【TV】NHKスペシャル「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」2011/07/03

「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」
震災から原発事故・放射能汚染報道で、報道「道」のトップランナーとして爆走するNHK がまたもや快挙だ。震災から現在に至るまで、「災害医療」の前線に立ち、20万人の生命を守ってきた石巻赤十字病院の医師たちの姿を追ったNHKスペシャル「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」(7月3日)に、またも瞠目と落涙。

もちろん「快挙」なのは、報道だけではない。讃えられるべきは医師(関係者も)たちの判断力と行動力、そしてそれを支える意志(心)だ。
数日前にも「ニュースの深層」(朝日ニュースター・6月29日放送)で、石巻市でのボランティア活動と運営組織化が「奇跡のボランティア組織 石巻」として取り上げられていたが、“石巻の奇跡”はボランティアだけではなかったのだ。
石巻の医療プロフェッショナルたちもまた、“石巻の奇跡”を担っていた。

冒頭の映像からして驚かれされる。
まずは、職員が撮影したとおぼしき病院内での地震発生時の生々しい映像が流れるのだが、的確に揺れの状態や院内の様子をとらえたそのプロはだしの記録映像に目を奪われていると、すぐに映像は院内のミーティング風景に替わり、リーダー格の石井正医師が緊急時対策「レベル3」を宣告する。これが15時3分。
それから、大地震からわずか30分後の15時16分には、院内で緊急体制がとられ、患者たちを重症度と緊急性によって分別(トリアージ)。ロビーには簡易ベットが敷かれ、またたく間に病院は震災被害者の受け入れ体制が整えられる。

それが院内の映像記録として残されていたことにも驚愕するが、なんといってもその素早い対応に目が奪われる。「政治」や「行政」の対応の遅さを目の当たりにしてきたワタシたちにとって、それはまさに“奇跡”に見えてしまう。

しかし、この病院の医師たちの矜持は、そうした対応の早さだけではなく、その後に続く、また「医療」を超えた、さまざまな活動にこそある。
市街地が壊滅的被害を受け、116の医療機関ほとんどが機能停止するなか唯一残った同病院にこそ、地域20万人の“いのち”を守る使命が授けられていた。

行政さえ市内に300カ所ある避難所の実態を掴めないなか、医師たちが一つひとつの避難所の調査に歩くことで、それらが「医療以前」の環境に置かれていることを医師たちは知る。
なんと震災から10日経っても食料がゆき届かない避難所が多数あったのだ。同病院の石井医師は、憤りのまま宮城県庁に直談判に乗り込むが、県の担当者はヘラヘラと笑うのみ…。

また水が使えず、汚物さえまともに処理されていないなど衛生面で問題のある避難所は100カ所に及ぶことわかった。そこで石井医師による独自のルートから簡易水道を引くことにし、やがて11カ所の避難所で水が使えることになった。

「これは行政の仕事だの、医療の仕事だのと言っている場合ではない」という石井医師の言葉が、至極まっとうに、そして重く響く。

震災から3カ月で264名がこの病院で息をひきとったというが、ガレキの片づけによって重篤な感染症になる患者が頻出するなど、いまだ緊急搬送者は通常の5倍にのぼるという。

地盤沈下によっていまだに満潮の度に冠水する地域があるなど、衛生面も含めて、震災地の多くの生命はいまだに危機に晒されているのだ。

数々の被災現場で医療活動を行ってきた石井医師が呻くように、言葉を紡ぐ。
「今までの経験や役に立たない。その場、その場で何ができるか。そしてそれをいかに後世に伝えていくか…」
そう、震災時の緊急医療活動を追ったこの貴重な記録もまた、後世に伝えていかなければならない映像作品なのだ。
*再放送予定:7月7日(木) 00:15 ~ 01:05(NHK総合)

NHKスペシャル「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「日本の災害医療の現状と課題が浮かび上がった貴重な記録」--壺齋閑話

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