【本】三瀬夏之介『冬の夏』 ― 2011/07/18
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そして、改めて本書で確認できるのは、三瀬氏が「日本画」家であること。和紙と墨を縦横に駆使して、時としてダークスターを思わせる暗黒のビックバン世界や、地中から宇宙へと膨張するファンタジーを描き続けてきたことが、本書によって明らかにされる。
よって、ジパング展のレビューでその作家の素性をよく知らないままに、ワタシが「そのおどろおどろしい迫力と和紙に墨という素材も相まってまるで現代の丸木位里を思わせる」と、その印象を記したこともあながち的外れではなかったようだ。
当初はカラーも駆使した西洋画に近い作品も描いていた三瀬氏が、やがて何ものかが憑依したかのように、その脳内世界を巨大墨絵に表出させる変容が、作品と解説によって語られていく。
つまり、確信をもって言うが、本書は三瀬氏による「日本画」論でもあるのだ。自身の作品を具体例としながら、作家側から提示された新しい「日本画」論なのだ。そしてそれは「日本画」の可能性に挑戦し続ける、覚悟の書でもある。
しかしながら、「日本画滅亡論」「日本画復活論」「日本の絵」「奇景」といったダイナミズム溢れる作品群を並べられると、やはり「本物」が観たくなる。そうした意味では、本書はまた読者をアートの現場(展覧会)へと誘う最良のカタログとしての機能も果たしている。
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