬と丹念に綴った本なのだが、桜の美しさだけでなく、花・葉・幹に集まる生き物たちも一緒に、愛でるように描いたイラストが秀逸。そこに感じるられるのは命の連関と桜の息吹。ワタシは、岩合光昭の写真集『おきて』を想起しました。

『TOKYO一坪遺産』
(坂口恭平著・春秋社)
駅前の靴磨き屋、宝くじ売場、川べりの自作ハウス、駐車(場)兼ガーデニング庭園etc.狭小のスペースを実に巧みに活用・演出し、独自の自分ワールドを創出してしまたっ人たちを手書きイラストとともに建築家が取材し、レポート。おかしく、そしていとおしい世界を堪能。

『自由への問い 5教育』(広田照幸責任編集・岩波書店)
「自由」をテーマに教育を取り巻くさまざま問題を横断的に論じた本。が、専門的すぎてちとワタシには…( ^ ^ ; 。研究者向けの本か?

最近観た映画2010/03/22

『百万円と苦虫女』(2008年・監督:タナダユキ)
蒼井優演ずる、派遣orアルバイトとして働く、ご多分にもれず世の中と折り合いつけるのが下手な若い女が、100万円を貯めるたびに引越しをくり返す。その旅の途中での、出会いと別れを描いた女性監督作。全体にユルいけど(『タカダワタル的』の監督だから?( ^ ^ ; )、ラストの意外な展開は、ありかも…という、ややサワヤカ感も。(^_-)

『愛と宿命の泉 Part2 泉のマノン』(1986年・監督:クロード・ベリ)
本来ならPart1と共に観るべき本作。というのも、この泉をめぐる愛憎劇は、「三代」にわたる愛と怨念に満ちた物語であることが、最後になって明らかにされるからだ。そういう意味では『インファナル・アフェアー』的な、めくるめく因縁劇であるのだ。ここでも老醜をさらすイブ・モンタンが貫祿の演技。

『エブェレスト征服』(1954年・記録映画)
ヒラリー卿によって登頂が果たされたエベレスト征服が、イギリスにとって国家事業であることがわかる記録映画。そして、この記録映画もその一貫なのだろう。なにしろエベレストは高峰を三段重ねたような巨大な怪物。その化け物的な存在感が、同行登山クルーによるこの映像でビシビシと伝わってくる。立っているだけで大変な低酸素のなかで、よくぞ登ったり、よく撮ったり。さすがに登頂を果たしたシーンは記録されていないが( ^ ^ ; 、登山記録映画としてだけでなく、通常の映画として、映画的な興奮を覚えさせられる。

最近読んだ本2010/03/23

『代替医療のトリック』(サイモン・シン&エツァート・エルンスト著・新潮社)
本書を読んで、かつて深夜番組でUFO(エイリアンクラフト)信者たちの言説をバッサバッサと切り捨ていた大槻教授を思い出した( ^ ^ ; 。つまり、世界じゅうに蔓延する代替医療を「治療効果」の面において、「科学的アプローチ」によって解明しようという試み、が本書というワケ。ネタバレになるが、そのほとんどを「プラセボ効果」と断じているわけだが、ワタシなどはプラセボ効果でいいじゃん!プラセボこそ自然治癒力!と思っているのだが、筆者たちは「そのために通常医療を遠ざけている」とプラセボ効果のための代替医療さえも否定的だ。さて、世の代替医療信者たちは本書にどのように反論するのか? 朝日新聞の書評では、広井良典サンが「有効性が厳密に検証されていない療法は通常医療だってある」と「表層的」だと批判していたけどね…。

『バターサンドの夜』(河合二湖著・講談社)
講談社児童文学新人賞受賞のデビュー作。コスプレ衣装に憧れ、自分の居場所をみつけようとする中学生とやはり自分の生き方を探る若い女性らとの交流を描いたホロ苦い青春小説。

『映画の見方がわかる本』(町山智浩著・洋泉社)
アメリカを辺境深部から観察・分析する視点で、近年とてもイイ仕事をしている著者による映画解説にしてアメリカ論。例えば、「難解だ」とされる『2001年宇宙の旅』は今までさまざまな解釈がされてきたが、キューブリック監督のインタビューや元の脚本など多種多様なデータを駆使して、「それは誤読だよん!」と「正しい見方」を伝えている。が、ワタシ的にはそうした「正しい見方」を通じて、アメリカの人種・民族問題、メディアの検閲などに言及した点に惹かれる。恥ずかしながら、「夫婦が同じベットで寝る描写さえ許されなかった」というハリウッド映画の「ヘイズ・コード」も本書で初めて知ったし!(\_\)

ボブ・ディラン東京公演2010/03/24

行って来ました!ボブ・ディラン東京公演@ZEPP TOKYO(3月23日)
まさに、ロックンロールで踊れ!ボブ・ディラン!
「ロック」じゃなくてロックンロール魂炸裂!のディラン翁がそこにいた!( ^ ^ ;
近年の作品もほとんどまともに聴いていないワタシだが、70歳近くになって、さらに精力的に活動する翁の「今」を見たくて、聴きたくて、今回のライブ・ハウスツアーに馳せ参じたが、予想どおりとういか、予想以上のロッキンローラーぶりにいたく感激しましたぁ。(T_T)
だって、有名曲はほとんど演らず、演やってもほとんど原曲をとどめず( ^ ^ ; 、ズボズボのロックていうか、ディランズ・ミュージック。ブルースを演っても、ジャムバンドを演っても、そこに翁の強烈な声が響けば、もうそこは誰も手の届かない世界を魅せてくれる。
当日のセットリストはこちら↓
http://www.bobdylan.com/#/tour/2010-03-23-zepp-tokyo
会場の若い兄ちゃんたちが「あの曲もこの曲も演っていないじゃん!」と、暗に有名曲のオンパレードを望んでいたようだけど、いやーそれを演やらないディランの潔さ。
超然と「今」を生きる現役ロッカーの凄味を感じさせたライブだったヨオ。(^_-)