【本】活劇 日本共産党2011/04/18

活劇 日本共産党活劇 日本共産党
朝倉 喬司

毎日新聞社 2011-02-26
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先頃、急逝された朝倉喬司氏の遺作(未完)。
朝倉さんとは一時、個人的も親しくしていただき、また『犯罪風土記』 『メガロポリス犯罪地図』 といった「朝倉喬司が時代を引き寄せた」と言わしめた犯罪ルポ群をはじめ、『バナちゃんの唄』 『芸能の始原に向かって』 『流行り唄の誕生』といった朝倉芸能史観が全開する芸能ルポ&評論群を唸りながら読んできたが、正直、本書によって久しぶりに朝倉本を手にとった。

かくして、朝倉氏による「共産党史」だ。
もちろんそこは“アサやん”で、通りいっぺんの正史を記すわけもなく、思いっきり人物にスポットを当てた任侠的共産党史を描いてみせる。

とり挙げた人物は、関東大震災後の混乱で実弟を警察に殺されたことで共産に入党した元国策バルブ(現日本製紙)会長の南喜一、戦前の非合法政党時代より戦後初期に至るまでの日本共産党の代表的活動家だった徳田球一、戦前期の非合法時代の日本共産党中央委員長で、後に右翼となる田中清玄の3人。

かねてから書きたかったテーマであり、念願の企画だったのであろう、その筆も踊る。その時代と活劇ぶりが、朝倉節によって活写される。

おそらく朝倉氏の世代にとっては「共産党」というのは、自分史の中に深く沈殿する避けて通れない、咽の奥に刺さったトゲのようなものなのかもしれない。本書を読んでそんなことを感じた。

しかしながら、正直に告白すれば、ワタシは共産党にほとんど興味がなく、またこの3人の人物についてもほとんど知識がない。そのせいか、朝倉流絵巻物を十分に堪能することなく頁を閉じた…。
むしろ、およそ“物語”とはほど遠い立花隆氏の『日本共産党の研究』 の方が、ワタシら世代に近い“時代の空気”が感じられて、スラスラと読んだことを思い出してしまった。

そうした意味も含めて、巻末に付せられた船戸与一氏による本書の解説というか、それを超えた歴史アカデミズムへの批判とさらに朝倉歴史観への“幻視”は、本書の価値を素晴らしく高めていると思う。

この解説を読まずして、本書は完結しない。

血沸き肉踊ると朝倉“活劇”と、熱さと悔恨をもって語られる船戸“歴史観”という特上コラボをもって、朝倉氏はライター最期の仕事をやり遂げた。

『活劇 日本共産党』の参考レビュー(*タイトル文責は森口)
「戦前戦中、党員にたぎる「義」--CHUNICHI BOOK WEB(平井玄氏)

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