【本】eBookジャーナル vol.12011/01/14

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eBookジャーナル編集部 ほか

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間もなく第2号が刊行 されてしまうので、今さらなのだが、昨年(2010年)11月に刊行されたムック『eBookジャーナル』の第1号
「電子出版ビジネスを成功に導く総合誌」と謳っていることからわかるように、本書は電子出版ビジネスに携わる、携わろうという人たちに向けた専門誌だ。

それだけに、「どうなる!どうする!?日本の電子出版」といった巻頭特集でも、同じように日本の電子出版の現状を俯瞰した「週刊ダイヤモンド」のそれ よりも、もっとつくり手側に寄り添った内容になっている。

具体的には、フォーマット、コンテンツ、配信プラットフォーム、さらにワークフロー、制作ツールといった横文字言葉やさまざまな図説が並ぶ。よって、そうした電子出版の制作側に興味のない人は読んでもあまり有益ではないだろうし、例えば“EPUB”と聞いてチンプンカンプンな人は、読み進めるのに苦労するかもしれない。

しかし、ワタシのように活字データをどのようにデジタル化して、現在のように乱立するプラットフォームやデバイスに対応させていくのか、いささかなりとも興味のある者にとっては、ワークフロー図もわかりやすく、まさに手とり足とりの入門書といえる。
まあ、実際にここに書かれていることが、出来るようになるかどうかは別にして(笑)…。

それにしても、冒頭のインタビューで植村八潮氏が「電子書籍ブームは実体がない」「言うなれば電子書籍“端末”ブーム」との喝破はまさにその通りだと思う。
なぜなら、「コンテンツ10万点を目指す」と鳴り物入りで立ち上がった大日本印刷とドコモらによる電子書籍書店のオープンが遅れに遅れたうえ、なんとわずか2万点のコンテンツでスタートというのだから、行く末が思いやられる。
老舗の「パピレス」の16万点(これでも少ない!)以外は、ほかのプラットフォームもおおむねコンテンツの点数はこんなもので、いかにこのビジネスが難しい課題を背負っているかわかる。

このコンテンツの少なさは、おそらく権利関係や法的な問題が絡んでいるのかと思うが、本書でもそのあたりのことは「権利・法律の諸問題」として一つの柱になっているようなので、今後とも引き続いてこの問題を掘り下げていってほしい。
ちなみに次号の特集テーマはまさに「プラットフォーム大研究。」のようなので、このあたり期待したい。

そもそも、電子出版ビジネスの専門誌である本書が、紙版と電子版で出されるというのがいかにも過渡期で、もっとも結局、電子版にしようか迷った末に紙版を読んでいるワタシも人のことは言えないのだが…(苦笑)。

まあ、未だにワタシが端末も持たず電子書籍に飛びついていないのは、先に挙げたようにまだコンテンツが圧倒的に足りないのと、リーダーとしては軽くて読みやすいKindleの日本版を待っているから。

ところが前述の八潮氏によると、Kindleの戦略は明確で「アマゾンは、まず書店という流通の市場を奪い、次にKindleによって紙、刷り、製本という印刷会社の売上を奪うという戦略」で、「だから、紙の本でできないことはしない」、よって「マルチメディア化を求めはいない」という。
だとすると、ワタシが電子書籍に求めるリッチコンテンツとマルチタスクという機能は、当分Kindleに搭載されないだろうし、さて、ではどの端末にすればいいのやら…。

しかし、Kindleがそうだとすれば、むしろ日本のデバイスはマルチメディア化によって活路を見いだせる可能性もあるわけで、『本は、これから』でも触れたように、最初から海外市場に向けたコンテンツづくりも活況になるやもしれない。

「朗読少女」がすでに20万ダウンロードされていることなど、ワタシも識らなかったし、マンガだけではなく、これからは日本独自の“ガラパゴス・コンテンツ”の腕の見せ所ではあるまいか。
ワタシなどは密かに、“落語”なぞはジャパニメーションに続くクール・ジャパン・カルチャーとして、世界に売り出せるのではないかと思っている。それくらい、今のニッポンの落語は独自のエンターテイメントして進化し続けている。

さて最後にもう一度誌面に戻ると、若手写真家が“電子写真集”について語る記事では、「レイヤー構造で新しいものをつくりたい」とか、「盛り込んでもらいたいのは、(写真の)フレームを選べる機能」、更新できるようにすれば「電子写真集は作家性を継続的に提示できるツールだと思う」といった前向きが発言が多く、こうした作家側からの“夢”を語る記事がもっとあったほうがいい。
だって“売らんかな”だけじゃ、つまんないでしょう。

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