【芸能・落語】浪花ぶし 澤孝子の世界2011/08/24

浪花ぶし 澤孝子の世界
これはいい企画だ。
当代きっての人気落語家・柳家喬太郎師匠がナビゲーターとなって、浪花節の世界を案内するという「浪花ぶし 澤孝子の世界」(8月23日・博品館劇場)を堪能した。

おそらくメイン・ターゲットは落語ファンなのだろう。ふだんは木馬亭でしか聴けない浪花節をおしゃれな(?)銀座にもってきての公演。これは「澤孝子氏の芸に圧倒された」という喬太郎師匠の計らいか?
というもの、落語好きならば講談を聞く機会はあっても、じつは近しい芸であるはずの浪花節をナマで聞いたことのある人は意外と少ないのではないだろうか。かくいうワタシもつい最近になって、浪花節に開眼したばかり…。

そういう意味でも鈴々舎風車による浪花節解説を冒頭にもってきたのもよかったし、ふだんは声を聞くこともない曲師(佐藤貴美江氏)にマイクに向けて、伴奏者から観た浪花節の魅力を伝えたのもよかった。

孝子×喬太郎対談も、両者さすがに堂にいったもので、二人の語りだけで「芸」になっていて、たっぷりと会場を沸かせる。

で、孝子氏の弟子である澤雪絵が露払いを務め、まずは語り始めたが、この人は高音に魅力がある。語りも低音部の唸りもまだまだだが、今後ののびしろが感じられる舞台。

もはやいつどこに出ても、何にも怖くない喬太郎師匠は、季節ネタをもってきた。四谷怪談をモチーフにしつつつもブラックジョークの効いた「お菊の皿」。かつてのこのネタを春風亭昇太師匠で聞いて、現代落語の魅力に憑りつかれワタシだが、さすがは喬太郎師匠。それをはるかに上回る面白さ、凄まじさ。今ドキ風若者からお菊の豹変する形態まで、ハチャメチャに演じわけ、観客の気持ちをガッチリ掴む。

立川志らく師匠は近著『落語進化論』 (新潮社)で、喬太郎師匠にも触れて「名人の基準は『江戸の風を吹かせられるか』にある」としているが、ワタシは「江戸の風」なんぞより、そよ風から台風まで変幻自在に吹かせまくる喬太郎師匠のふれ幅の大きな“喬風”が好きだ。

さて、澤孝子氏については事前にYou Tubeなどのチェックできず、まったく予備知識のないままその芸に接することに。が、一聴してその声に驚く。咽から絞り出すその強烈なコブシは、モンゴルのホーミーの如く倍音に響く。
そしてこの日の客層にあわせてか、落語でもお馴染みの「徂来豆腐」を可笑しく、情味たっぷりに演じ、語り、歌い、貫祿の舞台。その芸の確かさに舌を巻く。

先日も関西で活躍する三原佐知子師匠の“語り”に圧倒されたが、浪花節界は東西とも、女流がリードしているのだろうか? 寡聞にして浪花節界の現況については見当がつかないが、これだけ魅力ある芸(人)が確たる世界ならば、落語のように“再生”もあるやもしない。

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